売れやすいアートの価格帯、アート作品の値段の付け方
アートバーゼルのレポートによると、
2019年のアート市場はトータルで6兆4000億円ほどが取引されました。
取引されたアート作品の点数はおよそ4050万点です。
取引額をアート点数で割ると、
平均額は15万8000円になります。
アート作品1点の平均価格が15万8000円。
この数字を見て、高いと思うでしょうか?
それとも安いと思うでしょうか?
アート作品の価格という面から、
今回は売れやすい価格帯について考えていきます。
忙しい人向けのまとめ
作品の値決めは個展を開くギャラリーと相談して決める。
根拠無しの何となくの値決めでも最初は大丈夫。
オークションに作品が出品されるようになると値段が上がっていくようになる。
値段が上がるときも値決めはギャラリーと相談する。
一番売れている作品の価格帯は10万円以下。
コレクターもこの価格帯を購入するときに意識している。
コレクターの61%はInstagramで作品や作家を物色している。
23歳~38歳の人が一番アート作品を購入する。
何となくでアート作品の値段をつける
これまでの大体の記事で触れていますが、私の妻は画家をしています。
ギャラリーで個展を開いて、アート作品を販売しています。
普段は会社員として働いているので、二足の草鞋です。
現在、アート作品の値段は大きさで決めています。
何号サイズであれば、何万円みたいな感じです。
この値段の付け方は、最初にお付き合いを始めた、
画廊のオーナーの助言をもとに決めました。
まだ、美大を卒業したてであれば、
大体の相場はこのぐらいの金額で。
後々、売れて人気が出てきたら、値上げを考えましょうね。
こんな感じのアドバイスを受けて値段を決めていきます。
知り合いの作家に話を聞いても、同じようなケースが多かったです。
一番大きい作品でも10万円程度。
1万~5万円の作品が主力。
最初は何となくで値段をつけて構いません。
個展を開くと色んな方からアドバイスをもらったりします。
深い部分まで踏み込んで、値決めの方法についてアドバイスをもらうこともあります。真剣なアドバイスです。
今の価格だと安すぎるんじゃないか。
今の価格だと少し高いんじゃないか。
人によって、視点が異なるので、
様々な角度からアドバイスをもらいますが、
真に受ける必要はありません。
その時はアドバイスをくれても、今後の活動まで面倒を見てもらえるわけではありません。最終的には自己責任です。
既にギャラリーのオーナーと協議したうえで値段を決めたのであれば、
堂々とのその値段で売り出してください。但し、ギャラリーのオーナーがおおっぴらに値下げを始めた場合には文句を言ってください。
アート作品を売り出す頃に、作品を買ってくれるお客さんは、
属性が3つに分けられると思います。
どれか1つだけの属性を持っているわけではなく、複数に属性を持っている場合もあります。
1.作家や作品を好きになって購入する人
2.店舗やオフィスに品格を出すために手頃な値段の作品が欲しい人
3.アートコレクター
1と3の方は熱心に作品を買ってくれる人がいるかもしれません。
一番大事にするべきお客さんです。
長く関係性を築く上で、大事なことがあります。
それは、アート作品の価値が将来上がるようにすることです。
1年後はそこまで価値が上がっていないかもしれませんが、
10年後には価値が明らかに上がっていることを実感できる。
そういう姿勢を買い手に感じ取ってもらえる。
この点に努めてください。
取り扱い量の多い価格帯の作品が売れやすい
アート作品1点の平均価格が15万8000円。
しかし、この金額のアート作品が最も取引されているわけではありません。
アート作品の中央値を紹介します。
中央値というのは、アート作品が100個取引されたときに値段順に並べていきます。50番目の作品の金額がいくらなのか。
それがアート作品の中央値です。
99個の作品が1万円で売れて、
1個の作品が1億円で売れる。
この時、平均値は100万円です。
統計的にばらつきが多いケースでは、
平均値を扱うと勘違いを起こしやすいです。
アートバーゼルのレポートでは中央値を取り扱っていないので、
アートプライスのレポートから参照します。
2019年上半期の中央値は9万7000円です。
半数のアート作品の半数は10万円以下で取引されているということです。
アートコレクター入門者向けの書籍では、
10万円以下の作品を購入する。
この金額で高いと思うなら
2~3万円から始めることを薦める記載があります。
10万円以下の作品が売れやすいというのは感覚的にも
妥当な線じゃないかと感じています。
またまた、アートプライスからの引用ですが、
50万円以下の作品が80%の割合を占め、
10万円以下の作品が50%の割合です。
アート作品の価値、値段はセカンダリーマーケットで決まる
ギャラリーで販売する作品の値段はマーケットではあまり追跡されていません。ギャラリはープライマリーマーケットと呼ばれます。
それに対してセカンダリーマーケットで販売される作品は記録されていることが多いです。セカンダリーとはオークションのことです。
有名な所だと、サザビーズやクリスティーズがあります。
日本にもアートオークションが結構あります。
SBIアートオークション
