金言362:古参を残してはいけません
複数の外資企業で熾烈な社内覇権争いを経験してきた知人が、既存組織を刷新して経営基盤強化を目指すプロジェクトのオファーが再び舞い込んできたら、今度は必ず実行したいことがあるといいます。
それは、最古参の従業員に退場をお願いするということです。「余人をもって代えがたい」という評価を受けている人材も敬遠した方が賢明です。企業の人材は大事な資産ですが、「新しい酒は新しい革袋に」という教えがあります。これは2000年以上も前に人類が学んでいる知恵です。
既存組織の刷新に着手する際、まずは当座の業務継承のため、および、取引先との既契約に拘束されるために、どうしても、社内事情や業界の商習慣に詳しい人物が必要です。経営陣の刷新によって生じる混乱を最小限に抑えるためです。その人事の需給関係を古参の従業員は本能的に知っています。自分がいなければ会社はまわらないと本人は確信しています。
しかし、会社は古参の属人的な限界で、改革の上限を決めるわけにはいきません。要求されていることを実行しなければ次はないという状況で、社内事情に詳しい現場の古参社員の言いなりになるわけには参りません。古参は問題ある社内事情や取引先との密約など契約書に記載されていない隠れた瑕疵を知っていますが、それを進駐軍には教えません。小出しに開示し、新経営陣と取引をし、待遇維持をはかろうとします。また、旧経営陣の巻き返しを手引きするかもしれません。そうなると、古参とその周辺は抵抗勢力となり、経営基盤強化プロジェクトは失速してしまいます。したがって、社内事情に詳しい古参には悪さをしないうちに、早々に退場をお願いしなければいけません。
プロジェクトが失速するまで、知人は、無害を装う古参の陰に潜む抵抗勢力の妨害に気がつかなかったといいます。抵抗勢力を手引する者の排除を怠ったことが、背中から撃たれた原因であったと反省しているそうです。「もしもあの時」とネガティブな感傷から解放されるキーワードは、「次回は必ず」であります♪