EMPOWER、「ジェンダーレンズ」、クォーター制etc.について
昨日、吉田晴乃記念実行委員会(通称HYMEC) A分科会(「社会を変える女性役員を増やす分科会」)企画、G20からの贈り物 EMPOWER(エンパワー)ってなんだろう?に参加したので、そこで学んだことと気づきを簡単に記録しておこうと思います。
スピーカーは、EMPOWER日本共同代表のアキレス美知子さん(SAP人事特別顧問)と塚原月子さん(㈱カレイディスト代表取締役)のお二人。
司会は、大阪ガスの津田恵さんと荒金雅子さんでした。
(皆さん、非常に魅力的!ステキ!)
1.EMPOWERとは?(総論)
EMPOWERとは、Private sector alliance for the Empowerment and Progression of Women’s Economic Representation経済における主要な役割を担う女性が増え、エンパワーメントを加速するための民間企業のアライアンスとのこと。
G20諸国を中心とする国際ビジネスアライアンスであり、G20首脳に対し、活動の進捗報告と提言を続けていく活動をされています。
日本が議長国を務めた2019年6月のG20大阪サミットで合意され、首脳宣言に立ち上げと支援が明記され、2020年に本格的に発足。
亡吉田晴乃さん(G20で提言を提出された翌日に急死されました…とても使命的・運命的なものを感じます。晴乃さんに関する記事は、後日、改めて書きたいと思います。)は、2019年のG20のエンゲージメントグループの一つであるW20(女性の経済的エンパワーメントを目的としてG20に提言を行うとともに、G20におけるジェンダー分野でのコミットメントをモニタリングする役割があります)の運営委員会共同代表を務められていたので、この民間ビジネスセクターであるEMPOWERの立ち上げは、晴乃さんの遺志でもあるわけです。
アキレスさんと塚原さんはその際、W20の事務局をされていました。
吉田晴乃記念実行委員会が今回の企画を行ったのも、吉田晴乃さんの遺志を繋いでいくため、EMPOWERの活動をもっと知ってもらい、アドボケートを増やして民間主体の活動を浸透させていこうというところにあります。
2.EMPOWERの具体的活動(各論)
EMPOWERは、「ビジネスセクターの意思決定層への女性参画強化」にフォーカスし、G20に進捗の報告と提言をすることで各国に直接的な関与をしています。
B20(企業活動全般を網羅)やW20(ジェンダー課題網羅)との違いは、「意思決定層への女性参画」という一点に集中して活動していること。
B20、W20とは、各国の好事例等の情報連携をしています。また、政府や国際機関をはじめとして国家間でも連携し、経済界ともアドバイス・アドボケートになってもらう・事例共有・知見共有という連携をとりながら活動を推進しています。
「意思決定層への女性参画」とは、具体的には、次のような各項目について、それに対する施策や導入の提案をしています。
① 組織のガバナンス向上
② 女性経営層の育成と内部登用促進
③ 有能な人財の獲得と流出抑制
④ 多様性からのイノベーションの創出
現在、アドボケートとなっている日本企業・団体は、2021年2月1日現在で23社・団体。
日本は、立ち上げ時にG20の議長国であったことから、永久副議長国として、具体的には、アキレスさんと塚原さんが「頭に汗をかきながら」イニシアティブをとって、活動され、2020年には成果文書を提出されたとのことでした。
本業は別にあっての全くの無償で国際的活動を担われて、敬意と感謝しかありません。
…いっぱい書きたいことはありますが、長くなるので…EMPOWERについての詳細はここまでにさせていただきます(質問あれば、コメントください)。
3.本イベントから学ばせていただいたこと
教えていただいた知識や気づきをランダムに記載します。もっと沢山のお話しがありましたが、個人的に印象に残ったことを中心に(メモが不正確な場合もありますので、その点はご容赦を)。
① 海外の企業では、反対があっても女性参画に効果がありそうな施策(例えば、クォーター制や部長級クラスのジョブシェアリングなど)に取り組んでいく傾向があるのに対し、日本企業では、反対が少なく手を付けやすい施策(例えば、研修制度や仕事と子育て・介護等の両立支援など)から取組む傾向があるそうです。
