金言265:欧米化
1980年代、日本が米国との経済戦争にまだ負けていなかった頃、欧米のグローバル企業のリーダーは、家族を優先する立場を公言していました。配偶者や子どもたちに気をつかうのは、レディーファーストと同様、ビジネスパーソンのお約束ごとでした。
某欧米大企業での事例
1)南ア転勤を断り、同業他社に転職したA氏
転勤を断ったのは、家族の反対があったためでした。米国で家族と暮らしていたA氏の勤め先がヨーロッパの企業に買収され、本社機能がドイツ本社に統合されました。そのため、経営幹部は米国からヨーロッパに転勤となりました。もちろん、拒めば、居場所はありません。そのため、A氏は、家族を残して単身でヨーロッパに行きました。2年後、南アの子会社社長の話がありました。今回は、家族との暮らしを最優先し、米国に本社のある同業他社に転職しました。さらに2年後、この米国の会社が英国企業に買収され、本社機能が英国に移ることになりました。すると、この人は、同業で米国に本社のある別の企業に転職しました。理由は、家族と離れて暮らすことを拒んだからです。家族とともに、米国を離れる選択肢はこの人にはありませんでした。
2)デンマークを選んだネイティブアメリカン
チェロキー族の血を継承する男性で、映画「氷の微笑」の主演女優とハイスクールの同級生だといっていました。この人は、前述のA氏の部下でしたが、勤め先が英国企業に買収された時はA氏と別れ、ロンドンに移り、英国人の別の上司の下で働きました。すぐに米国在住のフィアンセを呼び寄せ、結婚しました。英国企業に買収された会社は、A氏が去った4年後に、今度は米国人投資家に売却され、本社機能は米国にもどりました。その間にネイティブアメリカンには子どもが2人生まれました。彼らは、A氏と違い、米国には戻らず欧州の企業を選び、家族そろってデンマークに移住しました。
3)奥さんに気をつかう英国人幹部
A氏とチェロキーインディアンがいなくなった英国の会社の親会社のオーナーは、今流行りのM&A戦略で巨額の現金を手に入れたユダヤの商人でした。この商人は、ユダヤ系の人材を重用したので、スコットランド人経営幹部は苦労したようです。そのひとりが、チェロキーインディアンの上司でした。この人の奥さんは4人目でした。日本のビジネス界で離婚がまだ市民権を得ていない頃のことです。セールスミーティングの後のプライベートの夕食の席で話題になった離婚3回は、レアケースではありませんでした。欧米人の男性にとって、離婚はビジネスキャリアに傷がつくものではありません。
意外でしたが、「ホモ」であるとの風評が昇進に影響するとのことでした。
3回離婚したスコットランド人は、何かにつけて夫人を同伴しました。家庭より仕事を優先する日本のエコノミックアニマルは、ビジネスシーンに夫人を同伴するのは、公私混同のようで日本ではなじまないと感じていました。そこで、質問しました。
「そこまで夫人に気をつかっても、夫婦関係が破綻してしまうのはなぜか」
答え「できる限りの努力をしなければ、4回目の夫婦関係が保てないからだ」
ロンドンのパブで垣間見た欧米人の家族観は、現在の日本社会で特別なことではなくなったような気がします。「欧米か!」(だれもいいませんが)というところです。
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