FXのプライスアクションとは？種類一覧やトレード手法、勉強に役立つ本を紹介
プライスアクションとは、ローソク足の形状や数本の並び方のパターンから、次の値動きを予測する手法です。
あくまで局地的な予測となるので、プライスアクションのみを頼りに取引しても、必ずしも勝てるものではありません。
しかし他の手法と組み合わせたり根拠の1つとすることで、より正確な環境認識が出来るようになり、勝率を高めることが期待できます。
そこでこの記事では、FXに活用できるプライスアクションの基本的な知識や種類、プライスアクションを用いたトレード手法などを詳しくご紹介します。
また、独学したい人のためにおすすめの書籍も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
プライスアクションとは
プライスアクションとは、英語で書くと「Price（価格） Action（動き）」であり、直訳すると「価格の動き」となります。
その名の通り値動きのことで、チャートによく出現するパターンを元にして整理・命名したものです。
英語では一般的に「candlestick patterns」と表記されます。
英文表記でも分かるように、ローソク足の形状を元にして「こういう形のローソク足が出たら、次はこう動くよ」という値動き予想です。
つまりローソク足の中には投資家全体の心理が反映されていると考え、その心理を読んで相場の状況を分析するというアプローチとなります。
分かりやすくするなら「ローソク足を利用した値動き予測」とも言えるでしょう。
インジケーターやチャートパターンとの違い
プライスアクションはインジケーターにも似ている面がありますが、インジケーターは値動きの数値を計算式に当てはめ、再び数値として算出するものです。
それに対しプライスアクションは、ローソク足の形状や並び方を元に分析する手法であり、むしろチャートパターンやライン分析などの方が近いでしょう。
チャートパターンとは三尊天井やラウンドトップ、あるいはダブルボトムやトリプルボトムなど、一定期間の値動きの形状を元に相場分析を行う手法です。
一方、プライスアクションは最小単位である1本のローソク足からも、次の値動きを読み取ることができます。
その分、短期的な値動きへの対応に優れており、判断基準が頻繁に訪れるので他の手法と組み合わせやすい手法です。
酒田五法との違い
プライスアクションと非常に似ている手法として、「酒田五法」と呼ばれるものがあります。
実際、海外で「candlestick patterns」として紹介されている手法は、酒田五法をそのまま紹介している場合も少なくありません。
酒田五法は日本生まれの相場分析方法です。
江戸時代の米相場を舞台に考案され、以後も検証が続き体系化されてきた長い歴史があります。
そもそもローソク足自体が初めて登場したのが酒田五法ですから、プライスアクションの先祖とも言えるでしょう。
しかしFXでは、酒田五法よりプライスアクションを採用した方が良いでしょう。
下記のような理由があるからです。
■使っている人の人数が違う
1つは、先ほども触れましたが、分析手法は多くの人が使うほど有効性が高まっていきます。
では、酒田五法とプライスアクションのどちらが優勢かと言えば、欧米でも広く使われているプライスアクションとなるでしょう。
もともとプライスアクションは酒田五法をお手本にしており、酒田五法での用語がそのまま使われたりもしています。
しかし残念ながら、世界では酒田五法は殆ど知られていないのが現実です。
国境を超えて24時間取引されるFXでは、どうしても少数派になってしまいます。
■FXへの最適化
もう1つは、米相場から発案された酒田五法をFXで使うのは、どうしても限界性があることです。
現代に合わせて新しい解釈も出てはいますが、やはり先物や株式の取引に最適化された分析方法であることには変わりがありません。
例えば「窓」と呼ばれる、隣接するローソク足の間にできる乖離を重視することも多いのですが、FXではそうした状況は殆ど発生しないからです。
また酒田五法はパターンの定義がやや複雑であり、プライスアクションの方がシンプルに値動きで判断できるようになっています。
プライスアクションで重要なローソク足とは
プライスアクションを理解する上で、ローソク足に関する知識は欠かせません。
普段チャートに表示されているので、見たことがないという人は殆どいないでしょうが、ここであらためて基本的な部分を確認しておきましょう。