なんか、わかりますよね。。。
このため、日本の両立支援制度は世界的にもトップレベルの充実ぶりなんだそうです。
② 現在、日本企業では、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関する研修が盛んですが、これを、個人(社員)の一人一人の努力・改善止まりにするのでは無く、組織の仕組みの中で対応していくということが重要だとのお話しがありました。
仕組みとは、例えば、採用や評価の際に、一定のルールを設けたり、あるいは、評価者/採用担当者に多様性を持たせるなどです。
このテーマに限らず、アキレスさんが、「個人ではなく、仕組み作り」という言葉を繰り返されていたのが印象的でした。
③ クォーター制
クォーター制度は、女性の数を増やし、経営陣の多様性を確保するという点では、明らかに効果がある。
クォーター制によって、登用された女性には、実績・能力がないという反対意見が出されることも多いが、これからのニューノーマルの時代、評価基準を見直し、女性だけでなく若者も含め、本当に能力がある人は誰か?という基準を持つことが必要になってくると思われる、特に、今後重要なのは、取締役だけでなく、ラインの長である執行役員の多様性である(強く同感)。
という指摘は、個人的には初めて知る視点で勉強になりました。
④ ジェンダーレンズ
一番、印象に残った言葉、これからみんなに広げていきたい言葉がこれ!
ジェンダーレンズとは、節目節目で、自社の数値・データをまとめ、かつ、マネージャー達がこの数字を認識するということ。
何から手を付けようと困惑している企業は、どうしたらいいでしょうか?という質問に対して、アキレスさんは、①「まずは現実をみる。ジェンダーレンズといいます。」と答えられました。
さらに、②「KPI=ここまではたどり着きたい(たとえ低い数値であっても!)という目標をもち」、③「現実と目標のギャップを埋めるためのアクションを取っていく」と教えてくれました。
ちなみに、日本の指数は、G20の各国中19位とのこと。。
⑤ ジョブ型への移行
イベントを通じて感じたのは、生産効率を高め、優秀な人財を獲得/引き留めていくためには、日本企業もジョブ型に移行せざるを得ないんだろうなと言うこと。
男女のペイギャップの問題も、ジョブ型にすることで一部解消されるでしょうか。
日本企業も、人事制度、評価基準。じわじわと既に変わってきていますが、、(法律の世界の方が現実から遅れてずれてきていますね…)
⑥ スポンサー制・教育の仕組み
会長、社長を除く特に執行役員クラスの方にスポンサーになってもらうのは有効(直属でなくていいし、社外でもいい)。
⑦ 女性仕事観マトリックス
全女性社員一律にアプローチしても効果にばらつきがある。
女性にも、仕事や家庭について、いろんな考え方があるので、「強みを磨く」という視点をもつ。
⑧ シャドーイング
仕組み作りの一例として、メンター制度の他に、「シャドーイング」と言って、2週間程度、役員に、影のように付添い、デジジョンメイクの場面での振る舞い等を目にして学ばせるという制度もあるそうです。
すごい!
⑨ 経営陣に選択させるための手法
1つだけ施策を提案すると、採用/不採用になってしまうので、
選択肢を3つにして、どれかを選んでもらう。
(!!!!!!!!!)
⑩ EMPOWERアドボケート企業のベネフィット
・G20のレポートに社名が載る。これを発信し、採用ブランディング等に利用できる。
・政府等にお願いするのではなく、主体的に活動しているという発信ができる
等を挙げられていました。
⑪ 参加者一人一人に対するお二人のメッセージとしては
飛ぶ時には飛ぶ覚悟を。
楽して成長は無い。
仲間とともに成長する。
最後になりましたが、アキレスさん、塚原さんが率先して道を切り拓いていただいていることに感謝と勇気をいただく貴重な機会となりました。
いただいたエネルギーで、勢いあまって、初投稿しております。
お読みくださりありがとうございました!
今後もEMPOWER、ダイバーシティ&インクルージョンに関する記事を中心に書いていきたいと思います。
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