電視観望・天体写真撮影システムの機材選び➃~天体カメラ編
■天体専用カメラについて
基本的にはセンサーサイズが大きいほど高性能だと思って下さい。また、1画素当たりの面積(ピクセルサイズ)が大きいほど高感度の画質が良くなります。従って同じセンサーサイズなら低画素数の機種が高感度の性能が良い。暗い対象の天体撮影にとっては最重要な性能と言えます。
しかし、画像として見た場合、高画素の方が精細に見えますし、ある程度のトリミングしても画質が劣化し難いです。この相反した性能のどこを取るかは対象天体や焦点距離、センサーサイズ、口径による分解能、鑑賞サイズなど人それぞれの考え方にもよります。
天体写真撮影の場合は長時間露光を行うので、冷却式カメラがよいでしょう。
ASIAIRでの制御を考慮すると現状はZWO社製カメラ一択です。
ノートパソコンとSharpCapを使うならPlayer-One社製やSVBONY社製カメラなども選択可能です。(SVBONYのSC001とSC311はWiFi機能内蔵でスマホに静止画や動画を送信出来ますが、アプリにライブスタック機能が無いので電視観望には使えません。現状、SharpCapでも使えません。)
■天体に合わせてカメラを選ぶ
➀基礎編で書きましたが、カメラを選ぶときに重要な指標になるのがセンサーサイズ倍率です。ターゲットとなる天体に最適な合成焦点距離になるようにカメラのセンサーサイズ倍率を考慮して天体カメラを選ぶことが重要になります。
各カメラのセンサーサイズ倍率はフルサイズ1倍、APS-Cサイズ1.5倍、4/3サイズ2倍、1型2.7倍、1/1.2型3.24倍、1/1.8型4.86倍、1/1.9型5.13倍、1/2.8型7.56倍、1/3型8.1倍になります。
大きさの極端に違う天体を同じ鏡筒で写す場合は、センサーサイズの違う天体カメラを複数用意して天体に合わせて交換すると良いでしょう。
(惑星撮影の場合はピクセルサイズ2.9μmのカメラが使われることが多いです。その場合、鏡筒は高品位なバローレンズで合成F値をF20〜F40ぐらいにする場合が多いようです。)
■バックフォーカス(フランジバック)について
望遠鏡にフラットナーやレデューサーなど補正レンズを装着する場合、もしくは鏡筒のドローチューブ内かそれより後に補正レンズが内蔵されている場合、ドローチューブ繰り出し量が少ない鏡筒の場合のいずれかは、各カメラのセンサー面~望遠鏡後端までの間隔は55mmにする必要があります。このバックフォーカスがおおよそ55mm(±2mm程度は許容範囲)でないと各補正レンズの性能が活かせません。
ZWOの場合17.5mmと12.5mmのカメラがあります。6.5mmmは付属延長筒が11mmなので、それを付けると17.5mmになります。従って残り37.5mmか42.5mmの長さのリングが必要です。
海外メーカーの多くの鏡筒後端はM48です。
(Askar、Sharpstar、WilliamOptics、SkyWatcher、SVBONY、Celestronなど)
一方、国内メーカーは規格がバラバラでタカハシはM54、ビクセンはM60、ボーグはM57になっていてM48に変換するリングが必要となります。
天体カメラ接続部はM42(ネジピッチがP0.75)になっていることが多いです。(ZWOのフルサイズカメラの場合はM54)
(昔のMF一眼レフのマウント規格のM42はネジピッチがP1.0なのでリング購入時に間違えないようにして下さい。天文機材ではほぼP0.75のネジピッチを使用しています。)
ZWOの冷却式カメラには延長リングが付属しています。
ZWOの非冷却カメラの場合は延長リングが付属していないので、以下の2~3個のリングが必要です。
①ZWO T2-M48-16.5 M42-M48エクステンダーリング 16.5mm
