バブルの頃#171:いい人タイプの営業マン

今回はSMAPの剛クンのような「いいひと」タイプの営業マンの話です。
会社は東証二部上場を目指して、経営基盤の確立をスローガンに掲げ着々と課題をクリアしていました。その中で営業力強化が最大課題です。もともと35%の株主がマネージメントの人材を提供し、仕事もその株主企業からまわってくるのをこなしているだけで現金と技術力と経験が蓄積され、それが無借金経営の原資となっていました。

上場となると、親離れし、独自性を証明しなければいけません。クローンでは上場が認められないので、何としても親会社からおりてくる案件以外の仕事を受注する営業力を強化しなければなりませんでした。ところが、高度情報処理技術者集団が運営する会社の限界なのでしょうか、営業マンの感性が理解できなかったようです。歴代の営業本部長は1年で辞めてしまい、今回ご紹介させていただく加藤さんは、株式公開を親会社が宣言した年の営業本部長から数えて4代目となります。
なぜか、上場を目指し営業力強化をスローガンに掲げている会社の営業責任者が1年で辞めてしまいます。その中で、会社が今度こそはと期待した人物が加藤さんでした。結局、この方も上場直前に辞めてしまいましたが、しかし在職期間は2年でした。

加藤さんは、親会社の営業部門で輝かしい功績を残され、80年代後半のバブル経済の大きなうねりの中で、退職、起業されました。以後10年以上ベンチャー企業の社長として東アジアのマーケットでビジネスを展開されました。バブルが本格的に崩壊するとともに業績が軟化しました。結局、会社をたたんでしまいました。そして今度は親会社の営業時代の実績と人脈を手土産にして子会社の営業責任者として復帰されました。

上場直前の会社が重要なポストに幹部社員を登用するわけですから、経営陣は今まで以上に慎重に意思決定をしたことは言うまでもありません。さらにこのポストは短命でしたので今度こそという全社的な期待がかかっていました。そして加藤さんが直近の履歴で会社を潰していることを経営者は評価しました。この人は負けを知っている。打たれ強いという点を社長は買ったに違いありません。

ただし、公開準備室は、管理本部に加藤さんの詳細な信用調査を要求しました。個人で負債を抱えている、サラ金に追われている、禁治産者などという信用不安がある人物を上場前に幹部社員として採用することはできないからです。

管理本部長がいいました。「加藤さん、大変だったのですね。信用調査をさせていただきました。問題なしということで採用が決定しました。」

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