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『バズりと炎上と信条と損得』赤いきつねのウェブCM騒動

東洋水産のウェブCMが一部で議論を醸している。『赤いきつね 緑のたぬきウェブCM ひとりのよると赤緑』だ。『おうちドラマ編』『放課後先生編』の2本が公開されているが、批判があるのは主に前者だ。

批判を雑に要約することをお許しいただければ、「女性を性的に描いており差別的だ」といったものが多いようだ。

私はマーケティングの専門家ではなく、映像作家でもないが、今回は時事ネタに便乗し、当該ウェブ広告の印象、解釈について簡単に書いてみたい。

「ひとりのよると赤緑」

このウェブCMのテーマは「ひとりのよると赤緑」である。夜間に一人で「赤緑」を食べるという設定は、2つの映像で共通している。

夕食、夜食として赤緑を食べる行為は、不健康で生活力のない、ずぼらな行為だと考える人も少なくないのではないだろうか。赤緑は、夕食としては栄養不足であり、夕食後に食べるには高カロリーだ(正確な栄養価は未確認であるため、これは筆者の偏見である)。

また、「ひとりのよる」からは孤独が連想される。男性は一人で残業しながら職場で緑を食べる。女性は一人で自室で映画(テレビドラマ?)を見ながら赤を食べる。どちらの状況も多幸感に満ちているとは言い難い。リアルに描写すれば、もっと疲れた、がさつで生活力のないキャラクター、もの悲しい映像になるかもしれない。

意外と悪くないんじゃないでしょうか?

しかしこれはCMである。赤緑を食べてもらうため、買ってもらうために作られている。

筆者の解釈だが、この映像の主眼は、ずぼらで不健康と受け止められがちな赤緑の食べ方を肯定すること、「ひとりのよるに赤緑を食べる皆さんは頑張っていて素敵ですよ。きっと意外と悪くないですよ。」と表現することにあったのではないか。

キャラクターが美味しそうに食べなければ、幸せそうに見えなければ広告にならない。リアルに描けば残念に見えがちな場を、決して残念ではない、幸せな人物、光景として再定義したい、そういう意図に思われた。

少なくとも、女性を性的に描く意図は制作サイドにはなかった筈だ。映像を見た人を性的に興奮させても赤緑は売れない。

Xでバズるポスト

騒動のきっかけは、映像を心から不快に感じた人が居たからだろう。しかしどうも最近のこの種の炎上騒動に過剰な火力を感じる。

Xでは、リプライやリポスト数でインプレッションを評価し、おすすめ表示する傾向があるらしい。元ポストに対する批判のリプライでもインプレッションが向上するならば、批判されやすいポストの方がより伸びることになる。

  • ロジックが穴だらけで批判しやすいこと

  • 攻撃的、独善的で反感を買う表現であること

  • 頑健な支持層の存在する立場に立つこと

以上がそろったポストはバズりやすい。ロジックに穴がある方が反論のリプライがつきやすく、表現は攻撃的であるほうが感情を煽って批判を集めることができる。また、世の中には理屈抜きで賛同が集まるような主義主張が存在する。そうしたスタンスに寄った主張は、ロジックが粗雑であっても、批判に対する再批判が勝手についてくる。

Xはインプレッションの多いアカウントの収益化を認めている。金銭目当て、バズり目当てで、心にもない意見を投稿する人がそれなりにいるのではないかという疑念を持っている。

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