Shinwa Auction
毎日オークション
などなど。
その他にも業界のセリも日常的に存在しています。
ギャラリーから購入した商品を翌日にセリに出品するふろしき画商というのも存在しています。以前にこちらの記事で少し取り扱いました。
オークションに出品されたアート作品は作家名や作品名、歴代の所有者などが追跡できるようになります。この履歴があることで、この作家の作品はこのくらいの金額で取り扱われるのか。
と市場価格が形成されるようになります。
じゃあ、セカンダリーに自身の作品を持ち込めばいいんじゃないか。
と思うかもしれませんが実はそんなに簡単なルートではありません。
まず、日本国内のオークションでは、
落札されるか分からない作品の出品を断ります。
オークションの主催者は、誰もが落札したくなる商品を扱うことに努めています。オークションの質を高めるためです。そのため、日本国内のオークションでは既に有名な作家の作品のみ扱う傾向が強いです。
アートフェアで毎回完売になるような若手の作家だと、
たまに出品されているのを目にします。
では、海外のオークションも難しい側面があります。
作家の作品をオークションに持ち込む場合、
落札されなかったら、二度とその作家の作品を取り扱わない。
そういうルールを設けているオークションハウスもあります。
自然と自信の作品がセカンダリーマーケットに流通するようになる。
流通させるためには、
個展がメディアに取り上げられたり、
作品が完売できるくらいお客さんを集められるようになったり、
アパレルショップやミュージシャンとコラボ作品を作る。
こういった社会への影響力を積み上げていく必要があります。
一緒に協力していけるギャラリーであれば、
取り扱い作家の作品がセカンダリーマーケットでいくらで取引されるのかをチェックしています。
セカンダリーでの値動きを見て、
価格を改定しましょうという話になります。
ギャラリーと相談して価格を決める。
色んなギャラリーで展示をするよりも、
一緒にやっていくギャラリーを1つ決めて、
他の場所でも展示できるチャンスを探していく。
将来的に作家として売れるかどうかは、
信頼できるギャラリーと一緒に仕事をできるかにかかっているとも言えます。一緒に活動するギャラリーを選ぶというのはそのくらい重要なことです。
アート作品を精力的に購入する世代
アート作品を最も購入しているのは、
23~38歳の世代です。
コレクターの半数がこの世代に入ります。
その次に多いのが、
39~54歳の世代です。
3割ほどを占めています。
もう少し、細かく世代別で分かれているレポートがないか探してみましたが見つかりませんでした。アートバーゼルのレポートから引用しています。
現役で働いている人がアート作品を買っていて、
学生や引退した世代はあまり購入しない。
当然といえば当然のことかもしれません。
若い世代がアート作品を一番買っているというのは意外な結果だったので、
この点はこれから活躍したい若手作家にとっていい環境です。
アートコレクターの61%はInstagramを使って海外アーティストの作品を下調べしています。その内の半数ほどが、頻繁にInstagramを使用していると回答しています。
アジア圏での活躍を考えるならWeChatが推奨されています。中国ではInstagramを使うのが難しいためです。
昨今はオンラインでのアート販売が増えているとニュースで取り上げられていますが、オンラインへの風向きはそれほど良好ではありません。
オンラインでの購入のほとんどが、
既に購入したことがあるギャラリーや作家の作品です。
一見でいきなりオンライン購入はしていないということです。
今までに付き合いがない作家の作品をオンラインでいきなり購入することは、アートコレクターでも心理的障壁が大きいことが伺えます。
色はアート作品の売れやすさに関係するのか
通説では関係すると言われていますが、
実際にアートフェアを訪れて、
売れ行きを聞いてみると、
そこまで関係がなさそうです。
色によって心理的な作用があることは分かっていますが、
買い手の購入の動機は誰の作品なのか。
この影響が強いです。
赤い作品は売れやすいと言われています。
記憶に残りやすい色だからです。
印象に残すために意図的に赤を作品に取り入れている人も多いと思います。
逆に緑や茶色を使った作品は売れにくいと言われています。
緑色を好む人は警戒心が強い傾向にあることが分かっています。
だから、緑色の絵は購入されづらい。
茶色は節約を想起させる色です。
この色を見ると、ケチになるとも言えます。
こんな風に理由付けすることもできますが、
人気作家は緑一色の絵でも普通に売れてました。
逆に、赤い絵が最後まで売れ残っている作家もいました。
今年はあまりアートフェアに参加できなかったので、
調査したのはArt TNZの1回限りです。
心配だったら色味を意識する。
というレベルでいいのかなと思います。
作品の色を気にするよりも、
展示に出席するときに身に付ける色を気にした方が効果が得られそうです。
ポイントは黄色ものを何かしら身に付ける。
そうすると相手から話しかけられる確率が上がります。
会話を通じて、作家の人間性を知ってもらい購入につながる。
というのは現実的に起こり得ますので利用してみる価値はあります。