フリースクールの放課後の話
気付いたら前回の投稿からもうずいぶんと経ってますね…。忘れてたわけではないのです。ドタバタと原稿を上げて少し落ち着いてボーッとしてたらもう冬で…。
ちょっと羽根を伸ばして落ち着いたので、また昔を振り返って少し書いてみようと思います。
いちおう前回のあらすじは、引きこもりを脱却してフリースクールで他人との交流が始まって、中学校を覗き見したりして、どうやら自分は人並み以上に色々と足りてないな?とアホなりに自覚をつのらせていた所…。
フリースクールに通う生活が始まってしばらく経った頃。
この頃の毎日は、朝起きて郊外の自宅から都市部へ自転車を30分走らせてフリースクールに到着。午前中の勉強の時間は真面目なフリでなんとなく本を読んだり絵を描いたりして、お昼はそれぞれ持ち寄ったお弁当を食べて、それから午後はみんなで遊びの時間。そんな感じの、当初不安に思っていたよりはずっと穏やかな日々が新しい日常になりつつあった。
まあ午後の時間は一応運動が推奨されていたような気がするけど…なにか行事やイベントでもない限りはほとんど自由時間として機能していたから、実際はクラスメイトに誘われるままに遊んでばかりだった。
公民館の3階にはフリースクールの他には卓球ルームと音楽室があった。音楽室といってもそこはほぼ開かずの間でホコリを被って放置されていたから、とりあえずみんな卓球するしかない。あとは、たまに公民館外の敷地内にある豆粒みたいに小さなテニスコートを使わせてもらったり、隣にある大きな公園で走り回ったり…。そんな感じの、たぶん自室にこもって絵を描いてゲームをしてるだけの頃よりはずっと健康的な日々。
穏やかだけど、それでも普通のコミュニケーション能力が崩壊していた自分にとってはやっぱりリハビリの日々で、いつも終わりの会のあと一人で帰っていく時間は頭の中での反省会が定例行事になっていた。色々と足りない子供ながらもいちおうは自省の心を持ち合わせていたらしい。公民館の駐輪場で自転車にまたがりながら
(今日はちゃんと挨拶できただろうか?)
(なにか変なこと言ってなかったかな?)
(いや、やっぱり変だったな…)
と、帰路につきながら一人思い返して赤面したり、しなかったり…。
今思えばあまりにも未熟で年相応で当たり前の、ふつうの日常が少しずつ形作られていった時代だったのだなと思う。
そんな思春期のモヤモヤを紛らわせてくれるものがあった。
公民館のあるところはずいぶん寂れているとはいえ一応は栄えた市街地で、普通の中学生なら休日に遊びに出かけるような場所。サボりか不登校でもなければ真っ昼間からこんな場所を私服でフラフラしているのもおかしくて、実際なんで自分はいまこんな街中を歩いてるんだろう?と不思議な感慨があった。
疎外感でもない、妙な解放感。自分が本当にモブキャラになれたような、透明になって街と同化してしまったような気持ちがして、それが嬉しくて、よく帰宅がてらに知らない街中を一人でふらふらと散策したものだった。もし大人や警察に声をかけられたとしても
「あそこの〇〇っていうフリースクールの生徒です!」と弁明すればどうにか言い訳がつくだろう、という打算も多少、足取りを軽くさせてくれた。嘘でもないし。実際には声をかけてくる人なんていなかったけど…。
気ままに散策しながら、アッこの道はお母さんの車で通ったことある!あのお店はちょっと気になってたお店だ、自分が入ってもいいのかな?あのビルは離婚したお父さんのやってたスナックのある所では?等々…。
その中でも、思い出というほどでもないけど印象に残っているのは、公民館のすぐ向かいにあるビル裏。そこはちょうど駅前の商店街の裏手で、表には若者向けのライブハウスがある。夕方頃になってそのライブハウスの裏手にいるとバンドの演奏が店内から漏れ出して聴こえてきて、その音をビル裏の階段の下に隠れるように座り込んでこっそり聴くのがささやかな楽しみだった。といっても演奏はほとんどくぐもってろくに聞き取れたものではなかったけど、それでもなにか特別な席で聴いているような、ちょっと悪いことをしているような気分でワクワクした。
そんなふうに、なぜか素直に帰りたくないときは街中に出て誰でもない一人になって安心していた。街中は寂れていたけどキラキラしていた。
あの中学校では気がついたら自分は異物になってしまっていて、この街においてもそれは変わらずやっぱり異物のはずだけど、そんな自分が一人でいることをここでは誰も気に留めないでいてくれる。
もし自分が「普通の中学生」なら今頃いる筈のなかったこんな遠い場所にも、それとはまるで無関係のように、当たり前のように世界は存在していた。それが外に出てみて初めて気付いたこと。
フリースクールの放課後のこの時間に自分は、受け入れられることも掃き捨てられることもなく、他人から求められる役割はまったく無くなってしまっていた。
そんな時間がどれだけあの頃の心を癒やしてくれただろうか。
引きこもりに疲れて、人との交流に夢を見て外へ居場所を求めてみたけど、そうして自分に一番の心の癒やしをくれたのは結局、孤独の時間だった。
学校でもフリースクールでもない、なんでもない街中という休憩地点を見つけられたから、不格好ながらにあの時代も乗り越えられたのかなと思う。
とりあえず区切り。
以前の投稿に比べて短いけどたぶんこのくらいの方が丁度良いかな?まとめるのが下手で好き勝手に書いてるのでいつも長くなってしまいますが、今後はこのくらいの文章量でコンスタントに投稿できればいいですね…。計画性がないのであまり期待はできないですが、また思い出しつつ書きたいと思います…。
あと今回見返してみて思ったけど全然登場人物がいないな…。実際にはいろんな人(先生やクラスメイト)と出会ってるんだけど、当時の自分の視点で書くとどうしても自分の世話に精一杯って感じで、他人に集中する余裕がなかったからこんな視点になるのかなと思います…。
またフリースクールの友達のお話なんかも書いてみたいですね。
まあ具体的に書こうと思っても個人情報や身バレ等あるので、書ける範囲内で…。
お わ り( ◠‿◠ )