②ZWO T2-EXT-21 M42-M42エクステンダーリング 21mm
③天体望遠鏡用エクステンションチューブ8ピース(M42×P0.75)の5mmリング(天体カメラのフランジバックもしくはバックフォーカスが12.5mmの場合に必要。)
上記①〜③の3本でM48〜M42×P0.75の光路長42.5mmになります。
③はフランジバック17.5mmのカメラの場合は不要です。
①の16.5mmのリングの代わりにZWOのOAG(オフアキシスガイダー)も使えます。
②の21mmのリングの代わりにフィルタードロワー(ZWO FD-M42-IIやSVBONY SV226など)やZWOのEFWも使えます。
その他にSVBONYのSV109(24-35mm可変)を使ってM48-M42アダプタと上記エクステンションチューブ8ピースセットの15mmをつなげて光路長42.5mmにする方法もあります。
◆非冷却カラー(電視観望向け。入門者におすすめ)
ZWO ASI585MC
1/1.2型 814万画素(3840×2160)
フランジバック6.5mm 本体重量126g 61,200円
イチオシは、予算的にちょっと無理して、ASI585MCをおすすめします。
1/1.2型のセンサーサイズは鏡筒選びの幅が拡がるからです。画素数も4Kあるので60mmクラスの鏡筒で使いたいですね。赤外域の感度が高いと評判ですので、星雲を電視観望したり、撮影するにもピッタリのカメラです。ピクセルサイズは2.9μmです。
ZWO ASI664MC
1/1.8型 415万画素(2704×1536)
フランジバック12.5mm 本体重量126g 45,900円
次点はもう少し安価なASI664MCです。センサーサイズが1/1.8型で400万画素でピクセルサイズは2.9μmで1画素当たりの面積がやや大きいので高感度でノイズに強いです。こちらも赤外域の感度が高いカメラです。惑星撮影にも向いています。
ZWO ASI662MC
1/2.8型 200万画素(1920×1080)
フランジバック12.5mm 本体重量126g 22,900円
低予算の電視観望入門用ならASI662MCが金額的には無難です。
低画素ですが、ピクセルサイズは2.9μmで、それだけ感度重視のカメラで扱いやすいです。但し、センサーサイズが1/2.8型なのでかなり焦点距離の短い鏡筒が必要になります。(SeestarS30に使われているセンサーです。)
逆に小さ目の天体を狙う場合にもこのセンサーサイズを活かせます。特に惑星撮影では標準的なセンサーサイズになっています。
ZWO ASI385MC
1/1.9型 213万画素(1936×1096)
フランジバック12.5mm 本体重量120g 51,000円
世代はひとつ前のセンサーですが、ピクセルサイズ3.75μmは現世代の2.9μmより大きく、高感度で低ノイズを誇ります。(APS-CのASI2600MC PROと同じピクセルサイズ)
但し、アンプグローが発生しやすいようなので、ダーク画像とフラット画像の撮影は必須かもです。
安価に買えれば、この機種も電視観望にはかなりおすすめです。
ZWO ASI294MC
4/3型 1169万画素(4144×2822)
フランジバック6.5mm 本体重量140g107,300円
最初からいいカメラを揃えるならセンサーサイズの大きい4/3のASI294MCが汎用性があり、実績も十分なので、これ選ぶのがいいでしょう。鏡筒選びも選択肢が広がります。ピクセルサイズは4.63μmと非常に大きいです。電視観望や天体写真撮影にも活躍出来ます。
ZWO ASI678MC
1/1.8型 814万画素(3840×2160)
フランジバック12.5mm 重量126g 45,900円
DWARF3に使われているセンサーです。
ピクセルサイズ2.0μmでかなり小さいですが、高画素がお望みなら選択肢としてありかな?
