バブルの頃#181:退職・転職・解雇

「社員の退職」

前号で紹介させていただいた中国民営企業の人事評価システムですが、20年以上前、勤務先の日本企業は同様の人事管理をしていました。社員が辞めたいというと、この社員を採用した当時の責任者と最初の配属先の当時の職場長が管理教育責任を問われました。

社員が不祥事を起こすと、新入社員当時の事業所の責任者が事情聴取を受けます。現在の上司ではなく、教育した当時の上司に責めがまわってきます。このような社員にしてしまったのは、上司の社員教育やら管理やらに問題があったと、経営者は考えました。

これには別の意味もありそうです。たとえば、事業所でTVカメラにむかってごめんなさいといわなければならない重大な事故を社員が起こしたとき、会社の処分は、当該社員と当該事業所に配属された当時の責任者が処分されます。現在の事業所責任者はお咎めなしというケースもありということです。現在の責任者が経営者層と特別な関係がある場合に適用される特例処置ともいえそうです。

「転職活動」

会社に不満と限界を感じた社員は転職を考えます。ここで、この会社は厳しい要求を退職予備軍につきつけます。就業中に転職活動を行った者は、懲戒解雇です。退職金をもらえなくなります。通常、社内の関連職場をまわって、退職のあいさつをしますが、このとき、「次はどうする、困ったときは相談してくれ」ということを職場長たちは、やさしく囁きます。ここで具体的な再就職先や、求職活動について口がすべると大変なことになります。就業中に転職活動をしたとみなされ、退職金の支払い処理が保留となります。人事担当者のなかには、このような事例を辞めたいという社員に説明してくれる、いい人もいます。

「解雇」

いい時代でした。リストラという解雇は、バブル期には存在しませんでした。フットワークがよく、能力に自信のある社員は転職によるステップアップに挑戦していました。

時代がかわり、人件費削減で利益を確保しようとする会社では、リストラ対象の社員の転職活動は熱烈歓迎です。CEOが株屋さんで、高度情報処理技術者集団の業態変更を仕掛けている会社では、リリース対象社員をまず現場から隔離し、1ヶ月間転職活動に専念するよう告知します。転職者に細かい業務引継ぎを会社は期待せず、出社無用で求職活動をする時代に変っていました。

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平史理 taira fumitoshi
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