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「高橋 優」 ~悲しみもいつか笑顔に変えられる日が来ると信じている~

 翌日から土曜日までは、
 とりあえずお休みをいただくことになった。

 治療するまでは、症状は改善に向かうはずがない。
 首はどこまでも右に回ろうとするので、
 基本的に寝ているしかない。

 首を固定していても、否応なしに回る。
 右に回ろうとするので、左手で首を抑えて何とか凌ぐしかない。

 妻もフルタイムで働いているので、
 日中は一人だが、不便なので何もできなかった。

 金曜日に母が上京することになったので、
 それまでは何とか一人で頑張らなければならない。

 朝寝坊すると、夜が眠れなくなりそうなので、
 毎朝、七時前後には起床した。

 趣味は読書だが、本を読むのも困難だ。
 テレビは最近観ない。
 
 アマゾンプライムで映画を検索してみる。
 ずっと画面を見ているのは辛いが、休み休みなら何とかいけそうな気がする。

 目的もなく、タブレットの画面をスクロールしていく。
 評価が高い「東京難民」という映画が目に留まる。

 失礼ながら、期待感なく、映画を観始めた。
 
 大学生が大学を除籍してから、
 ホストや肉体労働をしながら、
 最後はホームレスになるというストーリー。
 
 首と相談しながら、途中休憩を挟んで、観終わった。
 エンドロールをバックに音楽が流れる。

 聞いたことのない声だ。
 最近は、ミスチル、福山雅治以外聴かないので、
 全く知らない歌手だった。

 映画のストーリーと歌詞がマッチして、
 さらに今の惨めな自分の心境などが折り重なる。

 気づいたら、涙がこぼれ落ちてきた。
「始まりも終わりも知らされず誰もが今を歩いている」
「巡り合う命の繋がりを人は愛と呼ぶ」
「いつか帰るべき故郷を探し続ける旅人」
「生まれてくるときは皆一人 息絶えるときも一人」
 
 始めて聴いた曲だったが、
 言葉が胸にさっと沁み込んでいく。

 調べてみると、歌い手は「高橋 優」さんだった。
 曲名は「旅人」

「悲しみもいつか笑顔に変えられる日が来ると信じている」

※8話の副題
 高橋優さんの「旅人」の歌詞の一部です。

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