低感度なので電視観望入門機としては難しいかもです。
ZWO ASI178MC
1/1.8型 600万画素(3096×2080)
フランジバック12.5mm 本体重量126g 42,900円
1/1.8型でピクセルサイズは2.4μmで、やや低感度でそこそこの解像度のバランス型です。安価に天体写真撮影するには使えそうです。
ZWO ASI183MC
1型 2000万画素(5496×3672)
フランジバック6.5mm 本体重量140g 76,600円
1型高画素低感度センサーです。ピクセルサイズはASI178と同じ2.4μmでやや扱いにくそうです。
明るい天体が対象の写真撮影向きで高画素が必要な方はどうぞ。
ZWO ASI715MC
1/2.8型 840万画素(3864×2192)
フランジバック12.5mm 本体重量126g 30,500円
1/2.8型で800万画素でピクセルサイズ1.45μmとかなり小さいので低感度で扱いにくいですが、逆にセンサーサイズの小ささを活かして、惑星や小さくて明るい天体の撮影で使われる場合があります。
電視観望には全く向きませんので、入門者にはあまりおすすめ出来ません。
◆冷却式カラー(長秒露光撮影向け)
天体写真撮影で長時間露出をかけるにはセンサーの熱ノイズを軽減出来る冷却式カメラがいいでしょう。
ZWO ASI2600MC Pro
APS-C 2600万画素(6248×4176)
フランジバック17.5mm 本体重量700g 230,000円
冷却式カメラにどうせ高額を出すなら、頑張ってAPS-CサイズのASI2600MC Proが手が届く範囲だと思います。これを買って置けば当分不満はないでしょう?
ピクセルサイズは3.76μmです。
尚、天体写真を本気で取り組もうと思った方にはモノクロ版(ASI2600MM Pro)をおすすめします。
また、ガイドカメラ内蔵(ASI220MM-Mini相当)のASI2600MC Duoもあります。
さらに加えてASIAIRの機能も内蔵したASI2600MC AIRもあります。(配線が大幅に減らせます。)
ZWO ASI071MC Pro
APS-C 1600万画素(4944×3284)
フランジバック17.5mm 本体重量640g 170,300円
お手軽価格?のAPS-Cサイズの低画素版です。ピクセルサイズは4.78μmと下のASI294MC PROよりも若干面積が大きいです。電視観望にもバッチリです。
ASI2600MC PROとのピクセルサイズ差は1μmもあります。画素数は1000万画素少ないですが、感度やダイナミックレンジを取るか画素数を取るか悩みどころです。ASI2600MC PROは世代が新しのでゼロアンプグロー回路が組み込まれています。ASI071MC PROは256MBのDDRⅢを搭載して転送遅れによるアンプグローを押さえていますが若干及びません。
ZWO ASI294MC Pro
4/3型 1169万画素(4144×2822)
フランジバック6.5mm 本体重量410g 153,300円
冷却式でも定番は4/3サイズのZWO ASI294MC Proです。センサーサイズと画素数のバランスがいいです。ピクセルサイズ4.63μmとASI2600より大きいです。但し、センサーがやや古い世代になりました。
ZWO ASI533MC Pro
1型 900万画素(3008×3008)
フランジバック17.5mm 本体重量470g122,600円
低予算で冷却式ならASI533MC PROがバランスが取れていておすすめになります。但しアスペクト比が1:1の正方画像とやや特殊です。ピクセルサイズは3.76μmとASI2600MC PROと同じです。
ZWO ASI2400MC Pro
フルサイズ 2400万画素(6072×4042) フランジバック17.5mm 本体重量700g 460,200円
フルサイズにしては低画素ですが、その分、ピクセルサイズは5.94μmの大きさを誇る高感度機種です。
ZWO ASI6200MM Pro
フルサイズ 6117万画素(9576×6388) フランジバック17.5mm 本体重量700g 582,899円
最高級フルサイズ行っちゃってください。
どうせフルサイズならモノクロタイプでSAO合成撮影かな?
ピクセルサイズはASI2600MC PROと同じ3.76μmですが、RGGBフィルターのカラーモデルより4倍の感度です。
ZWO ASI183MC Pro
1型 2000万画素(5496×3672)
フランジバック6.5mm 本体重量410g 121,500円
1型高解像度カメラ。低価格の冷却式で高画素が必要な方はどうぞ。ピクセルサイズが2.4μmと小さいので冷却式カメラでは低感度になります。明るい天体が対象ならありです。
ZWO ASI585MC Pro
1/1.2型 829万画素(3840×2160)
フランジバック17.5mm 本体重量470g 91,900円
冷却式では最廉価な機種です。ピクセルサイズ2.9μmと冷却式の機種では小さいですが、赤外域の感度が高い最新センサーを搭載しています。惑星撮影にも向いています。予算があまりないけど冷却式のカメラが必要ならこの機種が最適かも?