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あがき続けるなかで気付けた「自分らしさ」|中山桜さん 写真家 #アートをしゃべろう

写真家・中山桜さんと「アート」についておしゃべり。フィルムカメラで写す作品と、その飾らない人柄で人気を集める桜さんの写真のテーマは「あがき」。今も昔も、あがき続けるなかで気付けた「自分らしさ」と、心の支えになっているアートとは?

中山桜(なかやまさくら)
沖縄県久米島町出身、東京を拠点に活動する写真家。フィルムカメラで撮る人物写真をメインに、ミュージシャンのアーティスト写真やライブ撮影、メディア関連のポートレート撮影などを行う。今年4月には、自身のプロジェクト「どんな部屋」の写真展を東京・原宿で開催。お酒が好き。
Instagram https://www.instagram.com/rarara_camerara/

桜さんの作品
桜さんの作品

はじまりは、おばあちゃんからもらった「フィルムカメラ」

━━現在写真家として活躍する桜さんですが、「写真」にハマったきっかけは?

中山桜(以下、桜):大学生のときに、おばあちゃんからフィルムカメラをもらったのがきっかけでした。ちょうど就活が終わって暇だったのと、何か新しいことを始めたいなと思っていた時期だったので、なんとなく「写真でも撮ってみようかな」って。

桜さんのおばあちゃん

でも、写真で食っていこうみたいな考えは全くなくて、そもそも仕事にしようとも思っていなかったんです。単純に、何かでチヤホヤされたかった(笑)。

━━(笑)。そこから仕事になるまでにはどんな経緯があったんですか?

桜:インスタグラムに写真専用のアカウントを立ち上げたんです。当時は、誰かに言ったら笑われそうな気がして、友達には秘密にしていました(笑)。それが今使っているアカウント(@rarara_camerara)なんですけど。そのアカウントを通じて撮影の依頼をいただいたり、写真を撮っている友達ができて一緒に展示をするようになって、現在に至ります。

元々はチヤホヤされたくてはじめた写真だったけど、色々な仕事をしたり、写真を撮り続けていくうちに「自分めちゃくちゃ向いてるな」って。自画自賛だけど「桜が撮った写真が一番いいな」って、いつも思ってるんです。

━━桜さんが、写真を撮る上で心がけていることは?

桜:一言でいえば「可愛く撮ってやるぞ!」という気持ち。ここでいう“可愛い”は、その人の良さや“その人らしさ”を引き出すという意味ですね。
やっぱり自分も写真を撮ってもらったときに、盛れているとテンション上がるし、逆に盛れてないとテンション下がるじゃないですか。前提として、撮られた人がテンションの上がる写真を撮りたいなと思っています。なので、事前に相手がどういう角度や雰囲気が好きなのか、好きな音楽や映画など、ある程度の情報は知っておくようにしています。自分らしい写真を撮るのはもちろん大事だけど、可能な限り相手に寄り添いたいですね。

ずっと変わらない、人生のテーマ「あがき」

━━桜さんの写真のテーマ「あがき」は、どんなところから生まれたのでしょうか?

桜:大学の卒業制作で作った写真集のタイトルが「あがき」だったんです。“若いうちは人間くさい苦しみとか泥くさいことを経験して、思い切り足掻こう”って意味でつけたんですけど、それから5年くらい経った今も、まだまだ足掻いている自分がいるんですよ(笑)。
でも、そういう「あがき」をこれからも大事にしていきたい。みんな本当はいやらしい事とかセコい事も考えているのに、それを隠して、真面目に見せかけてるじゃないですか。でも、まぁそこも可愛くない? みたいな。そこも愛しちゃおうぜみたいな(笑)。

桜さんの作品

媚びないこと=自分らしさを大切にすること

━━桜さんは、さまざまなチャレンジをしつつ、どんなときでも自分らしさを表現しながら生きているように見えます。「自分らしさ」を保つために
大切にしていることはありますか?

