金言324:衛生環境
飲食業は、風評の被害にさらされます。牛の脳がスポンジ状態になる狂牛病の話題をマスメディアが連日取り上げた頃は、牛肉がメインのレストランは閑古鳥が鳴きました。焼肉屋は閉店を覚悟し、ステーキレストランは、メニューに豚肉と鶏肉の料理を加えました。O157の時も、疑われたメーカーは大打撃を受けました。
その後は、外部要因ではなく、組織ぐるみの不適切な商行為(賞味期限・産地偽装など)が内部告発によって暴露されています。劣悪な労働環境、低賃金に不満を持つ非正規雇用の従業員による悪ふざけがSNSで拡散し、事業存続の危機においこまれます。加えてコロナ禍で市民は外食を自粛しています。今は生産者も流通業者も店舗スタッフも消費者もウイルス感染対策をしないと生命の危険があるので衛生環境は改善されています。いままでは、トップが全責任を負い謝罪すれば落着したのですが、いまでは、陳謝だけでは報道関係の担当者は納得しません。これでもかというほど、経過説明をさせ何回も謝罪させ、そして辞任を迫ります。体力のない会社は、営業休止、経営破たんに追い込まれます。時代劇にあてはめると、藩主や重役の不始末で、藩が取り潰され、家臣が浪人になって苦労するシーンです。
話題がすこしずれますが、阪神大地震で壊滅する前、現地のケミカルシューズ工場を訪問したことがあります。油がたっぷりとしみこんだ土の床に使い込まれた機械が置かれ、フーテンの寅さんの団子屋の裏の印刷工場のような感じでした。次の週に香港経由でシンセンのシューズ工場に行きました。広大な敷地の中にある最新設備の工場は整理整頓がゆきとどき、清潔な作業衣を身に着けた現地の工員が新型の機械を操作していました。これは、人件費の高い国内から安い中国に生産基地を移した結果です。国内より安い人件費ですが、大量生産の製品の品質は工場の設備と従業員の熟練度次第です。主要メーカーの工場が中国に移ることにより、当然にも、現地の中国人従業員は作業になれて、製品の歩留まりが改善しました。その結果、安価な商品は、価格品質両面で国産より競争力が上回るようになりました。当時は壁新聞で期待はずれの従業員をさらし者にしていました。さらに、作業場では各ミシンのそばにポールが立ち、決められた時間内に決められた量をこなさないと赤旗が立ちました。大きな工場でだれがダメな作業員か一目瞭然でした。
工業製品については、日欧米の企業が中国に生産基地を移す場合は、製造工程・品質管理の手法も持ち込みます。ところが、農作物については、そうではなさそうです。都市と農村の格差は、輸出品の品質にもあらわれます。安価な食材は、安価な製造工程、品質管理の下で出荷されるわけです。
日本も、昔はふんだんに農薬を使っていました。現在よりも劣悪な衛生環境で生産された食品を日本人は平気で食べていましたが、健康被害は発生しませんでした。今の中国の農村と同じです。ところが、環境汚染対策が進み、快適で衛生的な環境で暮らすようになった現在の日本人はある意味で免疫力が低下しました。
海外生産から国内生産にシフトする国際優良企業が増えてきました。農作物も国産品にシフトする日が来るかもしれません。
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