人類皆インフルエンサー?
トライバルメディアハウスの20年度新卒社員になりました。
azです。
関西出身で、文章すら関西弁で書かないと本音を言った気がしない人間です。
さて、このエントリーでは私の素朴な疑問
「インフルエンサーとは誰のことなのか?」
「人類は皆、常に影響し合ってるのだからインフルエンサーになれるのではないか?」
について書いていきます。
「世の中インフルエンサーインフルエンサー言うてるけど、それって結局誰やねん」
ここ数年で世でもてはやされているインフルエンサー。
マーケターの mの字も書き出していない 、入社前の私でも聞いたことがあった単語です。
それもそのはず。
2016年から2017年にかけてのInstagramにおけるPR投稿数は、グローバルで前年比200%、日本国内で400%増量しています(※)。
※参考:電通報「インフルエンサーマーケティングも「運用型」の時代に」2018年10月22日
特にオンライン広告への出資が増えている日本では、インフルエンサーを起用した広告を数多く目にする機会が増えているようです。
美容系YouTuberとかが私にとっては身近な例の一つですね!
しかし、勉強する前の私は「ネット上なら誰でも意見言えるし、影響し合ってるやん?」と思っていました。
要は、「インターネットによって誰もが影響し合える今なら、誰しもがインフルエンサーと言えるのでは?」ということを入社前までは考えていました。
ですが、入社後に研修の一環で「マーケティング戦略 第五版(※)」(代表の池田曰くマーケター1年生の教科書だそうです)を勉強した私は「インフルエンサー」によく似た意味の新しい用語の出現に更に混乱しました。
それが「準拠集団」と「オピニオンリーダー」です。
要約すると、マーケティングにおいて「準拠集団」も「オピニオンリーダー」も「インフルエンサー」も個人に影響与えて、ものを買わせている。
「個人」が対象なことも、「ものを買わせる」という結果も一緒。
いや、どう違うねん、と。
一体何で区別されてるねん、と。
そこでまず、「準拠集団」と「オピニオンリーダー」と「インフルエンサー」が一体何なのか定義していきます。
そして、「インフルエンサーとは一体誰なのか?」「人類皆インフルエンサーは可能なのか?」を検証していきます!
※和田 充夫・恩蔵 直人・三浦 俊彦「マーケティング戦略 第5版」有斐閣、2016年12月12日
1.「準拠集団」とは?
「マーケティング戦略 第5版」上で、「準拠集団」とは
「個人の影響や行動に影響を与える集団」
のことだそうです。
学生時代、社会学が専攻だった私にはこの言葉に聞き覚えがありました。
要は学校の友達や職場の同僚、家族のように「個人」にとって身近な集団のことです。
個人が何か行動する際、その行動を参照(refer)する集団が準拠集団なんですよね。
例えば、「ママやパパがおうちに帰ってきた時にただいまって言うから真似しよう」とする幼児にとって、家族が準拠集団だということです。
ここにマーケティング要素を加えると、
準拠集団は消費者の製品選択やブランド選択にも影響を与えてきます。
特にぜいたく品や人前で使う製品の購買の際に影響が大きいそうです。
例えるなら、「同級生で流行っているローラースルーゴーゴー(というキックボード)が欲しいちびまる子ちゃん」や
「周りの奥様方が持ってるヴィトンのバッグが欲しくなる主婦」
とかかなと思います。
ちびまる子ちゃんにとっては同級生、主婦にとっては周りの奥様方が準拠集団です。
じゃあ、自分が所属している近しいコミュニティが準拠集団なんやなと思いがちなんですが、この準拠集団には罠があります。
準拠集団は、その「個人」にとって過去現在未来どの時間軸に属する/属していたグループでも準拠集団と呼べるのです。
更に、その「個人」が所属したいと思っている(あこがれている)集団も準拠集団。
更に更に、その個人が絶対真似したくない!と思っている(拒否している)集団も準拠集団。
しかも、現代ではSNSを通してバーチャルに構成されたコミュニティも準拠集団になるらしいです……。
範囲がめちゃくちゃ広い!
取り合えず、「人類皆準拠集団」は確実かと思われます!
2. 「オピニオンリーダー」とは?
