金言261:事業計画と稟議決済の定説

朝夕ずいぶんと涼しくなりました。12月決算の企業は1月からの新会計年度に向けて、事業計画案作成に着手。次年度の目標を達成するために、人モノ金の保有原資の範囲内で、最善の事業組織を編成します。今ある組織を存続させるために、事業計画を練るのではないということが、お約束のひとつです。

大きなプロジェクトを進めるときは、各フェーズで担当役員や社長の決裁が求められます。そこで、経営幹部が必要な軌道修正をし、リスクの最小化をはかります。運悪く、経営判断の誤り、経営環境の悪化によって、赤字プロジェクトになったとき、その管理・営業責任は現場が負うことが一般的です。会社の存亡にかかわるような償うことのできない重大な損失をもたらした場合は、当然、経営者が責任をとることになりますが、通常は、企業としての事業の継続性を優先し、赤字プロジェクトのマネージャーの首をとって落着とします。

稟議決裁と上司の指示によって、業務をしているにもかかわらず、損失が出たときに最終決裁者は責任をとりません。経営幹部の指示どおりにやって失敗した場合に現場が責めを負うのは不当だと、従業員は感じます。しかし、経営というものはそういうものだと、経営者は考えています。「損してもいいよ、責任はオレがとるから。」という決裁はしていないのです。従業員の不始末をすべて肩代わりしていたら、経営者の首はすぐにとんでしまいます。肝心の会社の存続が、危うくなります。経営者と株主は、損をしないことを前提として、高い目標を設定し、前年をうわまわるパフォーマンスを発揮してもらうことを従業員に期待します。これに応えることで、資本家と賃労働者がWINWINの関係を享受することができます。

一方、個人のレベルでは、一年の計は元旦にありということで、正月休みに何かしら目標を設定します。それを紙に書いたり、神仏に祈願したりして、新しい年を始めます。こちらは、四半期ごとに見通しの開示も不要ですし、お願いした神仏に祈願成就の進捗具合を尋ねることもありません。

会社の事業計画達成の主役の座からほとんどの団塊の世代は降りていますが、長年の勤め人のサガのゆえに、今度は、自らが設定する「一年の計」を数値目標に読み替えて、四半期
決算と連動して年末達成に向けての上方・下方修正などを独りつぶやいているかもしれません。

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平史理 taira fumitoshi
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