見出し画像

ため息72:縁故採用

原宿に本社があった同族企業には、毎年50名超の縁故採用がありました。公務員のキャリアとノンキャリアのようなもので、縁故採用は、キャリア組でした。政財界の大物の血を継承する若者が、出自を明示して入社してきます。

この仕組みは、経営者にとっては安定株主のようなもので決して期待を裏切りません。キャリア組の若者はハングリーではありませんが、封建時代同様、子供の不始末は一族郎党が責めを負うので、問題は決して発生しません。経営者が必要とする仕事を、彼らは一族の力を借りてこなしていきます。そして、数年後、退職し家業を継ぎます。国会議員であったり、同族会社の経営者であったり、実家の業務提携先との婚姻であったりします。

この仕組みは、IT企業では機能しないことがあります。大企業の営業担当責任者の長男を、中途で採用した中企業がありました。この会社は、取引先企業のVIPの子弟を受け入れることで、開発案件の下請け受注増を期待しました。ところが、「買い」の思惑がおおきく外れました。三ヶ月たっても受注はなく、おまけに長男の勤怠は非常に悪く、一般社員の評判も悪いという三重苦になりました。
「IT企業幹部の反省」
人質をとって取引が成功するシナリオは、映画ではあまりありません。このような不適切な商行為は、やはりいけないことなのでしょう。失敗が明らかになるまで、成功すると信じていました。受け入れた子弟を商売の道具にするのではなく、育てて実家に戻すという大義が実行されていません。たとえ「人質」に属人的な欠陥があったとしても、目先の利益に惑わされて、縁故の意味を忘れていました。

いただいたサポートはこれからやってくる未知のウイルス感染対策、首都直下型大地震の有事対策費用に充当します。