桜:んー、まずは「媚びないこと」ですかね。媚びない=生意気な態度を取るとかではなく、自分を大切にするという意味です。自分を大切にしてくれる人とだけ一緒にいたい、仕事をしたいと思っています。
たとえば、私の場合、基本フィルムカメラで撮影をしているので、初めての依頼で「デジタル撮影してください」って言われたら、それはお断りしちゃいますね。もちろん、いつも仕事をしている人のお願いだったり、ライブ写真のようにデジタルが必要な場合はやらせていただくんですけど、最初の依頼で言われてしまうと「それって桜じゃなくてもいいのでは?」と思ってしまう。この世の中に自分じゃなきゃダメなことなんてないとは分かっていても、桜じゃなくてもいいことは極力したくないなって。自分を大切にしてくれない人と仕事をしたって、自分らしさを失ってしまうだけなので。

━━たしかに、そういう線引きをしておくことってすごく大事ですよね。

桜:そうそう。そういうスタンスでいると、だんだん仕事の依頼も自分に合うものだけになっていくと思うんですよね。たとえば、いつも一緒に仕事をしている編集者さんやクライアントさんは、桜に合いそうな仕事を選んで依頼してくれる。そこには信頼関係があるから、その人が依頼してくれた撮影なら、撮影する前から相手のことを好きになるという確信があるし、実際に撮影したら必ず好きになる。写真をはじめた頃、大人から「仕事は選んじゃダメだよ」なんて言われたこともあったけれど、自分の中で軸を持って、好き嫌いを決めておいて良かったなと今ではすごく思っています。

桜さんの作品

━━もし、自分らしさを見失いそうになったときは、どうしていますか?

桜:そういうときも、しょっちゅうありますよ。実は、こう見えていつも心が不健康なんです(笑)。落ち込んだり悩んだりしたときは、思ったことをメモにバーッと書き出します。それを冷静な気持ちになってから見返して、フォトコラムとして作品にしたりすると、スッキリしますね。
あとは、なかなか難しいけれど、あまり人と比べないようにすること。他人ってめっちゃ気になるけど、結果自分がよければ何でもいいんですよね。そういう風に考えると少し気持ちが楽になると思うんです。

絵画鑑賞はひとりで、原画がすき

━━桜さんが考える「アートの楽しみ方」についても教えてください。

桜:Casieさんの取材だからとか関係なく「絵」を観るのがすごく好きなんです。ひとりでふらっと知らない人の展示に行くこともあるし、絵描きさんと友達になることも多いですね。でも、写真の展示には全然行かないです。

━━写真の展示へ行かないのはなぜ?

桜:んー......、興味がないんですよね。写真は自分で撮るのが好きなだけなので。絵は自分で描けないし、原画を観ると「わー描いてある! すご
い!」って素直に感動する。「どこでこの絵を描いたんだろう」とか「どんなストーリーがあるんだろう」とか、想像しながらじっくり観るのが好きなので、基本的にはひとりで観に行くことが多いですね。
中でも、メッセージ性のある作品が好きで、作者さんから作品の話を聞くのがすごく好きです。それがたとえ闇のある内容でも、むしろ面白いなと思ってすごく惹かれる。推しのアーティストは、SNSで見つけたりすることもよくあって、フォローしつつ展示が開催されるのを待っていたりします(笑)。

━━桜さんの自宅に飾っている絵はありますか?

桜:友人でもあるアーティスト、ニロタカユキ君に描いてもらった似顔絵と、unomoriさんに描いてもらった桜の絵を飾っています。どちらも推しのアーティストさんなので、部屋にあるだけで、すごく心が落ち着く。

ニロタカユキさんの描いた似顔絵
unomoriさんの描いた桜

こういう話をしていたら、なんか私も絵を描いてみたくなってきました。名前を隠して、いつかCasieさんに応募してみようかな......。

※このあと本当にキャンバスと画材を買っていた桜さん。いつかCasieデビューする日が来るかも?


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