ブランディングの第6ステップ:認知ゴールの設定
ここまで、ブランドの価値の考え方を整理し、ブランドのターゲットを探索し、そのターゲットの内情を探り、ブランドの価値の源泉を探ってきました。これは、ブランド価値の提供側とブランド価値を享受する側の接点を見つける作業でもありました。これらの分析を踏まえて、次のステップではいよいよ認知ゴールとブランド戦略を構築していきます。ワークショップではここからが、クライマックスとなります。
認知ゴールの設定
認知ゴールとは、ブランドがターゲットにどう思われるかを決める目標です。これがないと、なんのためのブランド戦略なのかが明確になりません。ブランディングとは、理想とする認知をターゲットの脳に作るためのすべての活動を指します。そして、その活動の方向性や方針をブランド戦略と言います。
認知ゴールの重要性
認知ゴールを設定することは、特に慣れていない人にとっては難しいものです。しかし、これがないとブランド戦略を導くのも非常に困難です。ワークショップで認知ゴールを説明する際には、
「このブランドがターゲットにどう思われたらビジネスとして大成功するのか?」
を考えてもらいます。どう思われたいのか、どう思われれば成功なのかが認知ゴールです。わかりやすく言うと、
「このブランドって一番○○だよね?」
の○○に入る言葉を考えることです。
目指すは第一想起とカテゴリーネーム
ブランドの認知ゴールとして最も理想的なのは、第一想起にブランドの名前が上がってくることです。例えば、
「ハンバーガーと言えば?」
とワークショップで聞くと、99%の人がマクドナルドと答えます。
「おいしいハンバーガーショップと言えば?」
と聞くと、モスバーガー、バーガーキング、ウエンディーズ、そして地元のハンバーガー屋さんの名前が出てくることもあります。新しいカテゴリーの商品であれば、そのカテゴリーの代表として認知されることが理想的です。
例えば、「味の素」はうま味調味料を総称して使われるほど、強い認知を持っています。商品名がカテゴリーネームとして認知されるのは理想的ですが、ほとんどが先行者利益になります。
既存のカテゴリーにおける戦略
しかし、既存のカテゴリーの中に新参者として入る場合があります。例えばハンバーガーと言えばマクドナルドという王者のようなブランドがある場合、これを覆すのはほぼ不可能です。コカコーラとペプシコーラが激しい競争をしていた時期もありますが、ペプシが1位を覆すのは非常に難しいのです。
独自性を意識した認知ゴール
例えば、
「一番ヘルシーなハンバーガー」
「一番ボリュームのあるハンバーガー」
「一番和風なハンバーガー」
など、さまざまな形容詞を使って分野を切り分けて認知ゴールを設定する方法もあります。文章でも一言二言でも構いませんが、そのゴールに到達すれば明らかにその商品やブランドが成功している認知を獲得することが理想です。
「1番微妙なハンバーガー」
「1番まずいハンバーガー」
このような認知を獲得しても、そのブランドが成功するわけはありません。
認知ゴールとブランド戦略の関係
この認知ゴールに到達するための道筋が戦略です。この道筋と言うのは1本ではなく考えれば考えるだけたくさんあるはずなのです。ただその中でも安く早くその認知を獲得できるというのが1番優れた戦略を選び出すという考え方になります。
次のブランド戦略のアイデアを出すセッションは非常に重要です。ブランドの基本的な価値や技術、会社として重要なポイントをすべて考えた上で、認知ゴールとブランド戦略を決めます。
実際の進め方
1度のセッションで認知ゴールが明確に出ないことも多いため、ある程度方向性が決まったらブランド戦略と一緒に考えるのが現実的で無駄な時間を使わない進め方です。この認知ゴールとブランド戦略のアイデアを出す段階が最も難しい部分です。プロとしては、常にこの戦略立案をクリアすることが求められますが、血の出る想いで、毎回苦労します。
まとめ
認知ゴールとブランド戦略がチーム全員で納得できれば、ブランディングの大方が終了したと言っても過言ではありません。次は最重要な具体的なブランド戦略の発案方法について説明します。