AI時代のキーボードタイピング力について考えてみた話
はじめに
ChatGPTなどの対話型AIの利用が一般的になった現代で、意外とも、当然とも注目されているのが「キーボード・タッチタイピング力」です。
パソコンよりもスマホ利用者の方が多くなり、音声認識も実用的な現代において、時代に逆行するような形で、キーボードタイピング力が再度注目されています。
そこで、AI時代のタッチタイピング力に関して【妄想】してみました。
AIと情報のキャッチボール
AIチャットを行う時、AIへ指示を出す時、リアルタイム画像生成を行う時に、高速に文字情報をやりとりする必要があります。
今はまだ発展途上のAI黎明期であり、(画像生成は顕著ですが)生成を行う際の時間差があります。画像生成プロンプトを入力して、数秒〜数分待った後に画像が生成されます。プロンプトと生成物がほぼ一対一の関係である限り、リアルタイム性を要求される事はほとんどありません。
文章生成用途のプロンプトも、「〜式プロンプト」などの完成された指示文を利用する場合は、画像生成と似たようなものだと思います。
しかしAI性能が上がる事で、より複雑な内容を理解できるようになっています。これからは、さらに何度もAIと細かなやり取りを行うインタラクティブな利用が一般的になると思います。練りに練った的確なプロンプト一発で指示を出すのではなく、会話や議論のように何度も間違えながら、漠然からはじまり、少しずつ具体的に詳細に正確にAIと思考を共有していく利用法です。
自律的なAIもトレンドになっています。AIとキャッチボールする事で思考を共有し、AIから提案されたものに対して修正していく使い方が一般的になるでしょう。
AIとの対話に最適な方法
現在利用されている主な指示方法は、音声によるものと、タイピングによるもの、視覚情報によるものです。日常的な簡単な指示においては、音声によるものが最も速く簡単にAIと意思疎通できますが、専門用語や数学的技術的なものに関しては、キーボード入力がより効率的でしょう。
※ それに(ときどき見かけますが)静かなオフィスや店でスマホに話かけるおっさんはあまり歓迎されません。そういう意味でも、現代はキーボード入力がAIと高速にやり取りを行う唯一の選択肢です。
会話による文字の伝達速度は一分間に300文字程度と言われています。タイピングのプロでない限り、300文字を超える事は難しいと思いますが、いわゆるタッチタイピング(ブラインドタッチ)を習得した人は、200文字〜250文字を入力できるはずです。つまりタッチタイピングできれば、限りなく会話に近い速度でAIと思考を共有できるという事になります。
そして、AIへの入出力スピードが、そのままAIを利用する際の(人間を含めた)全体の処理性能に繋がります。
AIシンクロ率が能力になる
さらに今後予想される事は、すべての人が同じ能力のAIサービスを利用する限り、AIの性能・知能が上がるほど、人の能力を大きく超える高度な知的処理が必要とされるほど、人々の間の知能差が相対的に無くなっていきます。
そして、総合能力に占める単純作業能力の割合が高くなります。AIを利用する際のタッチタイピング速度はその最たるものだと思います。AI能力に差がないので、他の人間と比較した場合、物理能力の差が総合能力差そのものになります。
※ 電卓競技会で勝敗を決めるのは、暗算力そのものではなく、高速にミスなく入出力できる能力です
似たような議論は、プログラミング開発にもありました。昔の人はシンプルなテキストエディタでプログラムを書いていましたが、現代はIDE(統合開発環境)が一般的になり、様々な開発支援を受けられるようになりました。
そして「素のプログラミング能力に長けた人」 vs 「複雑で難解なIDEを使いこなす人」のどちらが優れているかという議論が勃発しました。
もちろん現実には両方の能力が必要ですが、二択として考えた場合、多くの人は、より素の人間力に近い「プログラミングに長けた人」に軍配を上げるのではないでしょうか。
しかし、AI時代になれば議論の余地が無くなるほど逆転してしまう可能性が高いと考えています。
今は人間が認識できる(読める)レベルのコードやAPI仕様ですが、将来AI生成コードが乱立すれば、そのインターフェースは、すぐに人間の処理能力を超えてしまうでしょう。さらにAI補助で利用する事を前提としたライブラリが主流になれば、人間が読む事を想定せず、仕様書も共通コーディングスタイルも存在せず、開発者もAIが指示する通りに実装するしか無くなるはずです。
「なんでも超高速でググるようにAIに頼る」と言われれば超ダメ人間に見えてしまいますが、SF表現で言い換えると「AIと高いシンクロ率を持つ者」と言えます。きっと凄そうに聞こえます。
脳に電極を刺す時代はまだ先でしょうから、今は高速にキーボード入力の出来る者が高いシンクロ率を持つ者と言えます。
まとめ
もちろん、最新のChatGPT o1といえども、まだまだハルシネーションばかりの「おばかさん」の領域です。「おばかさん」と高いシンクロ率を持ってもろくな事はないでしょうが、AGI(Artificial General Intelligence)でなくとも、遠くない未来に多くの領域で人間の思考力を大きく超えてくるのは間違いありません。
人々が理想とするAIの形は「道具」だと思います。人間の何らかの欲求を満たすためのツールとして、補助として二次的に動いてくれる道具です。しかし現実は、ビジネス等の競争原理の中で、強制的に立場が逆転するでしょう。ブレインとしてのAIが提案する行動を実現するために、AIが苦手とする物理的な補助を必然的に人間が行う事になるからです。
そして、人の思考力でなく、タイピング入力速度などの物理的能力の優劣が、(AI性能がすべて同じなので)競争原理としての勝敗・淘汰を決めます。つまり、○オのように、AIに適合した常人を超える反射神経の持ち主が救世主になるわけです。
そんな世界はディストピアにしか思えませんが、超高速タイピングによってAIと思考を共有できた人にしか到達できない世界はあるかもしれません。
という事で、タイピングを練習してみました。