ネット環境に無知な不動産業界

年度末が迫ってきました。引っ越しシーズンです。

新たな新居をもとめてこの時期は物件探しが活発化します。

いまやインターネット環境は水，電気に並ぶ重要インフラと言えます。さらにコロナ禍でテレワークが加速し，ネットの重要性は増すばかりです。しかし不動産業界はあまりにインターネットの知識が不足しており，まともな物件探しも困難な状況です。「高速インターネット」や「光ファイバー」と書かれている一見良さそうな物件であっても実態は VDSL 方式での配線だったりとほとんど詐欺みたいな物件が極めて多いです。もはやインターネット環境については不動産屋さんの情報は全くと言っていいほど当てになりません。

光回線が当たり前の時代

高速回線がもはや当たり前の時代です。「高速」とは人によってさまざまでしょうが，ブロードバンドで高画質の動画を視聴する時代，ネットワークでタイムラグなくゲームをする時代，そして仕事で高容量のデータを扱う時代です。これらを考えると 1 Gbps を扱える回線が妥当と思います。これに相当する回線はもはや光回線しかありません。

まずは NURO 光を検討する

まず検討すべきは NURO 光の回線でしょう。これは下り最大 2 Gbps を扱える回線です。もちろん実測で 2 Gbps が出ることはまれでしょうが，扱えるポテンシャルが大きいということは重要です。

NURO 光の 1 つめの欠点は供給エリアが極めて限定的であるということで，主に都市部のみであり地方の多くでは提供されていません。2 つめの欠点は，カスタマーサービスが最悪ということです。テレビ CM をバンバン売っている一方で，連絡が不足していたり，そもそも連絡がとれない，業者間でのやりとりができていない など，開通までには茨の道です。連絡なしの半年待ちなんて当たり前。カスタマーサポートがいけると言って自宅の工事をした（穴を開けた）のに，そもそも NURO のエリア外だったなんて話も聞きます。このように NURO 光のカスタマーサポートは劣悪なので，申し込む際には相応の覚悟が必要です。ただ，回線品質はある程度の評価を得ているようなので，なんとか開通すれば快適な環境になると思われます。

一般的には NTT 回線（フレッツ光）

日本全国の多くの地域は NURO 光のエリア外になるでしょう。となると次に検討すべきは NTT の光回線です。NTT はフレッツ光という光回線提供サービスを展開しており，多くの都市でサービス提供しています。

NURO との違いについては，NURO が NTT の使用されいない予備の光回線網を間借りしてサービス提供しているという点です。NTT は将来のデータ容量の増大ために多めに光回線を街中の電線に引いていますが，すべてを使用しているわけではありません。この余って使用されていない光回線をダークファイバーといいます。このダークファイバーを NURO が使用しているというわけです。

話は逸れましたが，NTT の光回線を使用するためにはまず自宅（戸建て or マンション）がエリア内かどうかを調べましょう。

マンションに NTT の光回線が導入されているかを調べる方法

NTT の東日本，西日本，ともにウェブサイト上でエリア判定のページを提供しています。

NTT 西日本を例に見てみましょう。ここでマンションに光回線が導入されている場合にはこのような表示が出ます。これは個室まで光ファイバーの配線が来ている可能性が濃厚です。もし前の住人が契約しておらず，宅内に光コンセントの設置がなければその工事は必要になるでしょうが，ひとまずハードルクリアです。

問題なのは次です。

光回線が導入されている 2 つめの例はこのような場合です。マンション自体には光回線が来ていますがそれは共用部までです。そこから個室には VDSL 方式で配線がされています。これは共用部から電話回線を利用した配線で，光ファイバーケーブルではなくメタルケーブルが使用されます。そのため，回線速度は最大 100 Mbps 程度しか出ず，しかもこれは理論値です。実測はもっと低い値が出るでしょう。

これが本記事の最初にも言った「光ファイバー」導入物件と謳われている場合があります。確かに共用部までは光ファイバーが来ていますが，物件を探している我々は「高速インターネット環境」を探しているのであって，「光ファイバーは入っているけど低速インターネット環境」を探しているわけではありません。意図的に不動産屋さんが欺いているなら大問題ですが，おそらくそこまでの知識はないんだろうと思います。いままで電話で問い合わせてみた経験からも，ほとんどインターネットの知識がありませんでした。おそらく純粋に光回線が来てて早い物件なんだろうと思っているんだと思います。

今回は物件に光回線が来ているかを見極める方法を簡単に紹介しました。このあと別途プロバイダー契約もしなければなりませんが，そもそも光回線が来ていないとそこにも進めません。ネット環境で不動産屋の情報は全くアテにならないと肝に銘じて物件選びをしましょう。