ローソク足の基本
プライスアクションでは、ローソク足から下記のような情報を読み取ります。
始値、高値、安値、終値
実体の大きさ
上ヒゲ、下ヒゲ
陽線か陰線か
これらのローソク足の並び方
まずは1本のローソク足を分解してみましょう。
下図は陽線の場合です。
ローソク足は、1分・15分・4時間・1日など、特定の時間で価格を区切って1本のバーを生成します。
個々のバーを構成しているのは、始値・高値・安値・終値という4つの数値です。
始値：
ローソク足が始まった時（ローソク足が形成された時）の価格高値：
ローソク足の期間内に付けた最も高い価格安値：
ローソク足の期間内に付けた最も安い価格終値：
ローソク足が終わった時（ローソク足が閉じる時）の価格
そして、これらを元に、実体と上ヒゲ・下ヒゲが生じます。
実体：
始値と終値の間の部分で、長いほど特定の方向への売りや買いの勢いが強い上ヒゲ：
実体の上限と高値の間に伸びた細い線で、買いの勢いが強かったが、売りの抵抗で押し戻された分下ヒゲ：
実体の下限と安値の間に伸びた細い線で、売りの勢いが強かったが買いの抵抗で押し戻された分
また最終的にどの方向で価格が決着したかも重要です。
陽線：
終値が始値より高い価格となった場合で、上昇傾向が起きていることを意味する陰線：
終値が始値より低い価格となった場合で、下落傾向が起きていることを意味する
ローソク足が優れている理由
ローソク足の画期的なところは、実体とヒゲが明確に分かれ、実体も色分けできることでしょう。
これにより、その時間帯でどのような攻防があったのかを視覚化できるからです。
たとえば上昇傾向を示す陽線で、上ヒゲが短く、下ヒゲが長かった場合を見てみましょう。
これは価格が一旦は大きく下がったものの、そこで勢いが削がれて大きく買い戻され、高値を付けて最終的にも当初の価格を超えた状態を示しています。
勢いが回復しているので、次のローソク足も陽線で終わったら、そのまま上昇していく可能性が高いと読めるでしょう。
しかし同じ陽線でも、上ヒゲが長くて下ヒゲが短い場合は、見方が変わってきます。
一旦は伸びた価格の勢いが大きく削がれ、当初の価格の方へ戻ってきてしまっているのです。
そのまま下落傾向が続き、次のローソク足が陰線になったら、そのまま下落していくことが考えられます。
そして陰線の場合も陽線と同様、ヒゲの出方や長さによって、その時間帯での値動きが分かります。
このことから、プライスアクションでは1本のローソク足からも次の値動きが予測でき、さらに並んだ複数のローソク足を見ることで精度をさらに高められるのです。
ローソク足によるプライスアクションが有効な理由
ローソク足の構成には投資家の心理が凝縮されているので、分析すれば取引に活かせることは理解できたと思います。
しかしただそれだけでは、十分に有効な手法とはなりません。
ローソク足には下記のような特徴があることが重要です。
■ローソク足は世界共通の表示方法
どんなにローソク足が優秀でも、使っている人がいなければ有効性は高まりません。
テクニカル分析全般に言えることですが、多くのトレーダーが同じ指標を見ているからこそ、特定の値動きが生じて有効性が発揮されます。
代表的な移動平均線にしても、設定数値が異なれば違ったラインを描いてしまいます。
それに対しローソク足は、全世界で誰が見ても同じ形状で描画されるのが特徴です。
また移動平均線を除けば、誰もが使っているインジケーターも皆無でしょう。
しかしローソク足は、当たり前のようにチャートに最初から表示されています。
海外の場合はヒゲのないバーチャートも使われますが、小さな横棒で「始値・高値・安値・終値」という4つの数値が表示されるという意味では変わりません。
■サインとして最速
殆どのインジケーターは値動きを元に計算をしてチャートに結果を表示するため、どうしてもワンテンポ、実際の値動きからズレてしまうことが多くなります。
特に集計する期間が長くなるほど、その時間差は大きくなってしまうでしょう。
しかしローソク足は最短1本で相場環境を判断できるため、圧倒的に反応性が良くなります。
取引する側にとっては、売買に役立つサインが早く出れば出るほど、成功した時の利幅が期待できるので有り難いものです。
他の手法で大きな流れを掴みつつ、最終的な決定をローソク足で行えば、正確で素早いエントリーができるでしょう。
プライスアクションの種類一覧
では実際に、プライスアクションの形を見ていきましょう。