この言葉が曲者です。どの観点から見るかで意味が変わってきてしまいます。
このエントリーにおいて、私は「オピニオンリーダー」を社会学における概念として扱います。(ところでマーケティングと社会学と心理学、めっちゃ密接に関わってるね)
「オピニオンリーダー」という言葉は社会学でも使われる言葉で、
「集団の意見や行動、判断に関して大きな影響を与える人」
のことです。
『ドラえもん』でいうところのジャイアンや出木杉君のように、
クラス内やコミュニティ内でこうしよう!と言ったことが賛同されて、その通りになる人のことを言います。
そういう人周りにいませんか?
権力者というよりは発言や行動によって、コミュニティへ影響を及ぼすような人のことを指します。
また、コミュニティの規模に関わらずオピニオンリーダーと呼ばれる人間は存在します。
『ドラえもん』の例だと、クラスメイトというコミュニティにおいてオピニオンリーダーはガキ大将や学級委員長ですが、
国という規模のコミュニティだと政治家や有名タレントも国民に影響を与えるということで、オピニオンリーダーと呼ばれます。
そして、ここにマーケティング要素を入れると「オピニオンリーダー」は他人の購買にも影響を与える人のことになります。
例えば、聖子ちゃんカットを真似した女の子にとって聖子ちゃんがオピニオンリーダー、
安室ちゃんと同じ厚底ブーツを履いていたアムラーにとって安室ちゃんがオピニオンリーダーです。
ひと昔前まではTVというメディアで放送される有名人に影響を受ける人が多かったため、規模の大きなコミュニティにとってのオピニオンリーダーは特定の人物ばかりでした。
しかし、ここにネット社会が導入されると少し話が変わってきます。
誰でも発言・発信が出来るネット上において、匿名のクチコミでもまたそれを読んだ「個人」に影響を与えるようになりました。
つまり、@cosmeに書いてあったクチコミを読んでその商品を買った人がいるとするなら、その人にとってそのクチコミがオピニオンリーダーです。
個人にとって今まで関係の無かった人からも影響を受けちゃえるんです、そうネットならね。
ここで重要なのが、
有名人のように特定の誰かでなくとも影響力を持つようになった
=(イコール)
有名人でなくとも、影響を与える対象となる「個人」に知られていなくてもオピニオンリーダーになり得る
ということです。
これは、つまりは「人類皆オピニオンリーダー」……?
しかし、人類皆オピニオンリーダーという解に対して私は疑問があります。それは後述していきたいと思います。
因みに準拠集団との違いは個人であることです。
更にオピニオンリーダーは自身が所持しているコミュニティに対し影響力が強いということから、影響を受けた個人にとっての準拠集団の中にオピニオンリーダーは含まれています。
つまり、図で表すとこんな感じです。
※マーケティング戦略においての「オピニオンリーダー」はまた少し定義や意味が変わってきます。
ロジャースの「イノベーター理論」における「オピニオンリーダー」は初期採用者として新商品を広めるという役割があります(※)。
しかし、このエントリーにおいてはオピニオンリーダーが「個人」に「どのように」影響するかが重要であり、「いつ」「新商品」を愛用するかは重要ではありません。
なので、社会学における「オピニオンリーダー」を採用しています。
※参考:Battery「イノベーター理論とは?キャズム理論も合わせてご紹介」2019年4月10日
3.「インフルエンサー」とは?
さて、ここまでオピニオンリーダーの説明を読んでくださった方は疑問に感じているんじゃないかなと思います。
「さっき例に出してた聖子ちゃんとか安室ちゃんとか、要はインフルエンサーじゃないん?」と。
その通りです。オピニオンリーダーとインフルエンサーは「集団に影響を与える個人」としてほとんど同義です。
というよりは、オピニオンリーダーの定義がインフルエンサーという言葉の定義を内包していると表現する方が近しいと思います。
つまり、こういうことです。
「じゃあオピニオンリーダーとインフルエンサー、何が違うん?」というと、インフルエンサーは「特定の個人」であるということです。
前述の通り、ネット社会が浸透する前まではオピニオンリーダーは有名人など影響力の強い特定の人物でした。
しかし、ネット社会の登場で匿名の個人による影響力が強まり、オピニオンリーダーの定義が広がったのです。
SNSやレビューサイトなどで、個人にとって匿名の「誰でもない人」が発言力を持ち、クチコミすらオピニオンリーダーとなりました。
そこでオピニオンリーダーから更に狭義である、
1.発言力や影響力の強い特定の個人
2.自身のコミュニティを所有している
という二つの要素を持つ人がインフルエンサーと定義されているようです。
芸能人、YouTuber、インスタグラマーなどなど、ファンやフォロワーを自身のコミュニティとして持っている人が当てはまりますね。
つまり、一般人でもファン数次第ではインフルエンサーになれると思います、が、
大きな影響を与えられるコミュニティを全人類が持つということは不可能に近い……。
なので、私が想像した「人類皆インフルエンサー」は不可能だと思われます。
4.じゃあ、人類皆インフルエンサーになれないの?
