事業と共に培ったいくつもの「志」。 CaSyの上場ストーリー
こんにちは。株式会社CaSy CEOの加茂 雄一です。
株式会社CaSyは、2022年2月22日に東京証券取引所マザーズ市場に上場いたしました。
まずは、ご協力や応援をいただいた関係各所の皆さまにお礼を申し上げたいと思います。誠にありがとうございます。
また、1月19日の上場承認後、多くの方々からSNSで応援のメッセージをいただきました。しかしながら、市況感に対する懸念など上場が確定ではなかったため、十分にリアクションができていなかったかと思います。この場でお詫びを申し上げます。
①投稿した理由
まずは、私が投稿した理由から説明します。
それは、上場という節目に、CaSyという会社に対して、また、CaSyを取り巻く関係者の皆さまに対して感謝をお伝えしたいからです。
何に対して感謝をしているのか。
言葉では表現できないほどたくさんあります。
その中でも最も大きなことを1つ挙げるとすれば、
私や大事なCaSyの仲間に『志』を持たせ、育ませてくれたことに対してです。
私の『志』の解釈は、
「人のためを想い、行動すること」だと考えています。
「利他」という言葉にも近いと思います。
冒頭から意識の高いようなことを申していますが、実は、私は、この『志』という言葉が理解できず、たぶんに苦しめられました。
創業する前はまったく理解できていなかった『志』という言葉ですが、
創業時にはその種が芽吹き、
事業をしながら自問自答の中で葛藤し、
仲間たちと困難を乗り越えるなかで『志』を育んできました。
いまでも『志』という言葉をはにかみながらしか言えない私ですし、
まだまだ経営者としても若輩者です。
しかしながら、まちがいなく『志』が人を巻き込み、大きなことに挑戦できた体験をしました。
これを、CaSyの軌跡としてここに投稿することで、
少しでも多くの方の『志』の糧にしていただけますと幸いです。
それにより、一人でも多くの方が「人のためを想い、行動すること」で、
世の中に笑顔が多くなればと願います。
7,000文字を超える長文ですので、スキマの時間に少しずつでもお読みいただけますと幸いです。
キャストのみなさまには、サービスの合間の移動時間にでもお読みいただけたら嬉しく思います。
②CaSyとともに成長した『志』
(1)創業前: 理解できなかった『志』
創業前は、私は『志』という言葉をまったく理解できていませんでした。『志』と言われても、新選組が頭に浮かんでくるだけ。
人のためと言われても、偽善という言葉に変換されてしまう。
そんな貧しい人間だったと思います。
私の創業前の職業は公認会計士です。周りの方にはとても恵まれて、日々楽しく仕事をしていました。
ただ、当時はモヤモヤとしていた劣等感のようなものがありました。
なぜか自然と周囲に人が集まってくるヒトに対してです。当時は、その理由が全く分かっていませんでした。
いま思えば、そのヒトは、『志』を持っていたのだと思います。
公認会計士法1条には公認会計士の『志』が示されています。
周囲に人が集まるそのヒトの判断や行動は、株主のため、クライアントのためなど、上記の『志』のもと、人のためになっていたのです。
一方の私は、何のために仕事をしていたのか。それは、自分のため、お金のため、評価されるため、などだったと思います。
当時は『志』を理解できずにモヤモヤしていたこの劣等感。
私はこのモヤモヤをなんとかしたくて、グロービス経営大学院に入学しました。
こう書くと寂しんぼのウサギのようでかっこ悪いのですが、これも志のためだと思って書いてます。(笑)
(2)創業の時:身近な人を助けたいという『志』
私が本気で「人のため」を考えたのは、グロービスでCaSyの事業を考えた時です。
グロービスには3か月でビジネスプランをつくるクラスがあります。そこでたまたま同じテーブルに座ったのが共同創業者で共同代表の池田です。
クラスでは100個のビジネスプランを考えました。しかし、担当講師である山中先生にプレゼンしにいっても、全てのプランが100点満点中1点と酷評されます。
山中先生からのアドバイスは「志が見えてこない。このビジネスを通して誰を助けたいのか。」そこで真剣に『志』について考えました。
出した結論は、「まずは身近な人から助けられるサービスにしよう」ということでした。
家事代行サービスを創業した原点に、こんなエピソードがあります。
いまでは家事代行サービスの代表である私ですが、実は家事がとても苦手です。
妻が妊娠した時に、体調の悪い妻を大切にしたくて私は一手に家事をやろうとトライしましたが、まったくうまくいきませんでした。僕の家事レベルの拙さは、逆に妻にストレスを与えていたとさえ思います。
