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ハーバード流交渉学のお話し①
今回は「交渉」について書き記します。
個人でも企業法務でも契約は誰しも何かしら経験されるかと思います。交渉は契約の準備段階で用いることのできる実に有効な技術です。謎に契約の話を持ち出しましたが交渉学の考え方は契約に限定されない汎用的な知識•技術なので、きっと役に立つと信じてご一読ください。
早速内容について見てみましょう。
1)交渉とは
本稿で扱う交渉は、「利害関係にある当事者間で、双方合意を目的とした協議の上で取り決めを交わすこと」を指します。また、本稿ではHarvard Methodと呼ばれるハーバード学派により体系化された交渉学の基礎理論をご紹介します。
2) ハーバード流派の交渉学とは
①交渉の分類
まず、交渉の分類について基本的な考え方を以下に整理しました。
ここでは便宜上、配分型と統合型で分類します。
![](https://assets.st-note.com/img/1686218668945-mv3HGoQXnG.png?width=1200)
利害関係のある当事者心理としては利害の押し合いへし合いで揉みくちゃ状態であり、協議はもはや最初から喧嘩腰な場合も多いです。
そうなると見事に「配分型」交渉の戦いに突入します。
一方で、ハーバード流派が標榜する基本的な考え方は「統合型」です。
交渉の結果として当事者間の相互利益が生まれることを念頭に置いています。相手を完膚なきまでに圧倒する、という考え方はそもそも持っていません。平和的な解決をしましょう、そのために話し合いをしますよ。という考え方です。
➁配分型から統合型への変換
とは言うものの実際に配分型から統合型へ交渉を転換させるのは難しいものです。
そこで、ハーバード流派は以下のような格言を心に銘じています。
「利害と立場を明確に切り分けること。共通の利害にのみ着目してズレを正しく共有できれば統合型交渉の余地が生まれる。」
これは有名な考え方で、Roger FisherさんとWilliam Uryさんという学者が記した”Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving In”という名著に「Interests vs. Position - Focus on the “mutual interests”, not on the position.」と見事に簡潔な文字列で気持ちよく整理されています。かなり昔の著作ですが興味のある方は是非読んでみてください。
➂交渉におけるフェーズ
ハーバード流派の交渉はフェーズが以下の通り2つあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1686218668280-nuA8sRNanQ.png?width=1200)
ザックリとそれぞれの概要を以下に整理します。
文字列だと何が何やらで何も伝わらないと思いますので詳細は次回に記載します。一旦、へえ、こんなもんか、と読み通しておくのがよいと思います。
【価値生産】
交渉で得る可能性のある価値全体(相手が得るであろう価値も含む)について把握する(BATNA)
次に、交渉で得られる価値全体と、当事者が持つ「代替価値」を把握/比較する(BATNA)
そして次に、相互利益を前提とした場合に全体の中で当事者がそれぞれ得られるであろう価値の上下限を把握する(ZOPA)
「価値分割」
価値生産で創出された利益の当事者間の分配比率を最適化する
3) 備考
ハーバード流交渉学は価値創造と分割に主眼を置いた手法であり基本的には相互利益を創出しますが、交渉の結果合意したものであってもハーバード交渉のプロセスをもってして「公平性」を担保するものではありません。
次回以降で詳述しますが価値分割のプロセスにおいて価値分割比率が5:5になることは稀です。ここらへんはもはや文字が呪文のように見えるくらい意味不明だと思いますが、理解度を深めると、あーなるほど。となるので次回以降をお楽しみにお待ちください。