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父の記録②|頚椎損傷のきっかけはダイエット
父は高校卒業以来ずっと勤めた会社を定年退職した後、健康面の問題に取り組み始めた。「メタボリックシンドローム」と指摘されていた体型を改善するため、ダイエットを決意し、サイクリングを始めたのである。ママチャリで日常的に10キロほどの距離を走っていた。父本人の葬儀の際、私の叔母(父から見ると弟の奥さんに当たる)から「当時、ちょっと日焼けして健康的に痩せたよね。それまではむしろ太り気味だったのにね」と声を掛けられたことからも、この時期の父の努力が成果を出していたことがわかる。しかし、2016年10月、事故が起きてしまう。
具体的な状況は明らかではないが、小さなトンネルで頭をぶつけ、転倒したという。国立病院機構名古屋医療センターに搬送された父は、頚椎損傷と診断され、手術を受けた。国立病院での治療の後はリハビリ専門の病院に移った。どこまで回復できるかは事故直後のリハビリにかかっているのだが、思うように結果が出ず、立つことはできなくなり、全介助が必要となった。頚椎損傷で神経が傷つくと血圧や呼吸など自分の意志とは関係なく維持される機能も弱ってしまうそうで、長い時間体を起こしていることも難しくなった。
リハビリ専門の病院の後、ほかの病院や介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)を渡り歩いた。正確に言えば、歩けないので介護タクシーに助けられての引越しの繰り返しだ。亡くなるまで、一度も自宅に帰ることはできなかった。