そこで解決策を模索している中で、初めて家事代行サービスを知り、利用しました。お掃除をしてくれる、お料理を作ってくれる以上に、家族に笑顔が増えるサービスであることを体感し、感動しました。
このサービスをもっと手ごろに利用できるようにしたら、私の家族も、また、同じような境遇の家族にも笑顔が増えていくのではないかと思ったことがきっかけで、CaSyの元となるビジネスプランが生まれました。
この事業をクラスで発表したところ、もちろん、そこに市場の機会があることや競争優位性など諸々もありますが、身近な人を助けたいという『志』が評価され、クラスで最優秀の評価をいただきました。
私に、人のためを想う『志』が生まれた瞬間でした。
創業時、この『志』を語ることで、多くの人に助けられました。
まずはCaSyの家事代行スタッフ(以下、キャスト)の方々です。最初の500名くらいまでは私が面接を行い、その想いを語りました。これに共感をしてくれたキャストさんが今でも働いてくれています。
また、家事が苦手な私が代表だからこそ、キャストのみなさまが本気でCaSyに協力してくれて、多大な貢献をしてくれました。
最初の研修メニューを考えたのも、マニュアルを作成したのも、キャストさんが喜ぶ制度を考えたのも、キャストさんたち自身です。
「身近な人を大切にする」ために始まったCaSyですが、こうしてCaSyの礎をつくってくださったキャストのみなさまも、私にとって大切にしたい身近な人になりました。私は経営者としてキャストさんにとても感謝をしていますし、CaSyの社員もそのように想い、行動をしてくれています。
また、私の『志』に共感してくださり、まだ売上もほぼたっていないころから投資をしてくださる株主も見つかりました。前田ヒロさん、みずほキャピタルの堀さん、イーストベンチャーズの大柴さん。彼らには資金面だけでなく多くのアドバイスをいただきました。
『志』は共感を生み、人を巻き込めるのだということを知りました。
ただ、想いはあれど、まだまだVisionやMissionは定まっていない状況でした。ドラフトのような形で言葉にしたものはありましたが、なぜか社員にも共有していない状態。
いま思い出しても共有しなかった理由は不明ですが、たぶん恥ずかしかったのかな(笑)。
CaSyのVision/Missionを明確にしたのは2018年、創業4年目のころになります。
(3)Vision/Missionの策定の時:お客様を支えたいという『志』
創業4年目までは、私もお客様やキャストさんからのお問合せにメールを返したりして現場でがむしゃらに働いていたこともあり、Visionを言葉としてきちんと考える時間をとれていませんでした。これは言い訳で、そもそも、その重要性を理解できていなかったのだと思います。
ただ、社員も増えていく中で、また取締役の白坂が入って議論していくなかで、その重要性を徐々に認識していきました。
CaSyを通して誰をどのように助けたいのか、創業以来本気で考えたのがこの時になります。いろいろな本を読みました。たくさんの人のプレゼンテーションを聞きました。たくさんのお客様の声に触れました。
そこで出会った1人のお客様の声が以下です。
私たちのサービスは、間違いなくお客様の人生に役立っている。
そんな自信を持たせていただいたメッセージです。
私たちはこのような、日々がままならないとくじけそうになりながらも、懸命に生きるお客様を助けたい。
どうやって助けるのか。
お部屋をきれいにする、お料理を作る、
その根本の意味は、私たちはお客様の大切な時間を創っているということではないか。
時間はすべての人が平等に持っているけども、限りあるものです。
そして、その時間で、誰と、どんな経験をし、何を考え、記憶するのか、その意味で時間は人生そのもの、命そのものだと思っています。
だからこそ、私達のお客様には、人生が豊かになる時間の使い方をしてほしいと思う。
私たちがお引き受けして生まれた時間で、大切な方と過ごしていただいたり、使命として行われている仕事をしていただいたり、その人にとって大切な人のために時間を使えるようになる。
つまりは、お客様が「人のために」生きることを応援できる。
人が、人のために時間をつかえるようになれば、世の中に笑顔を増やしていけるのではないか。
人が、人のために、
私たちはCaSyを通じて、その起点になろう。
そこで、以下のVisionMissionを明確にしました。
ビジョン「笑顔の暮らしを、あたりまえにする。」
ミッション「大切なことを、大切にできる時間を創る。」
CaSyでは、キャストさんの面接の際にもVisionやMissionを説明しています。CaSyのキャストさんはこの『志』に共感して参画してくれています。Vision/Missionに紐付いた、キャストさんの品質の基準を示すクレドもできました。Vision/Mission/クレドに共感してくれるキャストさんがCaSyの強みの1つだと考えています。
