金言317:もったいない

米国の法廷ドラマでは司法取引が頻繁に登場し内部告発で違法行為が裁かれています。日本では司法取引はないのですが、週刊誌では内部告発がネタになっています。
多くの不祥事の発覚は、内部告発が発端です。従業員は、冷遇されるリスクを冒して会社の方針に異を唱えるかわりに、公益通報者として報道機関や役所に告発することが可能になりました。公益通報者保護法は、企業の法令違反を通報する従業員や取引先に対して、当該企業が不利益な扱いをすることを禁止しています。しかし、告発者は法律どおり保護されるかどうか不安なので、リスクの少ない社外機関に通報するほうを選びます。これは、告発される企業としては、具合が悪いです。社内での改善で対応できることでも、社外の公的機関がかかわることで、ひそやかに穏便に内部処理することが困難になり、傷口が広がってしまいます。

社内では同族経営者のご乱心は許容範囲ですが、小生意気なジャーナリストが集まる席でのご乱心は命取りになりかねません。会見の席での挑発に乗ってしまった映像が公開されると、創業一族の陰の部分が明るみに出されワイドショウのネタになります。
社内で長年通用してきた常識が、初めての記者発表の席ではまったく通用しないことを経験します。本人は子供の頃から見てきた親のやり方を見習っているだけなのに、それが非常識だとマイクを持った小僧たちに罵倒されます。

こういう光景を見ているので、すぐ自白してしまう経営者が増えました。製品は問題ないのに、表示方法に多少の誤りがあっただけで、流通在庫を全部回収してしまう食品メーカーも出てきました。表示に誤りがあったのなら、表示ラベルを張り替えて再販ができるでしょうか。可能だとしても、回収してラベルを張り替えて再出荷というコストと時間がかかり、賞味期限の問題も発生します。このコストを流通在庫に反映して、特価品として販売すれば、メーカーも消費者も助かりそして資源浪費の防止にも貢献するはずです。こういう選択肢を取らせないメディアの過剰反応は好ましくないと感じます。
自動車や家電のリコールとは違うのですから、健康に被害を与える恐れのない偽装食品は、それなりの額で消費者に提供する経営者は登場しないのでしょうか。

偽装は偽装として誤りを認め、その是正を明確に宣言し、食することが可能な食品は、回収することなく消費者に提供するというのはブランド価値に好ましくない影響を与えるので難しいです。食品回収騒ぎでしっかり稼いでいるのは配送業者とワイドショウの後講釈屋。廃棄処分はもったいないです。

いただいたサポートはこれからやってくる未知のウイルス感染対策、首都直下型大地震の有事対策費用に充当します。