プライスアクションには多くのパターンが存在しますが、大きく分けると「トレンドの発生や継続」「トレンドの転換」「相場の停滞」という3つの種類があります。
また見方として、1本のローソク足で見るものと、数本の並びを見るものの2種類があります。
1本で見るのはピンバーや同時線などで、これらは見つけやすく、理解するのも簡単でしょう。
数本で見るのはリバーサルやスラストなどで、見極めには熟練さも求められます。
いずれにしても数が多いので、全てを一気に覚えるのは大変です。
ここでは代表的なプライスアクションの形や意味について説明しますが、まずは重要なものから使うようにしていくと良いでしょう。
スラストアップ・スラストダウン
リバーサルハイ・リバーサルロー
アウトサイドバー・インサイドバー
ピンバー
ランウェイアップ・ランウェイダウン
そのほかのプライスアクション
トレンドの発生や継続を示す「スラストアップ・スラストダウン」
「スラスト（thust）」は、「突き上げる」「グイグイ押し進む」という意味で、その名の通り、価格に勢いが出ている状態です。
値動きの方向性によって、上昇トレンドで見られるスラストアップと、下降トレンドで見られるスラストダウンの2つがあります。
いずれも前のローソク足の高値や安値を超える形でローソク足が閉じ、上昇や下降の勢いが強いことを示すプライスアクションです。
■スラストアップ
スラストアップは、その時間のローソク足の終値が、1つ前のローソク足の高値を更新している状態です。
つまり実体部分が重ならないほど、価格の伸びに勢いがあることを示しています。
上昇トレンドの中ではスラストアップが頻繁に出現し、特に何本も連続するようなら、非常に勢いが強まっているということです。
スラストアップが出ているかどうかで、トレンドの強さを簡単に確認できるメリットがあります。
■スラストダウン
スラストアップの反対で、下降トレンドで出現するのがスラストダウンです。
スラストダウンでは、その時間のローソク足の終値が、1つ前のローソク足の安値を更新しています。
それだけ下落傾向が強いことを意味しており、連続して出るようなら、特に強い売りの圧力が発生していると読めるでしょう。
■スラストの特徴
スラストアップやスラストダウンが出現するトレンド状態では、価格の方向性が強くなっています。
高くても買いたい、安くても売りたい、というトレーダーが多いため価格の上下動も大きくありません。
そのためローソク足のヒゲはあまり目立たない傾向があります。
実際、ヒゲが短いほど、相場に勢いがあると判断できるでしょう。
また陽線や陰線が連続することが多いのですが、時おり反対方向のローソク足が混じることもあります。
その場合、トレンドの中での押し目買いや戻り売りの機会にもなるでしょう。
トレンドの反転を示す「リバーサルハイ・リバーサルロー」
スラストと並んでよく出現し、優先的に覚えておきたいプライスアクションが「リバーサル」です。
リバーサルもスラストと同じく1つ前のローソク足との比較で決まり、値動きの方向性によって、同じように「リバーサルハイ」「リバーサルロー」という2つの種類があります。
異なるのは、スラストがトレンド継続を示すのに対し、リバーサルは反転を示すということです。
そのため相場の天井圏や底値圏で出現しやすく、チャートの中で目立つので見つけやすい利点があります。
■リバーサルハイ
リバーサルハイは、高値圏で出現します。
ローソク足の高値が、1つ前のローソク足の高値を更新したものの、終値が前のローソク足の始値（実体）を下回ってしまったパターンです。
つまり途中までは上昇傾向を引き継いだものの、後半になって勢いが失われ、下に垂れてしまったことになります。
当然、前の足の終値も割り込んでいるので、ローソク足としても大きな陰線になっています。
同じリバーサルハイでも、上図のように、前のローソク足が陰線になるケースもあります。
いずれの場合も、天井を付けてから大きな振り幅で下落していく形です。
このようなローソク足が出現したら、トレンド転換の可能性を考えなくてはなりません。
特に失速がひどく、大きな陰線になるほど、プライスアクションとしての信頼性は高まります。
また安値については、実体だけでなく、前のローソク足の安値も切り下げているほど強力です。
下図のように、安値が切り下がっていない場合、弱めのサインとなります。
ただ特に成立条件にはなっていないので、この場合でもリバーサルハイであることに変わりはありません。