そして、もちろんVisionやMissionを社員にも説明するようにしました。社員の目指すところも決まり、事業のスピードがアップしました。
また、VisionやMissionを基準として社員と議論する中で、プラットフォーマーとしてお客様に対して提供する価値も明確になってきました。
「時間」と「信頼」です。
「時間」はMissionから、「信頼」はおうちの中に入れていただくサービスの特徴から導き出されました。そして「信頼」をいただくための大きな手段として、上場という選択肢も現実味を帯びてきました。
しかし、時を同じくして、経営者として苦しい時期を迎えました。
(4)大量退職を経て:社員をワクワクさせたいという『志』
CaSyは、2019年、2020年と4割以上の社員が退職していく時期がありました。毎月のように、会社から去っていく社員を見送るのは、経営者としてとても心が痛かったことを覚えています。
社員が去っていく理由はさまざまですが、根本的な理由は経営者である私にあります。「価値観が明確にされたから」、「上場を目指す中で自由度が少なくなってきたから」、「どのベンチャーでも経験することだ」というアドバイスをもらうこともありましたが、経営という正解がない世界の中で、そこで考えることを止めてしまうのは私の目指すべき会社ではないような想いがありました。
私に成長のきっかけをくれたのは、株主であるみずほキャピタルの堀さんの一言でした。
「加茂さんは、社員をちゃんと愛しているのか」
その場では反論めいたことを言ってしまいましたが、そのあとに1人で悶々と考えているなかで、言葉では社員に感謝を伝えつつも、心から社員を愛していなかった自分に気が付きました。
CaSyに人生の大切な時間を使ってくれている社員のことを、本気で考え、その志を知り、CaSyの未来と重ねてワクワクできるようにしたいと思っているか。社員と向き合うことを避けていた自分に気が付きました。
社員を愛してワクワクさせたいという『志』を持つようになると、自然と社員と話したいと思うようになりました。そして、そんな私を社員は受け入れてくれました。
いまでは、半年に1回は私が全社員と1on1をします。また、社員の前で話すメッセージも、かっこいい経営者を演じたかった自分から、社員の成長を願い社員のためのメッセージを発信する自分に変わりました。
絆が強まった社員の皆がいるからこそ、次に語る事件を乗り越えられたと思います。
(5)大きな事件を経て:キャストのみなさまがやりがいを持ち、安心して働ける環境を創るという『志』
家事代行サービスはおうちの中に入れていただけるという特徴があります。そのため、お客様からとても信頼をいただけるというメリットがあります。一方でリスクもあります。
CaSyは創業以来以下の3つを重要なリスクとして定義して、様々な取り組みを行ってきました。
①お客様のおうちのものが無くなってしまうリスク
②お客様の個人情報が漏洩してしまうリスク
③お客様宅という密室閉鎖された空間でサービスを行うため、キャストさんが事件・事故に巻き込まれてしまうリスク
創業6年目(2020)にこの③に該当するリスクが顕在化する事案が生じました。
ここでは詳細な事案の説明は省略致しますが、こちらをご参照ください。
ユーザーがしたことだからと擁護をいただく声もいただきましたし、加害者に対する怒りもありましたが、それよりも大切なキャストさんを危険な目に合わせてしまった自分に対するくやしさが大きかったです。
この時に改めて、「キャストさんのためを思い、キャストさんがやりがいをもって安心して働ける環境の構築」を『志』として全力を注ぎました。
その『志』を社員と共有し、誠実な行動と、スピードのある対策を意識して対応を図り、そのリスクをどのサービスよりも低減できる仕組みまで成長できたと考えています。また、このようなときに、他の役員や社員が私へ誠実な行動への発破をかけてくれたことが、とても心強かった記憶があります。
また、その『志』に共感してくださったステークホルダーの皆さまとダイアログをさせていただき、大切なキャストさんを守るためにとても貴重なご意見もいただけました。
そして、本当に嬉しいことに、この『志』にはCaSyの多くのお客様にも共感をいただきました。多くのお客様から、キャストさんが活き活きと働いているのがCaSyの魅力だからと言っていただき、そのような言葉があったからこそ社員とともに誠実な行動が正解であることを認識できたと思います。
③これからも成長する『志』
CaSyのVisionやMissionは先に述べた通りです。
そこに向かうための『志』はまだまだ成長します。
