糸に魅せられて
私は2年前から自宅で機織りをしています。自分の機織り機と糸を買って布を織っています。複雑な組織を織るもの、伝統ある高機(たかばた)など織り機には種類がありますが、私が使っているのはシンプルな作りのものです。平織という組織を織ります。
私の初号機はこのくらいから、と選んだ大切な相棒です。
そして、機織りで欠かせない色とりどりの糸たち。織る作業も好きですが、私にとっては「糸」がやみつきになった理由なんです。まさか糸にここまで惹かれるとは…糸に繋がれた機織りとの出会いについて振り返って書きました。
機織りとの出会い
初めて織ったのは8年前でした。アートに関心を持ち始めてたとき、美術館に積まれた通信制大学のチラシからとりあえず資料を取り寄せて、あれよあれよと説明会まで足を運び、染織・テキスタイルを知りました。美術系に縁がなかった私が、日本画、洋画、空間デザインと数ある中でなぜ染織に惹かれたのか。うまく説明できませんが、色のせいだと思います。シンプルに色が好きで、作品の持つ意味よりも、感性一本で色の美しさに寄り添ってみたくなったのかなぁ。日本画も気になっており、最後まで悩んだ結果、全然やったことのない染織を選んでいました。運命の糸に導かれたのかもしれません。笑
初めて機織り機に触ったのは、その大学での通学講座でした。教室にはたくさんの色の糸が積まれていました。その中から好きな色を二色選んで、織る準備を整えて、指示通りの組織を織っていきます。私が選んだのは水色と臙脂色。
織りの美しさ
初心者にとっては、織るまでの準備だけでも一苦労ですが、織り始めればその苦労は必ず報われます。経糸と緯糸が異なる色なら独特の織色が表れますし、同じ色でも、糸が織重なる組織は見ていて飽きません。初めてこの布を織ったときに、少しずつ形になっていく組織の美しさに感動してしまいました。早く完成させたくてきがはやり、作業は雑になってしまいましたが。笑
二色しか使っていないのに、こんなに違って見えるのが不思議で、面白いと思いません?わかってもらいたくなります。笑 他の生徒さんはそれぞれ別の色糸を使っているので、興味津々で教室を見て回りました。違う色での見え方の違いも面白くて、見るだけじゃなく全部自分で織ってみたい衝動にかられました。。なんて欲張りな私、いや、織りの面白さにぐっと引っ張られてしまった、というわけです。
ちなみに付け加えておくと、経糸の準備は大変な作業ですが、やはり見ていて糸は綺麗です🧵✨
絹糸を染める
染織コースなので、糸や布を染める講座もありました。コットン、ウール、シルクをそれぞれ染めて、素材の性質、質感、染め方を学びます。ひときわ輝いて見えたのが、絹糸、シルクの糸でした。
染める前の白い状態のときから、すべすべの手触りに心躍っていましたが、ボルドーに染まったときの光沢ったら素晴らしい!染め終わって水洗いしているとき、陽の光のなかで、たった一本で1メートルやそこらの絹糸は圧倒的な存在感を放って見えました。だいぶ大げさな表現ですが、笑、その時はそのくらいに感じられて、美しいものを感じられて見られて本当に幸せだなと、書いてるのが恥ずかしいくらいの気持ちでした。
機織りとのお付き合い
織りを知るようになってから、布を見ると組織が気になって、色糸か欲しくなって、織ってみたい欲求とともに時間を過ごしていました。仕事の合間に吉祥寺にある織り工房に通ったりもしました。
私の人生の時間のうちで、機織りに時間を使いたいというのは、糸に惹かれてしまったときから心に決めていたと思います。それぐらいにこの経験は衝撃的でした。ただ、それをいつにするかな〜、何を織るのだ?どこで?何のために?などと迷いました。機織りの他にも好きなことをしながら、少しずつ機織りに時間をかけられる環境が整い始めて、自分の織り機を購入し、おそるおそる織り始めて現在にいたります。
機織りとともに、糸を集めるのも楽しい毎日です。今では、コットン、ウール、カシミヤ、シルク、リネンの色とりどりの糸を使っています。最初はお手頃価格のコットンばかり使っていましたが、なんでも大胆な妹がカシミヤをどばっとプレゼントしてくれて、開眼しました。織ってみて、素材の値段は織り上がりの美しさとも大いに関係があることを実感します。特に、始めたばかりの技術力でも、カシミヤを使うと、織りやすいし、出来栄えも良く見えます。シルクはやはりすべすべで(そうじゃないシルクもあります)、でも織りやすく、高級感が醸し出されてうっとりします。織ってみて実感することが、私には宝物です。色んな素材の違いを楽しんでいます。
ものづくり
何を織るのも自由!となると、自由の不自由なこと!ものづくりは、楽しいだけでは終わらない。糸を見てインスピレーションが湧いて織り進めても、なかなかうまくまとまらない日々が続きました。作品らしいものを作れるようになったのは、今年に入ってからです。応援してくれる友人から、「夕日のようなランチョマットが欲しい」というオーダーをもらったのがきっかけでした。それから夕日の写真をみたり夕焼けを見たり、試行錯誤。。夕日って、、時間帯によって全然違う上に、空は色が多すぎる!
細かいオーダーも確認しつつ、「あたりが真っ暗な中、地平線で赤く残る夕日のランチョマット」を完成させました。夕日をシルク、暗い空をコットンで織って、陽の輝きをシルクの光沢で目立たせた(つもり)の一枚です。大満足とまではいかないまでも、自分なりには精一杯!友人も喜んでくれて、こちらの方が感謝で一杯でした。作品にまとめるコツを少し掴むことができました。
これから
まだまだやってみたいことがたくさん!糸への興味もつきません。道のりは長いですが、始めた頃と比べると、見える景色が変わってきているのも確かです。うん、まだまだこれからです。
自分の満足した作品を作って、気に入ってくれる方にお届けすることを目標に、これから腕をセンスを磨いていきます。願わくば磨く過程も楽しみつつ、隣で見守ってくれる猫のジュピくんを愛でつつ、毎日少しずつ。
これを書くためにこれまでを振り返ってみて、糸の美に惹かれる自分を再確認できました。最後まで読んでいただいきありがとうございました。