Kailh X Switchキーキャップがつらすぎるので改造した
wings42xで処女ビルドをキメた
以前Koolertronの分割キーボードを使っていたことはあるのだが、分厚くてパームレストなしで使うのが難しかった。
そしてパームレストありの分割キーボードは合わせて4つのモノを位置決めする必要があることがめんどくさすぎて耐えられなかった。
その後、しばらく一体型を使っていたのだが、やっぱり肩を開きたいし後ろに引っ込めたいと思い、パームレストが要らないロープロファイルの分割キーボードを探していた。
そこへ彗星のように現れたのがwings42xであった。以前からDaily Craft Keyboardのキットには注目していたが、長らく在庫が払底していた。そこに、市販メンブレン並みの薄さで投入された本作のテスト販売に、僕は音速で食い付いていた。たぶん一番早かったと思う。
そして、今だから言うが……X Switchの問題点にこの時点で気付いていたら、たぶん買ってなかったと思う。
X Switchの問題点
すぐチャタるとかショートするとか(この辺は熱が原因??)、キーキャップはめるのが難しくてぶっ壊しがちとか、ビルド段階での困難も色々あるが、それはクリアしたものとする。した。
とりあえずちゃんと組み上がったとして、デカい問題がふたつある。
上記記事に詳しいが、要するに
押下圧が相当に重い(現状でタクタイルとクリッキーしかないのでバネ以外の負荷もかかる)
純正キーキャップがツルッッッツルで押しづらい上に他の選択肢がない
ということだ。
ちなみに、キーキャップがツルッッッツルなのは形状だけでなく材質もそうで、はちゃめちゃに滑る。これは夏にはえらいことになると思った。
このうち押下圧については、要するにバネを軽いものに変えればいいわけだが、とてもそんな改造はできる気がしなかった。そもそも、choc v1用のバネなら色々出回っているが、この際はバネから探す必要がある。ちょっとやってられない。
しかし、キーキャップの改造はそこまで難しくない。上に何か貼ればいいだけだからだ。基本的に取り返しもつく。
そこで、まずサムクラスタには小さめにカットしたウレタンシートを貼ってみて、これは結構悪くなかった。
しかし他のキーはそうもいかない。ただでさえスイッチが重いのに、クッションを挟んだら余計に力が要る。
理想は、いわゆるスフェリカルな凹みをつけてやることだ。36個用意するのはシリコーンで複製すればいいだけだが、オリジナルを極薄形状で作る方法となるとなかなか難しい。
色々考えて、どんどん迷走していった。
彫刻刀とヤスリで木工
なんか球形のドリルみたいなやつを見つけて掘る
なんかいい感じの球体から型取りする
コンタクトレンズを型取りする
fusion360をやる
こりゃあ烈海王の打岩みてえな精度をヤスリで目指すしかないかと覚悟を決めかけたあたりで、唐突に典型が降りる。
──既存キーキャップの上の方だけ複製すればいいじゃないか、と。
「キートップ」複製
ちょうど手元にあったKBDfans NP ブランクキーキャップが、スフェリカルで、ホーミングキーのバンプ(突起)もあり、さらに大量に余っていたため、これを複製元にした。
上の方だけ複製するには、首切りしてしまえばいいわけだが、それだと元に戻せない上、精密に切れるか怪しい。
そこで、逆に下の方を板に埋め込んでしまい、露出部をシリコーンで型取りすることにした。
First trial
測定した結果、元の高さ9mmの下7mmをカットすればよさそうだったので、7mmの板を選び穴開け。
キーキャップをはめ、隙間をポリパテ(ヨドバシ.com - フィニッシャーズ フィニッシャーズ ホリパテ スタンダード 200g [プラモデル用品] 通販【全品無料配達】)で埋める。
シリコーン(Amazon.co.jp: 【型取り材】【食品用シリコン】 HTV-2000 1KG 硬さ:柔らかめタイプ : ホビー)を流し込むため、枡にはめる。
枡はAmazon.co.jp: ウメザワ 桧 ひのき 1合升 日本製 293084 : ホーム&キッチンを使用した。いや枡はなんでもええわと思われた方もいらっしゃるだろうが、まあもうちょっと読んでほしい。
これにシリコーンを流し込み、最初のモールドが完成した。
しかし、これを試したところ、思ったよりへこみが浅かったため、無駄に分厚い仕上がりになってしまった。
ここで妥協しておけば後の苦労はなかったのだが、どうせX Switchを使うなら、なるたけ薄い方がいいに決まっている。
すぐにモールドv2の制作に取り掛かった。今度はスペーサーを8mm厚にしてみる。
8mm厚の板がすぐ手に入らなかったため、4mm厚のベニヤ板を二枚重ねにした。ベニヤ自体の多層構造による加工性の悪さに苦戦しつつも、枡はすぐ完成した。なお、これはキャンドゥのプラスチック枡である。
シリコーン溶ける問題
しかしここで、ポリパテ部分に触れたシリコーンが溶けるという問題が発生する。
いちおう数日ほっといたら固まったので、硬化が極度に遅れるというのが正しいかもしれないが、とにかくこれが最大のつまずきであり、そして最後まで解決はしなかった。
