78. 夏から秋にかけて
実家のオカンが来ていた間、ほとんど作業的に進捗はなかった。そう考えると、いかに日々私たちがここにこもってもそもそやっているか。でもそれにオカンを突き合わせるのは可哀想。雑踏は避けながら、ぼちぼちとあちらこちらに連れ出していく。
オカンとしても、私たち二人(と犬猫たち)がこの片田舎でどのような生活をしているのか知りたかったらしい。
日本のようにはいかない限られた食材でどうしているのか、が一番気になっていたらしい。
ここ数年、ほぼ一年中魚市場などで手に入るようになったサワラを使って、しめ鯖ならぬしめサワラを作って見せた。
タイ産の米粉を使ってお団子を作り、みたらしのタレをベースにしたごまだれ、ピーナッツだれ、くるみだれをかけたり。
当然ちゃ当然だけど、日本と同じ生活をしようとするととんでもない生活費になる。それが出来てしたい人はすればいい。私は特にそこまで必要性を感じていない。そこにある材料でそれなりに作れればいい。代用できるものでできるのであればそれで十分。
オカンは本来なら数ヶ月滞在する予定だったのだが、何せ高齢。そして慣れない標高の高さに健康不安を感じたのか、体調を崩す前に帰ると言って1ヶ月半で帰国した。まあ、それで満足したのだからいいでしょう。直後から、日本は第5波を迎えることになる。うん、ギリギリのタイミングで帰れてよかった、とも思う。
そんなこともあって、雨季の夏はあっという間に過ぎ去っていった。
お見送りでメキシコシティまで行って帰ってくると、クマ夫も私もどっと疲れが出てしまい、数日のんびり休暇を取ることにした。
さて、台風も去った(失礼な)ことだし、仕事再開。
クマ夫は一階の作業部屋とバスルーム、クロゼットを仕切る壁を石膏ボードで作る。ここで少し問題発生。ちょうどその真ん中に2本立つ柱が、想像よりも少し弱く、壁で閉じる前に少し補強する必要がある、とのこと。色々調べたり、アドバイスをもらったりして結局、鉄板などでコルセットのようにしてがっちり固めて補強した。この部材を揃えたり施したりするのに2ヶ月。その間も、レンガを積んで石膏ボードを当てる用意をしている。
私はといえば、リビング、ダイニングエリアと少し下がった作業部屋の「塞がない仕切り」のための部材を作ったり、元本棚にしていたみかん箱(みかん箱!)を解体して、キッチンに置く可動式物入れ棚にしたり。
雨が降らない日が増え、降る時間も短くなり、段々と秋に近づいていく。
去年一昨年と見かけた、羽の下半分がガラスのように透明になった蝶々を今年は見ていない。一匹も見ていない。
その代わり、トンボとバッタが今年は多い。
花も咲き始める。
オレンジ色のコスモスが今年は多い。
多い、というよりもそれだらけだ。
去年も咲いていたが比じゃない。あたり一面、黄色オレンジ色。
あまり知られていないことなんだけれど、コスモスの原産地はメキシコ。咲く量には年や天気によって差があるのか。今年はすごい咲き乱れている。
最初の頃はきれいだきれいだと摘んだりしていたのだが、オレンジ色に飽きてきてしまう。ピンクや白のコスモスがみたい。
と、ふとした機会のお出かけに、隣の村にいく道にピンク白の群生地があった。後日ここを再び通るクマ夫に頼んで、ごそっと種ができているものを持ってきてもらった。家の周りに蒔いたので次の秋が楽しみだ。
オレンジ色のコスモス以外によく見かけるのがこれらのお花。
紫色のは残念ながらラベンダーではないので、匂いはしなかった。でも可愛い。
一年の3/4ほどが乾季でカッサカサなので、草花は雨季をじっと待っている。雨季の雨でじっくりたっぷり水分を吸い込んだ種が一気に育ち、花を咲かせる。庭のバラもいい色に咲いてくれる。9,10月はどちらを向いてもコスモス、Casa Arkadiaも花に埋もれていた。