私たちは、家事代行業界をバージョンアップしたいと考えています。
バージョンアップの方向性としては、以下を考えています。
(1)家事代行スタッフのバリューアップ
(2)家事代行業界のDXを進める
(1)家事代行スタッフのバリューアップ
CaSyの強みは、モチベーションの高いキャストさんにあると思います。
私たちは少しでも多くの家事代行スタッフにも、やりがいと安心を提供して、自身が行っている仕事に対する自信に繋げてもらいたいと考えています。
具体的には、CaSyはキャスト向け施策をマズローの欲求階層に基づき整備しており、これをCaSyのキャストさんに対しては磨きこみ、また、対象は全国の家事代行スタッフに向けても貢献していきたいと考えています。
(2)家事代行業界のDXを進める
CaSyのもう1つの強みは、テクノロジーにあると考えています。
独自のマッチングアルゴリズムの構築、ダイナミックプライシングの導入、様々なサービスとのAPI連携を含め、この業界のDXに貢献をしてきた自負があります。
私たちは、業界全体のDXを進め、お客様にとってはより利用しやすく、家事代行スタッフにとってはより働きやすい業界を創っていきたいと思っています。
④感謝
(1)株主の皆さまへの感謝
CaSyを信じて投資をしてくださりありがとうございます。
資金だけでなく、皆さまからは本当にCaSyが成長できるアドバイスをいただきました。
一番最初に投資をしてくださったBEENEXTの前田さんからの一言が、私の経営方針の礎となっています。
「経営で一番大事なのは人を巻き込むこと。人を巻き込めるような魅力的な人になるのが経営者の一番の仕事。」
(2)お客様への感謝
CaSyをご利用いただきありがとうございます。
お客様からの応援のお言葉に助けられたことが幾度となくあります。
毎月の全社集会でお客様からの声を社員に紹介し、私たちの存在価値を考える機会を創っています。お客様からの率直な言葉が、社員の励みにもなっていると思います。
CaSyの正式なサービスローンチは2014年6月なのですが、その前のβ版の時(2014年4月)から今でも継続してご利用をいただいているお客様もいらっしゃり、感謝の言葉を伝えきれないほどの感謝がございます。
私たちは、キャストさんが活き活きと働ける環境を創り、それが結果としてお客様への高い品質のサービスを実現すると考え、今後もお客様の暮らしを支えていきたいと思います。
(3)キャストのみなさまへの感謝
CaSyで働いてくださりありがとうございます。
キャストのみなさまと共に歩き、走り、ときには止まって、またジャンプしてここまでCaSyを大きくすることができました。
創業したころは、キャストさんに大学生のアルバイトと間違えられるほど青臭かった私も、多少は貫禄が出てきたと思います。体重だけではないはず(笑)。あと、毎週のメッセージでのつまらないギャグに反応していただき恐縮です。
なお、キャスト番号2番のキャストさんも現在もCaSyで働いてくれています。最初のキャストさんです(キャスト番号1番は創業者のため)。名前は伏せますが、本当にありがたいと思っています。CaSy番号の若さに関係なく、暑い日には汗を拭いながら、寒い日には冷たい水にかじかむ手を温めながら、お客様の暮らしを支えてくださるみなさんの存在があってこそ私たちがあります。
キャストのみなさまと、また近いうちにキャストセッションやカジーサロンでお会いできることを楽しみにしています。
(4)社員への感謝
まずは、いったんの節目を迎えることができました。
おつかれさま、あんど、おめでとう、あんど、ありがとう。
1人1人、今いるメンバーのだれが欠けても、本日を迎えることはできなかったと思います。
最強の仲間が揃ったと思っています。
今後のCaSyの成長は、私の成長とみんなの成長にかかっています。
CaSyはまだまだ大きくなります。
「人のために」生きる、を増やしていきたい。
そのために私たちは、よりたくさんの「時間」を創り続けていきます。
なので、まだまだみんなの力を貸してほしい。
ここまでたくさんのことを乗り越えてきたみんなと、まだまだチャレンジして、いろんな景色を見たい。
みんなの大切な人生の時間を、CaSyで過ごして良かったと思えるような会社にします!
長文にお付き合いをいただきましてありがとうございました。
基本的にはドライな性格なので少し気恥ずかしさはありましたが、想い溢れて筆を止めずに書けました。
CaSyは上場という1つのスタートラインに立ちました。
これからも走り続けますので、応援をよろしくお願いします!
最後に宣伝だけさせてもらおう(笑)。
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