試してみた対策は以下の通り
取り出しまでの時間を調整する
有機溶剤の染み出し対策として、ポリパテ部分に水性塗料を塗る(定着せず大失敗)
枡を木製に変える(キャンドゥで購入)
これにより、手持ちシリコーンの大半が豆腐状のゴミに変換された。なお、このシリコーンはTofu用のダンパーを作るために購入したものなので、実質無料である。
しかし、シリコーンを買い足したら実質無料ではなくなってしまう。脂汗を流していたところ、おゆまるという型取り材のことをようやく思い出した。
おゆまる編
これはあっさりと成功し、ようやくモールドv2が完成とあいなった。
複製は、直にキーキャップへ食い付かせることにした。試作段階でそう簡単に剥がれないことはわかっていたし、接着のための平面を作るにはどのみち何かの板に押し当てる必要がある。
しかし、キーキャップの位置決めが思いの外難しかった。モールドに楊枝でガイド穴を開けたりもしてみたが、やはりうまくない。
キーキャップを確実に位置決めするには、モールドにキーキャップを嵌め込む窪みがあればいい、つまりオリジナルのキートップ周辺を浮き彫りにすればいいわけだが、この時の僕にそんな余力はなかった。
そこで、逆にこの個体差を利用して、キーピッチを擬似的に縮めてしまうことにした。下付き気味の個体は上の行に配置するとかそういうことだ。
試験運用
この段階で、試験運用を開始した。表面の仕上げをしてないので手触りはイガイガだが、別物のように打ちやすい。スフェリカルキートップの効果は充分だ。
このままヤスリがけしてもよかったのだが、その前に造形をもう少し整えておくことにした。
パテナイフの代わりにより細かいペインティングナイフを使って、ポリパテでキーキャップの地肌を全部埋め尽くし、ついでに細かい気泡も潰した。さらに、ヤスリで側面のポリパテを落とし、出っ張りを削っていく。
土日かけて盛って削ってを繰り返し、まあまあ満足のいく仕上がりになった。
次にヤスリがけだ。ダイソーの棒状スポンジ付き800番で天面を均し、1000番で磨く。この時点で、かなり官能的な手触りになった。
そして、蜜蝋ワックス(Amazon | 天然素材100% 蜜蝋ワックス BEEWAX 60ml | 塗装材)で仕上げ。
蜜蝋ワックスはコーティング剤というわけではなく、木材に浸透することで汚れの浸透を防ぎ、かつ手触りを改善するものだ。
キーキャップの手触りを向上する仕上げ材として近年注目されている。特に、dmm.make等の3Dプリントによるナイロン系樹脂製品に対しては、一部でテッパンと化している。
これは、蜜蝋ワックス自体の「良さ」もさることながら、3Dプリントの精度の低さによる手触りの悪さ、ナイロン系樹脂の吸水吸油性の高さによる皮脂汚れへの弱さが理由だと思う。
ナイロン系樹脂に対しては適用例も多く安心なのだが、ポリパテすなわちポリエステル系樹脂に対してどうなのかはよくわからなかった。
軽く調べてみると、ポリエステル系樹脂も吸水吸油性は高そうだった。考えてみたら、ナイロンもポリエステルもいわゆる化繊として、肌着にも使われる樹脂なのだから、皮脂を弾かれても困る。要るっしょ。いけるっしょ。
というわけでぬりぬりしてみたが、どうもあんまり馴染みが良くない。18時間くらい経過してもまだべとついている。
そのまんま使い始めたところ、まあ当たり前ながらそのうちべとつきは収まったが、手触りがよくなったかは正直よくわからない。
時間をかけてワックスが吸収されたのか、全部拭い取られただけか……
ぶっちゃけヤスリがけだけで満足な仕上がりだったので、皮脂汚れさえ防げればいいのだが、果たしてこれで効果があるのか。
ただ、ワックスが馴染まないということは、皮脂汚れも付きにくいのであろうから、とりあえずそのまんま使い続けている。
3ヶ月評価
キータッチへの不満は大幅に改善された。単純に、滑りにくい材質になったのが大きい。
スフェリカルキートップも感触良好。指が引っかかるほどの凹みでなくても、「ココで合ってるよ」という安心感が違う。やはりフルフラットは感覚に訴えるものが少なすぎる。
ホーミングバンプはもう少し低くてもよかった。指に刺さる感じがしなくもない。まあこれは削ればいいだけなので、気が向いたらやってみようと思う。
もう一つ気になるのは、見た目があまりにも汚らしいことだ。
蜜蝋ワックスの効果なのか、皮脂汚れはほぼ防げていると思うが、単純にポリパテの色がよろしくない。それはそうで、塗装せずに使うことなど想定されていない代物だ。
どうせ手元なんか見ないでしょと思って軽視していたのだが、長く使っているとだんだん気になってくる。
元はプラモデルの素材なのだから、いくらでも塗りようはある。しかし、プラモデル用の塗料となると、触感に関する官能評価がまるっきり皆無だ。
蜜蝋ワックスの上から塗っていいのかもわからなければ、塗料の上からワックスをかけてもいいのかもわからない。
触り心地のいい塗料をご存知の方がいらっしゃれば、ぜひ情報をお寄せ頂きたい。
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