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とある書店、どう売上を伸ばしますか?【コンサル面接解答集/戦略立案】
はじめに
ケース面接対策道場のケース侍田中です。
ケース面接対策でうまくいかないことが続くと、「自分は頭が悪いんじゃ…?」と自己嫌悪に陥ってしまうことってありますよね。
私も、以前そうでした。
自分がケース面接対策で苦労した経験から、わかりやすい丁寧なケース面接対策のコンテンツを発信しています。
この解答例は良問を選んで、解答したものです。
実際の面接のディスカッションを想定して作られており、各ポイントも記載されています。
一連の流れ、考え方をぜひケース面接対策の参考にしてみてください。
前回の【フェルミ推定】の記事はこちら↓↓↓
問題2:とある書店の売上向上戦略
面接官「とある書店の売上向上戦略を考えて頂きたいと思います。
そうですね、国内の大手書店を想定頂きたいと思います。」
(1)前提確認
田中「承知しました。大型書店ということで紀伊國屋、ジュンク堂、後は代官山にもある蔦屋書店を思い浮かびましたが、一旦、紀伊國屋を想定し、紀伊國屋の全社の売上向上で、社長に提案することで進めてよいでしょうか。」
面接官「はい、いいですよ。」
田中「有難うございます。他には、売上の期間と目標ですが、中期経営計画を物差しにて5年で1.2倍増を目指すことでいかがでしょうか。」
面接官「はい、その想定でよいです。他に質問なければ、5分で考えてもらって、発表をお願いします。」
田中「はい、こちらで検討致します。」
★ポイント
・お題を言われていきなり思考をせず、対象となる主体や市場を擦り合わせにいこう。
・実際のケース面接でも、今回の様にあえて具体的ではなく抽象的なお題を出し、候補者が面接官と認識を擦り合わせが出来るところから見ている
・今回は、まず書店の具体企業の認識を合わせた。
・また、目標(期間、値)で方向性が大きく変わるため、こちらの認識合わせが必要になる。注意していないと流してしまうので気を付けよう。
―――5分後――――
(2)結論と結論に至る検討事項を述べる
面接官「いかがでしょうか。」
田中「はい、発表します。
紀伊國屋が5年で1.2倍増の売上向上を目指す打ち手として、
書店を欲しい本に出合える場から、共通の趣味に出会える場として再定義して新たにイベント料やコミュニティ運営サービスを展開していく
のがよいと考えました。
この結論に至る、紀伊國屋の取り巻く環境、戦略の方向性、打ち手へと説明していきます。」
★ポイント
まず結論から述べ、そのあとに結論に至る検討事項について述べていこう。
これから何を説明していくか面接官の頭の中に目次を作るイメージだ
(3)取り巻く環境(=現状分析)を述べる
田中「紀伊国屋の売上は”①店舗数×②1店舗当たりの売上”と表現出来ます。
まず、”①店舗数”増は劣後すると考えました。
理由は、収益性の高い立地には書店は既に立っていることが考えらるからです。また、EC、電子書籍の台頭が強く書店の売上は縮小していることや、加えて、初期投資代も多額に要すると想定されので、①店舗数増は劣後と考えました。
次に、“②1店舗当たりの売上”は”③販売数量×④客単価”と分解出来ますが、”③販売数量”の伸び代は、やはりEC、電子書籍(競合)の台頭が強いと考え限定的かと考えています。紀伊國屋の現在の取り組みとして、書店内でお勧め書籍をポップを作り来店者の目を引く活動も既にされていることからも”③販売数量”を伸ばすことは限定的と考えます。
また、”④客単価”も小売店の価格付けの自由度は限られると想定し、クロスセルを考えてもブックカバーや小物の販売も現状されていると考え限定的と考えました。」
(4)大方針(戦略の方向性)を述べる
田中「このように書店市場を取り巻く環境はEC、電子書籍と言った競合の台頭が強く書店全体として苦しい状況を考えます。
そのように考えると、従来型の本を売って儲ける書店ビジネスの延長線上での目標達成は難しいと考えました。
そこで、書店のケイパビリティを活かし、EC等と競合しない新しい価値提供で目標達成の活路を見出す必要があると考えました。
