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ため息476:安価な食材は、安価な製造工程、価格に見合う品質管理の下で出荷される

阪神大地震で壊滅する前、現地のケミカルシューズ工場を訪問したことがあります。油がたっぷりとしみこんだ土の床に使い込まれた機械が置かれ、フーテンの寅さんの団子屋の裏の工場のような感じでした。翌週、香港経由でシンセンのシューズ工場に行きました。広大な敷地の中にある最新設備の工場は整理整頓がゆきとどき、清潔な作業衣を身に着けた現地の工員が新型の機械を操作していました。
これは、人件費の高い国内から安い中国に生産基地を移した結果です。国内より安い人件費ですが、大量生産の製品の品質は工場の設備と従業員の熟練度次第です。主要メーカーの工場が中国に移ることにより、当然にも、現地中国人従業員は作業になれて、製品の歩留まりが改善しました。その結果、安価な商品は、価格品質両面で競争力が日本製を上回るようになりました。

農作物については中国の環境は変わっていないような気がします。工業製品については、日欧米の企業が中国に生産基地を移す場合、製造工程・品質管理の手法も持ち込みます。ところが、農作物については、そうではなさそうです。都市と農村の格差は、輸出品の品質にもあらわれます。安価な食材は、安価な製造工程、価格に見合う品質管理の下で出荷されるわけです。

日本も、昔はふんだんに農薬を使っていました。現在よりも劣悪な衛生環境で生産された食品を日本人は平気で食べていましたが、健康被害は発生しませんでした。今の中国と同じです。ところが、公害、環境汚染対策が進み、快適で衛生的な環境で暮らすようになった現在の日本人は免疫力が低下しました。昔は、無農薬とか無添加とかを気にする人はほんの一部で過度に神経質な変人と思われましたが、いまでは、逆です。農薬をふんだんに使った中国産野菜を平気で食べる人が変な人です。

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平史理 taira fumitoshi
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