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森を抜けて :旅する日本語
まだ仄暗い、いや、真っ暗闇の明け方に、私は異国の森を歩いていた。
なぜか。それはチェコに行くためである。
今年の2月、私はデンマークに留学をしていたが、ヨーロッパ旅行に来ていた大学の友人と、チェコで会えることになった。
デンマークからチェコまでは飛行機でわずか1時間弱だが、私が滞在する学校からは空港まで電車で1時間かかる。
何よりもその前に、15分ほどだが駅まで森を抜けていく必要があった。
真冬の明け方の森の中。ひとりで行くしかない。心細さをかかえながら土を踏みしめた。乾いた寒さが頬をなでる。
それでも、旅のはじまりの高揚感が私の背中を後押しした。闇は少しずつ朝の光に変わっている。
電車、飛行機、バスを乗り継ぎ、降り立ったプラハの空は澄み渡っていた。ホテルに着くと、友人からの置手紙があった。温泉につかったような安心感をその日私ははじめて感じた。
プラハの青空を思い出すとき、夜明けの森の空も思い出すのである。