■リバーサルロー（強気リバーサル）
リバーサルローはリバーサルハイの逆パターンで、下降相場での転換サインとなります。
1つ前のローソク足の安値を更新して大底を付けたものの、そこから価格が反転し、直前のローソク足の実体を上回る終値で決着する形です。
リバーサルローが出ると上昇機運が高まったと見なされ、実体部分が大きく伸びるほど、信頼性も上がります。
下図は、陽線が続くパターンのリバーサルローです。
また、実体に加えて前のローソク足の高値も更新している場合、強い上昇傾向と判断できます。
高値を超えていない場合は、弱めのサインです。
■リバーサルの特徴や別称
リバーサルハイにしてもローにしても、多くの場合で前の時間のローソク足より実体が長くなり、始値と終値を包む形となります。
これは酒田五法などでの日本語では「包み足」とも呼ばれるものです。
そしてこの包み足・リバーサルでは、比較し合う2本のローソク足を合成すると、コマ足のような形状＝ピンバーとなるのが特徴です。
このことから「2バーリバーサル（Two-Bar Reversal）」「合成のピンバー」と呼ばれることもあります。
また海外では、リバーサルを総称して「Key Reversal」と呼ぶのが一般的です。
またリバーサルハイは、ここから相場が下がって行く弱気のサインという意味で「弱気リバーサル（Bearish Reversal）」、リバーサルローは相場が上がって行く強気のサインという意味で「強気リバーサル（Bullish Reversal）」と呼ばれることもあります。
値動きの停滞を示す「アウトサイドバー・インサイドバー」
トレンドの持続や反転ではなく、停滞のサインとなるプライスアクションが、インサイドバーやアウトサイドバーです。
要はレンジ状態を告げるということですが、ここからブレイクアウトが生じると、トレンドの起点でエントリーできるというメリットがあります。
そのため、スラストやリバーサルに負けず劣らず、見逃せないプライスアクションと言えるでしょう。
スラストやリバーサルが2本のローソク足で見るのに対し、インサイドバーやアウトサイドバーでは、複数のローソク足で判断します。
簡単に言えば、次第に値幅が広がっていくのがアウトサイドバー、逆に狭くなっていくのがインサイドバーです。
■インサイドバー
単に「インサイド」と呼ばれることもあります。
また日本語で「はらみ足」や「はらみ線」として紹介されることもありますが、明確な定義がないので英語でそのまま呼んだ方が確実でしょう。
インサイドバーは2本から数本のローソク足の並びで判断されます。
現在のローソク足のヒゲを含んだ全体が、1つ前のローソク足の上下全体にすっぽりと入った状態です。
ここで元となる長いローソク足のことを「母線」と呼びます。
インサイドバーは母線を起点した最小2本で完成しますが、その後も連続して並ぶほど、強いプライスアクションになります。
インサイドバーの期間は高値も安値も更新されず、相場として上下の方向感がありません。
その反面、値動き自体は小さく収まるので、いずれかの方向にブレイクしていくエネルギーが貯め込れるのです。
特に、上下の値動きが徐々に狭くなっていく場合はその傾向が高まるでしょう。
ブレイクの際に基準となるのも、母線の高値や安値です。
いずれかをブレイクするローソク足が出現したら、そこからトレンドが生じる可能性が出てきます。
なお、このような相場の中では、次に説明するアウトサイドバーとインサイドバーが順番に出てくることもあります。
■アウトサイドバー
アウトサイドバーはインサイドバーの反対です。
過去のローソク足の上下が、いずれも現在のローソク足上下の値幅の中に収まります。
つまり次第に値動きが活発になっているのですが、まだ特定の方向性はありません。
ここでもインサイドバー同様、母線の高値や安値に注目しましょう。
例えば高値は更新したが安値は更新できなかったローソク足が出現したら、更新できた方に伸びて行く可能性が高いのです。
さらに実体が母線の上下を飛び出た場合は、非常に強いサインとなります。
アウトサイドバーは、天井圏や底値圏で出現し、リバーサルなど他のプライスアクションと組み合わさることもよくあります。
また値動きが激しい中でブレイクするので、インサイドバーより大きな伸びを見せることが多いのが特徴です。
トレンド転換や支持線・抵抗線を示す「ピンバー」
他のローソク足との比較を必要とせず、単独でサインとなるのが「ピンバー」です。
