バブルの頃#138:4年間の総括

金は能力についてまわるとヘッドハンティングのコンサルタントがいっていた。今はそんなに欲しいわけではない。あればあるだけ使ってきた。なければないですんでしまう。
「父親にほめてもらいたくてがんばっている」と言う人がいた。自分には関わり合いのないことだ。
外資での反省は、信義誠実の原則で無法者の相手をしたことだった。平気で騙すビジネス界の先輩たちにずいぶん踊らされたものだ。

すぐ忘れてしまうので、再び同じ誤りを繰り返すことのないように覚書を残しておく。「春のうららの隅田川」は、青島都知事の「世界都市博覧会」中止のおかげで、お台場への水上アクセス独占というバブルがはじけてしまった。そこで、4年間の総括はいった。

まずは、最古参の社員の評価。

「報告や指示したことをやり残す。作業完了のレポートがないので確認するとまだやっていないという返事がくる。何回注意しても改善されない。改善することを目的とした注意は実効性がまったくない。イライラしながら結果をレポートさせ追跡調査するような生産性のない仕事はしたくない。」
「必要なことで、彼にやってもらわなければいけない項目の中で、現在未着手の件が発覚したとき、なぜやらないのかと詰問し、経過説明を受けるのはもうやめよう。その後に向上が期待できないとしたら、現状以上悪くならないようにするだけだ。」

事例1:電話の取り方
新入社員の教育として電話の取次ぎで社名のあとに個人名を名乗らせた。秘書役のSは早速いつもと違うことをやっていると経営者のMに報告した。応えがすぐかえってきた。
「個人名は最後にいうのだ。社名を売っているのであって、個人名をだす必要はない。」
疑問が残った:社名に続けて個人名を名乗るのは、やってはいけないことではないだろう。

事例2:勤務中に雑誌を読むこと
「雑誌を勤務中に読むことを禁止しない。雑談をしてもいい、余裕をもって仕事をさせている。雑誌から情報を収集するのだ。電話が鳴ったらすぐとればいい。ただしすぐ電話をとらないと許さない。」と経営者Mがいう。
疑問が残った:Mの会社なので反論はしないが、納得もしない。頭の切り替えが瞬時にできる社員を抱えているとは考えられない。ウェイティングとアイドルタイムは違う。アイドルタイムや休憩中に雑誌を読むのは問題ない。コールセンターなら、就業中に電話がかかるまで雑誌を読んでいるのを許すわけがない。専門家によるとヒトの脳は中断した作業の復旧するのに20分かかるという。

事例3:出勤時刻
「朝早く出社して売上があがるなら早く出勤させている。仕事があるときに時間内に集中して能率よくこなせばいい。」と経営者Mがいう。
また、疑問が残った:5分前に席について仕事をスタートさせるのは社会人の第一歩をある。
反省:普通の企業の常識を適用したことが間違いの始まりだった。

事例4:机の上を整理整頓すること
「個人の机上の整理について細かい指示をするな。個人の好みにまかせればいい。帰社時に書類を椅子のうえに置かせるな。」と経営者Mがいう。
反論:細かい指示を出しているのはどっちかな。退社時に机の上を整理し何も残さないようにするのは、否定的なものではない。翌朝掃除するのが楽だろう。
反省:書類を放置したまま外出することの問題を提起したのだが、所詮放置して問題のあるような重要なものはなかったのかもしれない。

事例5:送別会での過剰反応
「Nはカラオケが好きな子だったのに、二次会をやってやらなかった。HTには送別会を開かなかった。Kの歓迎会は仲間から盛り上がってやったものではなかった。」と経営者Mに責められた。
分析:Nは勤務態度が男性社員には不評だった。心の通った送別会ではなかったかもしれない。HTは仲間や会社に納得がいかなかったので退職した。本人は送別会を辞退した。Kの場合は、取締役Fのスケジュールを先に聞いて日程を調整したのが気に入らなかったのだろう。送別会をやると決まって経営者Mは文句をつける。Mは何か送別会にからんで心の病を持っている」

事例6:事務所の雰囲気
「取引業者の配達係が事務所の雰囲気が暗いといっている。」と経営者Mが文句をいう。
疑問:出入り業者が得意先の悪口をいうかな。逆にMの業者や飛び込みセールスマンに対する乱暴な言動は、サービス業出身者としては恥ずかしい。あの間抜けな赤坂のホテルの用度係のHと同じじゃん。」

