小さな戦士
放射線治療が終わって会計ファイルを出しに行こうと移動中、大きな泣き声が聞こえてきて、
エスカレーターを上がると
その声の主が視界に入ってきた
その子にしか目が行かなかった
幼稚園くらいの男の子
左腕に包帯が巻かれていて
つい2ヶ月前に私が着た術着と全く同じもの
小さな身体の小さな術着
彼は真っ直ぐ前を見て
大きな声で泣きながら
歩いてきた
前を見て、
すぐそばに居たであろうパパかママに
抱かれることもなく
ただ前を見て歩いてきた
これから手術なんだろうか
事情は判らないけど
得体のしれない恐怖と戦っているであろうその子の心中を想像してしまい胸がいっぱいになった
そのたくましい足取りに
微笑ましくもあり
ものすごく頑張ってるその子に、
えらいぞ!って褒めてあげたかった
だって、
行きたくないでしょ?
親に抱かれていたいでしょ?
こんなの着て何なん?ってなるやん
せやのに、
彼は自分の足でしっかり前を見て歩いてた
凄く凄く強い子だって
そう見えたよ
私の息子は10ヶ月の時に鼠径ヘルニアを見つけて、緊急性がなかったんで 確か1歳を待ってオペをしたんだよね
風邪ひいて延期になったりもあったけど、
消化器外科の待合で大人に混じったなぁ
小さい頃の息子は今と違って社交的だったので、例えば採血なんかの時は お母さんは外で待ってて下さい、と息子だけが呼ばれて
ナースさんに手を引かれて診察室に入って
泣かずに戻って来る
ナースさんが、
『お母さん、この子誘拐されますよ、気を付けないと、誰でもニコニコ手を繋がれてる』と笑っていた
息子は“お姉さん”が好きであったw
当時は、術着を着て、頭にホワホワを被って
ちょっとウトウトするシロップみたいなのを“チュッ”と飲まされて、ベッドでオペ室まで運ばれてった
入院したのは小児科病棟だったけどね
ベッドがオペ室に行くエレベーターでお別れ
小さなベッドがエレベーターに乗って
ナースさんがいってきます、的な。
眠ってる息子をのせたベッドを見送るしかできなくて、凄く重い病でも怪我でもなかったけど
エレベーターの扉が閉まると
胸がいっぱいになって涙が出て
ただ無事を祈ってた
もう、あんまり細かいことは覚えてない
夫婦としての関係性が壊れていたから、
ひとりで付き添っていた
オペの時は母が来てたかな
母もまた、私が子供のころオペをしているので
胸がいっぱいだったに違いない
その子を見て、
その子の精一杯の泣き声を聞いて
自分のオペ日のことと
息子の思い出と
全部混ざって泣きそうになった
頑張って、
きっと大丈夫!
って心の中で声をかけた
パパ、ママ
どうか小さな戦士を褒めてあげてね
もう今頃は、
病室で退屈してるくらいに
元気になってるといいな
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