■由来はピノキオ
ピンバーは非常に短いローソク足の実体に、長いヒゲが片方に伸びた形が特徴です。
言葉の由来は長い鼻を持ったピノキオ（pinoccio）で、「ピノキオのようなバー」を略した名称となっています。
ヒゲがどこまで長いとピンバーになるのか明確な定義はありませんが、実体1に対して3以上が目安です。
また、一方向に伸びていることが条件になります。
この形は、特定の方向に非常に大きく値を伸ばしたが、抵抗に遭って元の位置付近まで押し戻されてしまったことを示します。
それだけ勢いが強いので、そのまま反転してトレンドが転換していく可能性が高いのです。
ヒゲの長さが長いほどプライスアクションとして信頼でき、その機能上、天井圏や大底圏で出現するほど有効性が高まります。
高値を更新したが長い上ヒゲが付いていたり、安値を更新したローソク足に長い下ヒゲがあったりしたら、トレンド転換を想定しましょう。
逆にトレンドやレンジの中盤で出現した場合は、単なる一時的な停滞かもしれないので、過大評価は禁物です。
ピンバーは1本でも機能を発揮しますが、同じラインで複数のピンバーが並んだ場合も見逃せません。
伸びたヒゲの先に、強力な支持線や抵抗線が存在していると思われるからです。
このラインをいつまでも突破できない場合、反対方向に価格が折り返していく可能性が高まります。
■ピンバーに似たプライスアクションや別称
海外ではヒゲが上に伸びたピンバーを「シューティング・スター」、下に伸びたピンバーを「ハンマー」とも呼んでいます。
どちらも見たままの表現ですが、ピンバーだけでは上下どちらにヒゲが伸びているか分からないのも確かです。
またピンバーとよく似たものに、「スパイクハイ」や「スパイクロー」があります。
ピンバーは実体部分が殆どないのに対し、これらはある程度の実体を持っていることが違いです。
そして出現場所が、トレンドの終点に絞られることも特徴となります。
ただローソク足の形状の区別には、明確な定義があるわけではありません。
実際、海外では両者を特に区別しないで使っているケースも見られます。
トレンドの終点で長いヒゲが出たら注意、と覚えておけば良いでしょう。
実体が全くないローソク足の場合も同様です。
ヒゲが片方に大きく伸びていれば「実体のないピンバー」として機能します。
ただ、そうした特徴がなければ一時的な停滞であり、重要なプライスアクションではありません。
なお、これらは日本語で同時線や十字線と言いますが、海外でも「Doji」と呼ばれます。
トレンドの強さを測る「ランウェイアップ・ランウェイダウン」
「ランウェイ（runway）」は「滑走路」という意味で、スラスト同様、トレンドの継続を示すプライスアクションです。
ランウェイには、上昇トレンドで出現するランウェイアップと、下降トレンドで出現するランウェイダウンがあります。
いずれも複数のローソク足で判断しますが、基準となるローソク足の前後を使うのが特徴です。
それぞれ一定の価格帯に収まっていた相場の中で、大きなローソク足が出現し、新しい価格帯へと移っていくという流れになります。
■ランウェイアップ
ランウェイアップでは、ひとまとまりの価格が切り上がって行くことで、トレンドの方向性を示します。
まず必要なのは、基準となるローソク足（母線）を見つけ、その前後の値動きを見ることです。
そして下記のような条件が満たされると、ランウェイアップが成立します。
母線の高値が、過去N本のローソク足の全ての高値を超えている
母線の安値が、そこからN本先のローソク足の全ての安値を超えている
過去と未来のローソク足の本数は同じ数で比較します。
例えば「N = 5」であれば、ランウェイアップに関わるローソク足は全部で11本です。
日足であれば1週間分 = 5日分を見るのが効果的です。
それ以外の時間足の場合は特に明確な数値はありませんが、本数が多すぎると出現機会も減ってしまうので、やはり数本程度が妥当でしょう。
ランウェイアップは、一定の高値水準に収まっていた相場が、母線を境に1段切り上がった状態です。
その後の期間も、下値が強く支えられていることで上昇傾向を示します。
ランウェイアップの後半では、スラストアップが出現することも多く、その場合は上昇傾向がさらに強まるでしょう。
基本的に相場はジグザクに上下しますが、階段を上がるように水平を切り上げながら上昇していくケースも見られます。
言ってみれば、低地にある飛行場から飛行機が離陸し、高地にある次の飛行場の滑走路に着陸するようなものです。
