金言323:1年1億円

ビッグボスは1年契約で1億円といわれています。
IMGのマネージャーから聞いたのですが、スポーツ用品メーカーが販売促進のために締結する有名選手との詳細な契約内容をエンドースメントといいます。これはスポーツ用品会社にとっては、不平等条項が留保された幕末の日米修好通商条約みたいなもので、選手本人とそのマネージメント会社にとっては、利益を確保するためにとてもよくできています。もちろん、一方的に有利な条項は、本人が勝ち続ける、負けない、話題性がある、スキャンダルを起こさないという状況が続くことが不可欠の条件です。
昔、担当したヨーロッパのテニスプレーヤーの契約には、本人が使用する用具の提供以外に、家族・友人・知人などに無償提供する製品の数量、家族と旅行する費用の負担まで決められていました。契約に記載された条項は最低条件です。選手本人が大活躍してくれたうえに、製品をばら撒いてくれれば、街頭でのチラシ配りよりプロモーションの効果が期待できます。

今年はオリンピックが開催されましたが、大きなスポーツイベントでスポンサーが提供する製品の量は個人の視点で見ると、莫大な量に映ります。スポンサーは組織委にスポンサー料を払い、更に製品を無償提供します。選手本人とのスポンサー契約とは別に、大会サプライヤー企業は、たとえば公式試合球の契約をすれば契約料と試合球の現物支給をします。この現物提供の量を知ると驚きます。大量生産の市販品ですから、原価はそれなりでしょうが、上代に換算すると意外な額になります。メーカーとしては、マスメディアで紹介され、消費者の目に触れるので、費用対効果を考えれば無駄な出費にはなりません。

仕掛けがなければ収穫は期待できません。仕掛けるには、費用がかかります。そして、仕掛けをする業界の中にも、悪い人がいます。可能な限り多額な予算をクライアントから引き出し、自分の利益のために予算をすべて使いきります。悪名高い広告会社が一例です。結果がでるかどうかは、仕掛けの内容によりますが、結果が出なかった場合は製品に責任をとってもらいます。結局、製品が消費者のニーズに適合しなかったから売れなかったということです。悪い人たちは、効率的に費用を使うことなど眼中になく、獲得した予算でいかに効果的に自己PRをするかを最優先します。この人たちは、どれだけクライアントの金を使えるかが、自分たちの実力の評価基準と考えています。例えば、大きなイベントでは会社をつくり予算をその会社が使います。イベントが終わると会社は解散、カネを使い切り清算し、法人格を消滅させます。

民間企業の話ですから、脱税や贈賄など違法な支出でなければ、適法な営業活動の費用として処理され、その金額が利益を圧迫しない範囲では株主からのクレームも発生しないでしょう。3年で20億円はおかしいとか、その費用の支出方法に無駄があるといった問題は、会社が赤字にならない限り不問です。プロモーションの仕掛けをする業界の一部の悪い人にとっては、甘い生活が続きます。
こういう悪い人が減ると、人気商品の販管費が下がり上代も下がるかもしれません。

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平史理 taira fumitoshi
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