21. お水は大切

私は建設に関しては全くの素人です。知識０です。日本でもメキシコでもパプアニューギニアであっても、綺麗に０。
世間の皆様はどうなんでしょうね。それに関わる方、建設を経験された方以外は限りなく０に近いのではなかろうかと勝手に思っておりますが。

よくヘススたちが「水が足りないから作業進められない」と、地域の水担当者に言ってバルブを開けてもらっていました。何それ。

Arkadiaの建設地は都会を形成する７市町村の端っこの端っこ。都市部にある上下水道はここにはありません。
水は、Arkadiaの前の道を1km西に登ったところにある個人宅の井戸からパイプを通って届いています。うちにたどり着くまでに数軒、うちを通り過ぎて東側に数軒、そこから南に行ってまた数軒。井戸からはこんこんと湧き出ているので各地点にバルブがあり、「もううちは貯水槽貯まった」となると直近バルブを占めて、他の家に行きやすくしてるんだとか。またその逆も然り。「うちもう水ない！早く貯めなきゃ」という時は、家のすぐ下のバルブをしめ、家に水が来やすくする。
今のところ使用者数が少ないためルールというルールがないので、誰かが勝手に閉めればその下には水がいかなくなる。閉めたり開けたり。

左端が水源、AはArkadia。水は左から右に流れている。

で、メキシコには変な法律があるらしく。
自分の敷地内を掘るのは別に勝手にすりゃいいけど、水が出たらそれは差し止められてしまう。でも。でも、それを自分だけで占有するのではなく、地域住民と共有するのであれば「公共」とみなされて、差し止め対象にはならない。先程のバルブについても、水源所有者がバルブを閉め切って下流の「共有者」に不便が出た場合、共有者はそれを役所に通報して「差し止め」にすることができる。差し止めはみんな不便になるし、水源所有者のポンプや貯水槽も使用できなくなって本人ともども大変になる。ので、バルブは閉めちゃいけない。
つまり、仲良く使ってる分には行政は目を瞑るからね、ということ。
この地域はみんなで話し合った結果、水の共有者は「地域水組合」と契約する必要がある。契約金5000ペソ（日本円で約28000円）、かなり高額。でも、毎月の使用量は一律100ペソ（約550円程度）で使い放題。私たち2人だけだと都市部の水道より割高になるが、今後畑仕事や植木などが増えるので、一律というのは嬉しい。

さて。でも、水の流れの仕組みを理解してない「共有者」がバルブを占めたり開けたりすることで、下流の水を必要としている人に届かない。水が来ないとわかったその都度、ヘススたちはパイプを辿って数カ所あるバルブを開けに行く。

水がないと建設ができない。セメント練るには大量に水がいる。セメント練ってブロック積んだら、その後数日は水をバシャバシャかけてやらないとちゃんと強度が出ない（知らなんだ〜）。壁も床も、セメントを使っている部分は全て、その後数日〜週は水をバシャバシャかけてやる。そのために水が必要。一日の終わりに道具を洗うにも水。なのでヘススたちが現場に最初に持ち込んだのが1000L入るポリタンク２つ。別に綺麗である必要はないので使いまわした感じのちょっとヨレたもの。そこに常に、道路のパイプにつけた取水栓で水を引っ張ってきて貯めて使う。
　地域水組合とは建設着工前に契約を済ませておいた。

使い古しのへなちょこポリタンク

近隣は貯水タンクをどうしているんだろう。
隣のホアキンさんも、その隣のエクトルさんも、自分の家のしたに地下貯水槽を作って、そこに水を溜めている。Arkadiaから東南に500m離れたクラウディア/セサールの家は、地上に貯水タンクを２つ置き、レンガで囲っている。
クマ夫と私は「地上面積を有効活用するため」地下貯水槽を作ろうと思っていた。設計図には、道路から一番離れた場所に家、そこまでの間に地下貯水槽とある。ヘススたちに建設を依頼する前の夏、ショベルカーを使って貯水槽を置く場所を掘り下げた。2.3m掘り下げないとキチンを埋められない。が。私たちの土地は岩が多く、そこも1.5m地点で岩にぶち当たってしまった。
色々検討した結果、家屋の北側に直径高さともに約2mの貯水槽を２つ設置し、セサールたち同様にレンガで囲おうということに。でもそれはまだまだ先の話。

家屋の建設が終わりヘススたちが撤収して最初に私たちがしたことは、仮の貯水タンク購入。彼らが使っていたへなちょこポリタンクよりまともな柵付きが手に入るまではとりあえず、室内に４個の250Lタンクを置き、水で満たした。
ぱっと見、いけないものを作っている場所にも見える（メキシコではこういった人里離れた場所で麻薬の精製をしていることが多く、たまにニュースで検挙された映像を見かける）。