書店のケイパビリティを考えると、
①リアル店舗である事、
②立地が悪くない事、
③多ジャンルの情報(書籍)を扱っている場である事、
④顧客情報、
⑤売れ筋の書籍の把握、
が考えられます。
これら強みを活かし、書店を欲しい本に出合える場から、共通の趣味に出会える場として再定義し付加価値を出すのが良いと考えました。
★ポイント
目標値(期間、規模感)と取り巻く環境(ビジネスの特徴、競争環境)を踏まえ、検討の方向性を定める。
今回は、書店市場が成熟していること、書籍を代替するEC、電子書籍の競合が強いことから、周辺事業への進出を大方針(=戦略の方向性)としてみた
(5)打ち手を述べる
例えば、紀伊國屋でスペースを作って、釣り、料理、英語学習等のイベントを開催し趣味や関心が近い人が出会える場の提供が考えられます。イベント来店時にも書籍を手に取り、書籍の売上増も狙えると考えます。
更に、特定の趣味で集まった人たちのコミュニティ(サロン)を書店が運営して会費を収受するマネタイズも視野に入ると考えます。
また、共通の趣味で出会える場の提供として恋愛市場にも進出出来る可能性もあると考えました。
以上により、紀伊國屋のリアル店舗で多ジャンルの情報(書籍)を扱っている書店の特徴を活かした新たなマネタイズポイントを作り、EC、電子書籍と差別化することで、5年で1.2倍増の売上向上を図りたいと考えます。
(6)面接官との議論で考えを進める
面接官「有難うございます。いくつか質問させて頂ければと思います。
仮に、紀伊國屋でイベントやコミュニティ運営サービスを展開した場合ですが、ターゲットはどういう人を想定していますか?」
★ポイント
初期アウトプットでは、解像度が粗い箇所は深堀されうる。特にターゲットは面接官も確認したいポイントになるので、初期アウトプットで漏れた場合は、補強できるよう心づもりしておこう。
田中「そうですね、共通の趣味・関心で誰かと繋がりたく、かつ、その繋がりのためにお金を払いたい方がターゲットになりますので、20、30代の独身の年収600万円以上の中所得以上の方か、リタイアしたシニア層がよいかと思います。」
面接官「独身の中所得以上の方、シニア層どちらをターゲットにした方がよいと考えますか?」
田中「そうですね、お金に払う余力、他者と繋がりたい欲求、サービスへの抵抗感の少なさ、ボリュームを考えると独身の方を優先します。
シニア層は年金暮らしで経済的な余裕が無くなってきたり、新しいサービスに対して若い世代よりも抵抗感が強めと考えました。」
面接官「想定してるコミュニティ運営サービスは、紀伊國屋が単独でするのでしょうか?」
田中「サービスのイメージとしては最近出てきたオンラインサロンの様なイメージです。紀伊國屋はサロン運営のケイパビリティを現在、有していないのでノウハウを持っている外部企業と連携するのが現実的と考えます。」
面接官「その際の留意点は何でしょうか?」
田中「そうですね、顧客情報(顧客リストや顧客属性や嗜好性)を外部の協力企業が持つことになるので、そちらの対応かと思います。
需要の見定めの為に実験的な試みで外部企業に運営を依頼する形でよいかもしれませんが、需要が一定あると見えた後で本格的にサービスを始める際には自社で内製化、あるいは、紀伊國屋の規模だったらサロン運営が出来る企業のM&Aも視野に入れるべきかと考えます。
やはり顧客情報(顧客リストや顧客属性や嗜好性)を抱えいた方が、顧客接点やニーズ収集で後のサービスの改善や新規サービスに繋がるので、顧客情報は自社で抱えたいところです。」
面接官「分かりました。新サービス以外にも実店舗の紀伊國屋として書籍の売上を上げることは出来なさそうですか?」
★ポイント
・考えの振れ幅を試すため、面接官から、あえてこれ迄考えていない方向性での検討を問われることも多い。
田中「そうですね、月並みですが、例えば、地域毎に売れ筋の書籍を分析し、書籍の品揃えや、どの書籍をどの棚、どの位置に並べるかの見直しでしょうか。あとは、テレビや話題に上がっている本を押し出すとかでしょうか。」
(7)他には?
