【7/25発売】新作『牡丹と獅子』に込めた想い、題材選び、ブロマンスとは!?
こんにちは、翁まひろです!
これまで何度か告知をさせていただいた、中華風ブロマンス『牡丹と獅子 双雄、幻異に遭う』が、いよいよ今週25日に、全国書店で発売となります。
KADOKAWAさんのシステム障害により、いまだ流通に影響が出ています。
新刊は通常通りに発売されますが、売り切れたあとの再入荷に支障が出ている書店も多いようです。もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、書店で見かけた際にはぜひお早めに…!
(25日よりもはやく書店に並ぶこともあるので、どうぞご注意ください)
第8回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉&〈読者賞〉受賞作『菊乃、黄泉より参る!』の発売からおよそ一年半。
人生初の企画書づくりから始まり、担当さんとの打ち合わせを経て、本プロット作成、さらにはリテイクを重ね、初稿、改稿、また改稿……と進み、そうしてついに受賞二作目の発売までたどりつくことができました。
小説書きの方々にとっては、多分、この過程のほうが興味がありますでしょうか! 人生初の企画書づくりにどう向きあったか……じつはnoteで拝読した記事の数々に途方もなく助けられたので、いずれ深謝をこめつつ、その過程を書ける範囲でご紹介できたらと思います。
古代中国「志怪小説」をモチーフに
中華風架空世界・乾帝国を舞台にしたこの物語は、「古代中国の志怪小説」をモチーフにしています。
志怪とは、「怪異」を「志(しる)す」こと。
古代中国の民間でまことしやかに囁かれていた怪異譚を、小さな説――「小説」という形でまとめたものです。
民間に流布した、怪力乱神のお話。
幽鬼の復讐、国家滅亡の兆しとなった怪奇現象の話、奇妙な姿をした化け物の話、神様や仙人が起こす天罰や奇跡、千年を生きる狐の話……。
日本人にとっても馴染みの深い怪異譚の源流が、この志怪小説にはあります。
民間の伝承集ということもあり、古代中国の志怪小説は一行程度と短いものもあったり、意味が通らないものもあったり、とさまざま。だいたいにおいて、オチというものがありません。
そのオチのなさに創造を掻き立てられる……!
古代中国の人々が、どんな怪異を見聞きし、恐れ、対策を練ったのか……民間伝承の怪異譚から着想を得て、書きあげたのが、この『牡丹と獅子 双雄、幻異と遭う』です。
今作では、主に南北朝時代に志された『捜神記』、『幽明禄』、また『列仙伝・列神伝』から題材をとりました。
ふたつの伝承を混ぜたり、あるいは大きく膨らませたりと思う存分、遊ばせていただいています。
もしモチーフのほうにも触れてみたいな、と思われましたら、ぜひぜひ巻末「参考文献」をご参照ください。
洛宝と英傑、ふたりのキャラクター
本作の主人公は、美貌の毒舌道士「洛宝」と、豪放磊落な便利屋「英傑」。
今回、こだわったのは「W主人公」であるということ。
主従関係や、歳の差のあるコンビともまた違う、年齢の近い者同士の「対等な関係」を描きたかった。
互いに依存することなく、それぞれで自立しながらも、過去に傷を抱えた者同士、衝突したり、救われたり、笑いあったり、認めあったり……。
その「対等」を描きだすために、本作ではふたりの交互視点で物語を紡いでいきます。
生きてきた道も考え方もまるで違うふたりが、皆さまのお気に入りの登場人物になれたら嬉しいです。
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ブロマンスとはなんぞや
ところで……ブロマンスってなんですか、という話ですが……!
ネットで検索すると、きちんと定義も説明もされているのですが、言葉にしてしまうと「なにか違うような」という感覚が否めない。
なので、翁はじゃあブロマンスにどういうイメージを持っているのかと言いますと……、
『陰陽師』(夢枕獏・著)の、安倍晴明と源博雅。
『SHERLOCK』(イギリスBBCドラマ)の、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソン。
です! どどん!!
現実世界でも、男性同士の絆というのは、女性では太刀打ちできないものがあります。恋愛感情なしに、ただただ「尊敬」であったり、「一緒にいるとなんか楽しい」といった純粋な想いだけで、女性とよりも固い絆で結ばれたりするのですから。ずるい。(?)
本作『牡丹と獅子』でも、ひょんなことから巡りあったふたりが、どんな風な道を歩み、どんな結末を迎えるのか……見届けていただけたら嬉しいです。
2024年7月25日頃、全国書店で、角川文庫より発売。
毒舌道士と、人たらしの便利屋が挑む、怪力乱神がらみの事件。
神の祟り、化け物がもたらす怪、人の業――。
癒えぬ過去の傷と向きあったとき、ふたりが導きだす答えとは。
『牡丹と獅子 双雄、幻異に遭う』
著 :翁まひろ (@roji_okina)
装画:カズキヨネ様 (@yonekaz)
装幀:AFTERGLOW様 (@afterglow_nello)
どうぞお楽しみに!
謝辞
最後に――。
学生の頃に専攻したゼミが、この志怪小説を研究するゼミでした。
ゼミの恩師はすでに亡くなられており、ご報告できないことがとても残念ですが、恩師の遺された著書や、翻訳した書が、今作の根幹となりました。
参考文献として本書内にお名前を刻めたことが、個人的にはとても嬉しく、光栄に思っております。
『捜神記』(干宝・撰)をはじめとする志怪小説研究、また本書の翻訳をされた故・竹田晃教授に、心よりの敬服と感謝をこめて。