事例7:役員秘書S嬢にリークされた
Sが些細な社内の動きを上司である経営者Mに報告している。重箱の隅をつつくような指摘をMから受けた。
反省:MがかわいがるS嬢に対して、配慮と慎重な対応が欠けていた。屑のような情報しか秘書Sには流れなくなっていたのが、逆に命取りになりそうだ。Sの情報収集機能がネックになっていることに経営者Mが気づいていない。S嬢がもたらす屑情報をもとにMが経営判断をし始めていた。このリスクに気がつくのが遅れた。上司の女には気をつけるという危機感が抜けていた。

事例8:電話の取次ぎ
「電話を回す際、3回以上ベルをならすな。狭い事務所で3回なっても電話にでなければ席をはずしているのだ」と経営者Mが指示した。
秘書のS嬢あてにいつもの男からの私用電話がかかってきた。女子社員HKは指示通り、転送のベルを3回ならし、出なかったので男性に不在と応えた。
経営者Mが女子社員HKを叱責した。「Sさんは走って電話をとろうとしたが、ベルが3回なって切れてしまった。時と場合をよく考えろ」といった。
反論:S嬢は定時には出社せず、昼は1時まで外食。1時に内線にでなければ昼の外出から戻っていないと考えてしまう。

事例9:女子社員マニュアル
発端:前日の売上金を、午後銀行に入金するために昼休みに、金庫の近くの机上に置いた。従来は金庫の上に置いていた。秘書S嬢がそれを経営者Mに報告した。
M:金を放置。事故がおきたらどうする。金庫に保管するのは常識だ。無責任だ。
K:女子社員マニュアルに入金前の売上金は金庫に保管するという文言がないので追加したらどうかと女子社員Nにいった。
M:マニュアルはSさんがまとめたが、俺が監修した。マニュアルは俺が作ったのだ。俺を馬鹿にしているのか。金を金庫に保管するのは常識だ。マニュアルに書くことではない。朝出勤時に水をヤカンにいれて湯を沸かすということをマニュアルにいれるのか。
K:ヤカンは3年前から使っていない。Mが日頃常識がないと指摘している社員を対象にしたマニュアルなのだから、重要なことはたとえ常識の範囲であろうと明記したほうが良いと考える。
反省:これは秘書Sの仕事の内容を批判したことが、経営者Mの琴線に触れ、感情的なもつれに発展していった。

事例10:ネズミとゴキブリ対策
M:朝日消毒を2年前から使っていない。ネズミゴキブリ対策をなぜやめたのか。長年の経験によってやってきたことを、ド素人が勝手にやめるな。
言い訳:費用対効果でやめた。ホウ酸団子やゴキブリホイホイで対応している。
反省:最古参の社員Hが担当しており、経緯を聞いていなかったので即答できなかった。最古参の社員がMに相談して変更したことでも、経営者Mは、己以外はド素人と評価している。一方、最古参社員は、聞かれなければ答えない。その上、答えはミニマムだ。今は方向性を提起したり課題を与えたりして何か前向きな行動を期待する段階は終わっている。必要なことでやっていないことが出てきたら、その場で修復して現状を悪化させないようにメインテナンスをしていくのが、ストレスのないやり方だと思いはじめている。
「何故やらない、何故やらなかったのか」の最古参社員の答えはいつも決まっている。
「うっかりしていた」。後回しにしてきた怠慢の産物である。

事例11:仮払い
M:会社だぞ。今日いって今日金が出せると思っているのか。バカタレ
反省:8万円の仮払いを週明け月曜にほしいと、5日前の水曜に金額を秘書Sに伝えた。Sはすぐに現金が必要とMに伝えた。足元をすくわれていることにまだ気づかなかった。
疑問:信頼関係のなくなったところで、売上をあげていくことができるだろうか。10年来の付き合いを絶つのを躊躇していたが、吹っ切れそうだ。情けないことをいわれて、このままプライドを隅田川のどぶに浸けておいたらきっと後悔するだろう。外資で名を惜しむといった上司のことを思い出した。彼は悪人だがプライドをもっていた人だった。

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平史理 taira fumitoshi
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