私が入社前に想像した「人類皆インフルエンサー」は、
人類皆が「準拠集団」であり、「オピニオンリーダー」になり得るということを勘違いしていただけでした。
「インフルエンサー」はインフルエンサーを認知し影響を受けるコミュニティを持っていなければいけない。
なので、「全人類皆インフルエンサー」は不可能。
というのが、結論……。
ですが、オピニオンリーダーのところで書いた通り、「人類皆オピニオンリーダー」と言い切るのにも今の私は疑問を持っています。
何故なら、「人類が皆オピニオンリーダーになれる」ネット上での意見は信用に欠けると思っている人が多いからです。
ネット上のクチコミに影響される人は多くいます。
ですが、すべてのクチコミに影響されるわけではない。
クチコミに影響されるかどうかはその内容が参考にできるか、信頼できるかどうかで変わってくると思います。
だから、「人類皆オピニオンリーダーになれる『可能性』がある」というのが妥当だと私は思います。
しかし、この可能性を押し上げる方法もあるとも私は考えています。
ここからは私の個人的な意見なのですが、
その可能性を上げるには熱意を持ってレビューをするということかな、と思っています。
例えば、「このファンデ、結構良い」とだけ書かれたレビューより
「このファンデーションはテクスチャは固めだけど、結構伸びるからコスパ良いと思います!
個人的には1プッシュで事足ります。塗るときは指よりスポンジ、スポンジより筆がおすすめです。
リキッドファンデーションの割に仕上がりはさらっとしていて~(中略)混合肌さんやオイリー肌さんにおすすめです!」
としっかり書かれたレビューの方が本当に愛用しているんだなって信用できませんか?
リサーチによると、
60.6%の人が「クチコミ内容が具体的か、詳しいかどうか」
42.7%の人が「クチコミの内容への説得性」
で信用できるかどうかを判断するそうです(※)。
※参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「口コミサイト・インフルエンサーマーケティングに関するアンケート結果」2018年9月19日
クチコミを書くことでインセンティブが発生するわけでもない場所で、人がクチコミをする理由はなんでしょう?(これ次のテーマにしたいですね)
人に「良いもの、自分の好きなものをお勧めしたい!」という熱意から、
人はレビューをするのかなと私は考えています。
熱意があるからこそ具体的に書けるし、説得しようとする。
そういえば、同期の子たちも自分の好きな業界やジャンルについてnoteを書いている子が多いです。
好きだからこそ書けるものだと思いますし、知ってもらいたいというモチベーションが持てる。そして、行動できる。
電通報の記事(※)では(こちらはインフルエンサーについてのものですが)、
インフルエンサーの熱量はファンへと波及するため、まずクライアントとなる企業が商品への熱量をインフルエンサーへ伝えるべきだと書いてあります。
※電通報「熱量で、インフルエンサーマーケティングは加速する」2019年8月20日
それはオピニオンリーダーとなるクチコミでも同じことが言えそうですね。
元々、製品への熱量を持っているファンだからこそ表現が自然になるし、信用度も高まるのかもしれません。
そもそも「人に自分の好きなものを知って貰いたい!」ひいては「自分の言葉で誰かに影響を与えたい!」というモチベーションを持たなければ、熱意のある文章を書くことや行動を取ることは難しいかなとも思います。
でも、もし全人類が自分の好きなものを熱意を持って表現できる場所があるのだとしたら、
「全人類インフルエンサー」とまではいかずとも、「全人類オピニオンリーダー」になれるかもしれませんね。
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