そうした様子から「滑走路」と名付けられたのでしょう。
■ランウェイダウン
価格帯の基準が1段せり上がるランウェイアップに対し、切り下がるのがランウェイダウンです。
先ほどの喩えで言えば、山の上にある飛行場を離陸した飛行機が、海の近くの飛行場に着陸するようなものと言えるでしょう。
下記のような条件が満たされると、ランウェイダウンが成立します。
母線の安値が、過去N本のローソク足の全ての安値より下にある
母線の高値は、そこからN本先のローソク足の全ての高値を上回っている
母線を境に価格帯の水準は1段下がり、高値の頭が押さえつけられた状態です。
こうなると、過去の水準に戻る望みは低くなります。
またランウェイダウンの後半では、スラストダウンが出現することが多いのも特徴です。
その場合、さらに下降していく可能性が高まるでしょう。
その他のプライスアクション
以上が、プライスアクションの中でも特に重要とされるものです。
ここでは、それ以外のプライスアクションについて紹介します。
初心者の場合、いきなり「あれもこれも」と手を広げるのは大変なので、まずは基本的なものから使いこなせるようになりましょう。
フェイクセットアップ
フォールスブレイクアウト
■フェイクセットアップ
通常、 重要なラインなどがブレイクされると、そこから価格が伸びると判断されます。
しかし、そうしたブレイクが不発に終わることも珍しくありません。
その場合、反対側に価格が動いて別のラインを突破してしまうこともあります。
そのような時に発生するのがフェイクセットアップです。
フェイクセットアップでは、ブレイクを試みたローソク足が、ラインの外側に長いヒゲを伸ばして終わります。
その後、相場は逆方向に動いて行き、やがてローソク足が反対側のラインに到達すると、そこでブレイクされる可能性が高いのです。
特にブレイクを試みたローソク足が外向きのピンバーになっていた場合、プライスアクションの合わせ技で失敗確率が高まります。
■フォールスブレイクアウト
英語では「false breakout」と表記し、「間違ったブレイクアウト」というような意味を持つプライスアクションです。
フォールスブレイクアウトも、ブレイク失敗の際に出現し、反対方向への値動きを示唆します。
その意味ではフォールスブレイクアウトとも似ているプライスアクションです。
違いはフェイクセットアップがレンジ相場で出現するのに対し、フォールスブレイクアウトはトレンド相場で出現するとされています。
そのため、出現しやすいのは天井圏や底値圏です。
また、勢いのついたトレンドを転換させるため、ローソク足の形状はピンバーになることが重視されます。
プライスアクションを用いたトレード手法
では実際の取引でプライスアクションを活用する手法について、お伝えします。
チャートでの実例
まずプライスアクションがどのようにチャートで出ているかを見てみましょう。
最短1本でサインとなるプライスアクションは、非常に頻繁にチャートで見ることができます。
例えば、値動きの先端でのピンバー（上図の右下）は目に付きやすいでしょう。
同じくインサイドバー（左上）などでは、母線の高値や安値をブレイクすると、そこから価格が動くのが特徴です。
また2本で構成されるリバーサルハイやリバーサルローは、より多くの本数で構成されるインサイドバーやアウトサイドバーと重なることもあります。
ランウェイアップ・ランウェイダウンも有効性の高いパターンです。
とくに、母線のセンターを基準に明確に上下に別れていると、確度が高まります。
ライントレードがおすすめ！
最も親和性が高く、セットで使うと良いのがサポートラインやレジスタンスラインなどのラインを活用することです。
サポートラインは値動きを下値で支えるラインで、そこから下には落ちないだろうという予測が立ちます。
レジスタンスラインは上値に対する抵抗し、そこから上に行くのを阻止する線です。
これらのラインを確認すると将来の値動きがかなり予測できるので、プライスアクションと組み合わせると大きな効果を発揮します。
他にも、過去の重要な価格の反転と同じ水準で引いた水平線や、トレンド相場での値動きを使ったトレンドラインも有効性の高いラインです。
下図は、先ほどのチャートにトレンドラインを引いたものです。
それぞれラインブレイクによる値動きの転換と、プライスアクションによるサインが一致していることが分かるでしょう。
インジケーターも組み合わせよう
