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ケースの構造「だけ」比較第二弾で求める打鍵感の言語化が進んだ

天キー7で、ビビリフクロウ( @bbrfkr )さんが、またしてもケース構造比較サンプル"typing check macro pad"を展示してくれていた。

外形寸法、レイアウト、そしてスイッチは全く同じもので、ケースの構造の差異による打鍵感の変化を体感できる、大変興味深い展示だ。

堀口英剛さんの動画でも紹介されていた

前回のレポートはこちら。

前回はアクチュエーションが感じられるかというところが焦点になり、ガスケットマウントはそれがないからヤダ、ウェイトはあったほうがきもちくなるという感じだった。

今回はどうか。まず、僕の好みを言うと、右端手前の青いやつだった。

  • トップマウント

  • 1.6mmスイッチプレート&基板

  • フォームなし

奥がウェイト入ってたのかな?そこ聞き忘れたな。

「これが一番」というより、「これ以外はなんかヤダ」という感じだった。今回は明確に線引があった。で、それが何かというと、「どのキーを打ったかわかる」ということだ。

打鍵振動というフィードバック

選んだ個体以外だと、キーボード全体に「一体感」というか「塊感」があって、どのキーを打っても全体がほぼ均一に振動するように感じられた。
その中にはプレートが1.2mmになっただけのものも含まれていて、ちゃんとスイッチのスナップフィット噛まないのに一体感が出るのはワケがわからないのだが、体感としてはそう。
そうすると、ノイジーな振動が少なくなり、安定感や高級感があって、まあ官能的に気持ちいいとされる方向にはいくのだが、僕はなんだか気に食わない。

その理由を言語化すると、「どのキーを打ったかわからない」ということになる。天然ハプティックフィードバックが全部同じなのだ。
というか、いわゆるところのハプティックフィードバックとか、あと圧電スピーカーやソレノイドなどのサウンドフィードバックとかに、あまり食指が動かないのはそこだ。キー単位じゃないからだ。圧電スピーカーなら、ソフトウェア的にキーごとに異なる音を鳴らすことはできるわけだが、それより出どころを変えてほしい気持ちがある。

当たり前だが、キーを打ったらそのキーを中心に振動が起こる。「心地よい打鍵感」を追求する世界では、どうにかして余計な振動を抑制したり、心地よい音に変えようとしたりするわけだ。
そこにもいろんな好みの違いがあり、様々な方法論があるが、中でも「打鍵感の均質化」というのは古典的な課題だ。
スイッチを固定する基板やスイッチプレートは、どうにかしてケースに固定されている。キーボード界隈で「マウント方式」といったら、プレート類をケース(あるいはボトムプレート)に固定する方法のことだ。
固定するために、ケースのフチに載せたり、スペーサーを挟んでネジ止めしたりする。この固定部分の近くでは打鍵感が固くなり、離れるほど柔らかくなる。当然、好みに合致するキーは一部だけということになる。
これをどうにか均質化しようということで、例えばOリングマウント、リーフスプリングマウント、そして近年主流のガスケットマウントなど、各種のマウント方式が考案されてきた。
その行き着くところ、ケース全体が均一に振動する「塊感」ということになろう。それは、いい。気持ちいい。それはわかる。わかるがしかし、「わかりにくい」のだ。打ったキーが。

それが自分にとって不快であるということを、僕は初めて認識した。
「各キーの打鍵感における均質性」と、「ケース全体における振動の均一性」というのは別の要素ではあるのだが、物理的にはそれこそ一体の事象だろう。
「均質性」はいい。気持ちいい。だが「均一性」はよくない。わかりにくい。

どっちを取るかといったら、僕は「不均一性」を取る。多少打鍵感にバラツキがあろうが、フィードバックとしての情報量を優先する。
僕の求める打鍵感は、不快な振動やノイズをある程度抑制しつつ、キー単位、アクチュエーションレベルでの明確なフィードバックがあるものだ。

均一(塊)派⇔不均一(節)派

ところが、「均一な方がいい」という人もいる。大岡俊彦さんもそうだ。実際、大岡さんの普段遣いの魔改造miniaxeも、非常に均一な「石の塊」的な打鍵感になっている。
それが僕はなんか気に食わなかったのだが、やっと理由がわかった。どのキーを打ったかわからないからだ。

タイピングと物語の二極分析シリーズにこじつけると、これもアクション/リアクションの違いのような気がする。アクションは発勁の効力感、リアクションは動作の達成感。みたいな。

打鍵感を重視するキーボード設計の趨勢は、均一志向に向かっていると思う。これは、そもそも「打鍵感を制御する」ということが、均一性を前提にしないと困難だからだろう。
じゃあ不均一志向のユーザーは打鍵感にこだわらなければいいのかというと、それも寂しい話だ。実際僕もそれほどこだわってはいないが、均質ではあってほしいし、気持ちいいほうがいいに決まっている。

たぶん板金曲げケースじゃねーかなというカンを設置しつつ、せっかくいいヒントをもらったので、不均一志向にとっての「心地よい打鍵感」をもう少し考えてみたい。

フィードバック(反応)とリバーブ(余韻)

キーボードからの物理的な「返り」は、フィードバックとリバーブに分けられると思う。
フィードバックは、情報。打った位置、アクチュエーションの有無を知らせるもの。
リバーブは、官能。音、指に残る感触、その心地よさ。

基本的に、不均一志向はフィードバック優先だろう。不均一であることの優位は、打鍵位置(振動中心)の特定情報だからだ。
そこで、「よさみ」を考えると、「純粋なフィードバック」と「フィードバック+心地よいリバーブ」という方向性がありえる。

僕はなんとなく前者なんだろうと思ってきたが、それはリバーブ重視のキーボードがフィードバックをないがしろにするものだからかもしれない。
フィードバックを損なわない限り、リバーブが心地よいに越したことはない。

純粋なフィードバック

純粋なフィードバックを志向する場合、以下のような特徴が必要になるだろう。

  • 振動はそこそこ出す

  • 不快な振動と音は抑制する

例えば、いわゆるハーフサイレントスイッチはアリな気がする。トップハウジング側にだけ吸音材を仕込むことで、バウンスバックの音だけを抑制するというやつだ。
「ステムが戻ってきた」ことの情報的な価値はほぼゼロなので、そんなもんはなくていいという考え方はあり得る。

あと、「キーボードとデスクの間」がけっこうキモかもしれない。キーボードのズレやデスクの振動は基本ただのノイズだ。実際僕も、最近はハネナイトを愛用している。

フィードバック+心地よいリバーブ

フィードバック+心地よいリバーブを志向するほうが難しいと思うが、ものすごいザックリいうと

  • フィードバックをいい感じに増幅する

という方向性になるんじゃないだろうか。

となると、フォームやガスケット、あとはTadpoleとか、軟質素材を使って振動・音を吸収する方向の設計は外れそうだ。
硬く、振動を殺さず、心地よいものに変える。ということを考えると、比重の高い金属をたっぷり使って剛性と重量を稼ぐ、というのが基本路線になると思う。

あ、ここで板金曲げケースの話になってくるのか。たぶんフィードバックとリバーブを両立する設計という意味では理想の一つだろう。
という思考に今たどり着いたので、天キー当日にあれだけあった板金曲げケースをしっかり打たせてもらっていなかった。あーーーーーもったいない。一個くらい買おうかな……

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