打鍵時の指(フィンガー)の動作を分類してみた
最初に結論
三つの関節の運動の種類によって
プッシュ
スライド
フック
の三種類
それぞれ
突き刺し打ち
撫で打ち
踏み打ち
に対応する。
改めて前置き
最近タイピングの話をずっとしていて、撫で打ちでも突き刺し打ちでもない、踏み打ちだ!とか言ってたわけだが、ちょっと解像度が足りない気がしてきた。
速くて疲れないタイピングとはどのようなものか?
タイピングには無数の要素があり、個人差もあり、簡単にこれが最高!という答えは導き出せない。
その一助として、指の動作の分類を試みる。
フィンガーとサム(親指)の分別
英語で言うfingerとは、親指を除く(通常は)四本の指のことだ。
サムズアップという言葉からもわかるように、thumbは親指のみを意味する。
親指と他の指は役割が大きく違うので、分けて語りたいことがよくあるが、日本語にはfingerに相当する適切な語彙がない。なのでフィンガーと呼ぶ。
以後、基本的にはフィンガーの動作について書く。
また、標準配列などのキー数の多いキーボードにおいては、指の運動だけでは届かず、手そのものを動かすことになるが、これは話が複雑になるので考慮しない。
基本的に片手6列以内、つまり人差し指と小指のみが1〜2列を担当し、中指と薬指は1列を担当する場合について考える。
屈曲と伸展
関節には動作方向による分類がある。
フィンガーの関節のうち、先端に近い二つをまとめて指節間関節(IP関節)と呼び、先端側をDIP関節、真ん中をPIP関節と呼ぶ。
これらは一軸の蝶番関節、つまり一方向の曲げ(屈曲)伸ばし(伸展)しかできない関節だ。
フィンガーの根元の関節は中手指節関節(MP関節)と呼ぶ。
これは球形関節であり、屈曲・伸展に加えて中指から離れる動き(外転)と逆に近づく動き(内転)ができる。
これに合わせて、キーボードの列についても、中指から遠いほうをを外側、近いほうを内側と呼ぶことにする。
6列以内のキーボードにおける打鍵は行移動(前後の動き)が中心なので、関節の運動としては屈曲・伸展が中心になる。
人差し指と小指に関しては列移動(横の動き)もあるから、その際は外転が伴うが、これは屈曲・伸展に外転を加えたものと考え、いったん除外する。
筋収縮の分類
蝶番関節であるから運動方向は屈曲と伸展しかないが、もう一つ「力の入れ方」という要素がある。
関節動作を伴わない「静的」な「等尺性筋収縮(アイソメトリック コントラクション)」
関節動作を伴う「動的」な「等張性筋収縮(アイソトニック コントラクション)」
簡単にいえば、アイソメトリックは「こらえる」、アイソトニックは「動かす」力といえるだろう。
これを、屈曲・伸展と組み合わせると、次の4種類の運動となる。
曲げる・動かす
曲げる・こらえる
伸ばす・動かす
伸ばす・こらえる
このうち、「伸ばす・こらえる」(デコピンの溜めみたいな)は、タイピングにおいては現実的に発生しない。
なので、「曲げる(屈曲)」「伸ばす(伸展)」そして「こらえる(抵抗)」の三種類に分類しよう。
フィンガー動作の分類
ここまで条件を限定すると、フィンガーの動作はかなり少ないパターンに分類できる。
まず、IP関節は基本的に独立して動かすことができないので、実質的には一体と考える。
MP関節は、IP関節とは独立して屈曲・伸展を行える。例えばバスケットボールを掴むときなど、IP関節は屈曲、MP関節は伸展だ。
そして、MP伸展だと指がキーから離れてしまうため、これも現実的に無い。
さらに、この三つの関節の一部だけで抵抗するのも現実的には不可能だ。
付け加えると、これは「動き」のパターンであって、指の「形」は直接的には関係ない。伸ばしきった状態からの屈曲もあれば、ある程度曲げた状態からの屈曲もある。
よって、関節ごとの運動パターンは次の3通りとなる。
IP屈曲・MP屈曲
IP伸展・MP屈曲
IP抵抗・MP抵抗
次は、これらに名前を付けてみる。
IP屈曲・MP屈曲:プッシュ(叩き)
指先で叩く動き。
タップと言いたいところだが、タップ/ホールドのタップと混同しないようにプッシュとした。
キーが高い場合など、一端MP伸展で持ち上げてから打ち下ろす場合もあるだろうが、実際の打鍵時には両屈曲となるためプッシュに分類する。
いわゆる突き刺し打ちはこれが中心。撫で打ち系でも、手前のキーはこれになる場合も多いはず。
IP伸展・MP屈曲:スライド(こすり)
テーブルに置いたカードを押し出す動き。
プッシュと同様、ぐっと手前に引いてから押し出す場合もスライドに分類する。
いわゆる「撫で打ち」の動きは実際にはコレだというのが、今回特に明確にしたかったとところ。
IP抵抗・MP抵抗:フック(引っかけ)
指でぶら下がるような動き。
指の形がどうあろうが、指自体を動かさずに、引っかけて手全体で押し付けるような力の使い方をすればフックとなる。
個人的には踏むと言いたいところだが、今回は関節の動作をより直接的に表現した。
つまり踏み打ちはこれが中心。
第三の打鍵法は本当に三大の三つ目だった
ということが、運動生理学的な見地から明らかになってしまった。
僕の踏み打ちは撫で打ちに近い、つまり基本的に底打ちしないといったが、これは浅いスイッチ・弱いバネを使っているからだ。
こらえる運動の強度は押される強さによって決まるのだから、浅いスイッチ・弱いバネを使えば撫で打ちに近くなり、深いスイッチ・強いバネを使えば突き刺し打ちに近くなる。
突き刺し打ち・撫で打ちがいずれもアイソトニック運動であり、踏み打ちだけがアイソメトリック運動であることを考えれば、全く新しい流派ともいえる。新しいから優れているとは言えないが。
どれが望ましいのか、どういう特性・目的にどの打ち方が合うのか、といったところまでは今回踏み込まない。
手全体・腕全体・そして全身のフォームも当然重要であり、指の動作のみをもってどれが優れている・合っているといったことはそもそも論じようがないだろう。親指の話すらしてないし。
ただし、その前提としては有益ではないかと思う。撫で打ちはスライドっていうのは大声で言って回りたいです。
追記
伸展・伸展ってまじかよ
その動作でアクチュエーションの2mmを稼ぐ方法は指先の曲面を滑らせるくらいしか考えられないので、オールコンベックスキーキャップが前提の打ち方だとは思う
さらに追記
いや自分でやってるわこれ! 縦テンティングだとやってる!
「上から入れる」だけのことですわ。いやこれはちゃんと構成に入れないと。あとでやります
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