短期的な値動きに強いプライスアクションと、大局的な環境把握に強みのあるインジケーターも相性の良い取り合わせです。
例えばプライスアクションが「買い」を示している時、インジケーターも同じように「買い」の状態にあれば、信頼性は大きく高まるでしょう。
まず、プライスアクションで重要なサインが出た時に、インジケーターで根拠を補強する使い方があります。
逆に、インジケーターで売買サインが出た時に、プライスアクションでエントリーの精度を高める方法もあるでしょう。
上図は、先ほどのチャートにMACDを表示させたものです。
デッドクロスなどMACDが示すサインと、プライスアクションが対応しているのが分かります。
ただやはり、いち早く値動きの可能性を察知しているのは、プライスアクションの方です。
そのためプライスアクションを中心に予測を組み立て、根拠を確実にするためにインジケーターを使うという方法もあるでしょう。
プライスアクションを極めれば勝てるのか？
目の前の価格の動きを敏感に分析できるプライスアクションですから、短期的な取引のみに絞れば、一定の効果を発揮することは期待できるでしょう。
しかし、プライスアクションのみで全ての取引を行うのは無理があります。
プライスアクションを使っても勝てない場合、下記のような理由があると考えられます。
長期的なトレンドを踏まえていない
プライスアクションだけで判断している
だましに遭う
プライスアクションの理解が足りていない
長期的なトレンドを踏まえていない
相場には大きな流れがあるため、そうした情報も把握しないと、正しい判断はできません。
目の前の価格は上昇傾向にあっても、より長期的なトレンドが下落傾向にあったら、いずれ価格は逆方向に切り替わってしまう可能性が高まります。
プライスアクションだけで判断している
どのような相場にも言えることですが、エントリーや決済を決定する判断基準は多いほど正確性が向上します。
プライスアクションも有効な手法ですが、実際に取引を行う場合は、それ以外の根拠もあった方が良いでしょう。
おすすめしたいのは、やはりチャートパターンやインジケーターの指標などを含めて分析することです。
また、サポートラインやレジスタンスラインなども大きな根拠となるので、総合的なチャート分析は欠かせません。
だましに遭う
プライスアクションはそのパターンによって近い未来の値動きを予想しますが、その予想は100%当たるわけではありません。
あくまで「そうなる確率が高い」方向を示すだけです。
そのため思った方向と逆に動いてしまう「だまし」に遭うことも避けられません。
「だまし」の発生は予測できないため、エントリーする時は損切りラインも想定し、決済予約をしておくことを忘れないようにしましょう。
プライスアクションの理解が足りていない
プライスアクションはそれほど難易度の高い手法ではありませんが、インジケーターのように数値化されてチャートに自動表示される類のものではありません。
あくまで自分の目で見て、どのような状況になっているのかを把握する必要があります。
そのためプライスアクション自体を正確に識別する能力がないと、良い結果を残すこともできないでしょう。
プライスアクションの勉強におすすめの本
最後に、プライスアクションを学べる書籍をいくつかご紹介いたします。
パターンを覚えるだけで勝率7割超! FXチャートの読み方
サブタイトルに「欧米投資家が好んで使うプライスアクションの教科書」とあるように、値動きのパターンから売買方法まで、プライスアクションについて詳しく解説されている書籍です。
図解も多く、初心者も読みやすくなっています。
FX 5分足スキャルピング プライスアクションの基本と原則
こちらもプライスアクションをメインに据えた書籍です。
タイトルに「5分足スキャルピング」とありますが、それ以外の時間足やデイトレードでも問題なく使えます。
値動きの原則について特に詳しく書かれているので、エントリーや決済の判断に役立つでしょう。
FXスキャルピング ―ティックチャートを駆使したプライスアクショントレード入門
入門というタイトルとは裏腹に、内容は上級者もうならせるハイレベルな書籍です。
1本のローソク足を詳しく分析し、それに対する深い考察が示されています。
また、トレード方法としてスキャルビングが用いられているので、スキャルビングの手法を学びたい人にもおすすめです。
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