面接官「さすがに、それは既にされていますよね。他には?」
田中「(うっ、なんだろう…汗)そうですね、思考時間を30秒程頂けないでしょうか。」
面接官「どうぞ」
★ポイント
一定の納得感を持った回答が難しい場合は、考慮時間をもらい仮説を立て議論していこう。焦って思い付きベースで話してしまうと突っ込まれ続け引き返せなくなる。
―――30秒後――――
田中「お待たせしました。考えましたのでお伝えします。
他の実店舗での書籍の売上を上げる取り組みとしてはECと戦わずに乗っかっていくのがよいかと考えました。
私はAmazonが好きでよく購入していますが、2,000円を超えるような高めの書籍は一度中身を見て購入を決めたいと思ったりします。
そういった心理を突いて、例えばAmazonで人気やレビューの高い商品を優先して並べることで、紀伊國屋に来店して中身を確認してもらってその場で購入する流れを作るのがありだと考えます。」
面接官「なるほど、他には?」
田中「(う、まだくるのか…汗)そうですね、あとは紀伊國屋の店員さんでどこまで出来るかですが、本のコンシェルジュの様な方で案内するのもありだと考えます。
ECでは口コミのレビューや、ECサイトのアルゴリズムで書籍が出ますが、人の感情や気持ちまでに踏み込んだ書籍の提案はリアル店舗の店員に聞いてもらって提案された方が顧客の納得感がありそうです。
イメージとしては、単に例えば“歴史小説はどこですか?”と顧客がある程度読みたい本を聞いて紀伊國屋の店員さんが機能的に案内するのではなく、顧客が“思い切り泣ける本”、“元気になれる本”といった心情面で充足したいニーズを満たすお勧めの書籍を案内するコンシェルジュのイメージです。」
面接官「なるほど、他にはどうでしょうか?」
田中「(ぐいぐい来るな…)そうですね、視点を変えて紀伊國屋はこれまで主に2C向けの書籍を販売していたと思いますので、2Bで考えてみたいと思います。
アイデアベースですが、紀伊國屋は売れているビジネス書籍や実用本を知っているので、例えば、企業向けに研修サービスの様な形で入り込める余地はあるのでないでしょうか。
例えば、企業にお勧めのビジネス本を紹介して、更にロジカルシンキングを学ぶ研修もセットで販売していくようなイメージです」
★ポイント
・“他には?“の質問を回答しても、さらに“他には?”とグイグイ質問されることも多い。苦しくなったら視点を変えていこう。
面接官「そう考えると、競合は既存の研修企業になりますよね。その企業とどう戦っていくのでしょうか?」
★ポイント
・新規事業の話になると、競合との戦い方や、なぜ、今までやっていないのか?はよく問われる。心づもりしておこう。
田中「そうですね。確かに、ご指摘を受け、研修コンテンツや顧客との信頼の差は大きく、真正面から既存の研修企業と戦うのは難しいと考えました。
書店としては例えばロジカルシンキング本の著者のセミナーで研修を売ることは考えられますが、体1つの著者の稼働に上限があり、売上もげるため、紀伊國屋位大きな企業にはフィットしないかもしれません。
だとすると、紀伊國屋としては、どの本の種類や、どういったビジネス本が売れているかを把握しているケイパビリティを活かし、例えば、ビジネス本の要旨や書籍に効果がある読み手(ターゲット)を纏めた法人向けWEBサービスを作り、企業に入り込んでいくのがあり得ると考えます。
そして、社員や人事が気に入った書籍は、そのまま紀伊國経由のECで買えるようにします。また、もう少し踏み込んで、新入社員や中途採用の方向けが読むべき本といった企業の育成担当の方の悩みに踏み込んでもいいかもしれません。
その上で、研修のニーズがあったら、自社でするよりも研修企業と協業し、送客料をもらうのがよさそうです。」
面接官「今のお話は紀伊國屋のマネタイズは法人用WEBサイトでの紀伊國屋のお勧め本の販売料と研修会社への送客料ですよね?
あまり大きく稼げるイメージが湧かないですが、どうでしょうか。」
田中「そうですね、実際マネタイズに疑問は残りそうです。
実際、こういった法人に書籍を紹介するWEBサイトのサービスを展開するとなると、WEBサービスの利用自体に価値がないと収益が大きくなるのは難しいと考えました。
その意味で、WEBサービスの可能性を考えますと、法人の社員向けに本1冊丸々読まなくともよい5-10分程度の短さでエッセンスに書籍の要旨を凝縮させて、価値を出して法人から利用料を頂くのはありそうです。
そのうえで、人事への新入社員・中途社員へのお勧め本や研修会社への送客出来るとよいかと考えます。」
★ポイント
・実際、深堀が続くと「これであってるのかな?」と不安に思うこともあるが、諦めずに考えを出し続けることも大事。
・粘り強く考える姿勢そのものが評価されうる
面接官「そうですね、本の要旨サービスはフライヤーといって他企業がやっているので需要はあるかもしれません。一旦、今日はここまでにしたいと思います。有難うございました。」
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