第4回ちはやふる小倉山杯 パブリックビューイングの感想と大会について思うこと
はじめに
本日2023年2月19日、第4回ちはやふる小倉山杯が開催されました。通算で4回目となった小倉山杯ですが、優勝賞金が100万円、賞金総額が200万円と競技かるた界では異色の大会となっております。今回は、小倉山杯のパブリックビューイングに行ってきたのでその感想と、いろいろ思ったことについて書いていきます。
パブリックビューイングと公開解説室の違い
第4回大会の目玉の一つとして取り上げられていたのが、パブリックビューイングでした。競技かるたの大会でパブリックビューイングが設けられることはまずなく、小倉山杯では初めての試みでした。しかしながら、昨年までの小倉山杯では本会場での観戦以外に公開解説室での観戦というのがあり、パブリックビューイングのような役割を果たしていた側面があったので正直単に名称を変更しただけにすぎず、殊更目玉に挙げるようなことではないのではと思っていました。実際にパブリックビューイングへ行ったところこの認識は誤っていたことを痛感しました。公開解説室はあくまで試合の「解説」がメインであり、解説室に入場した観客は大人しく解説聞く役割を求められます。さらに、公開解説室での解説は公式のYoutubeの中継で配信されるため、解説を聞ける場を観客にも開放してみましたという観客にとって受動的な側面が強いです。一方でパブリックビューイング会場ではトッププレイヤーの解説が実施されるもののYoutubeでの中継に使用されず、そのパブリックビューイングの場にいる人々を楽しませるためだけのものです。さらにバブリックビューイングの場では、隣同士でおしゃべりしたり、飲み物やお菓子などの飲食も可能であったりするという、リラックスしながらかるたの試合を鑑賞できる場となっていました。さらに、1試合終わるごとには解説者へ写真撮影やサインを求める列ができており、さながらアイドルのファンサービスの場のようでした。従来の公開解説室では、あくまで試合会場での観戦同様の、厳粛な雰囲気で試合を鑑賞するという場でした。それを試合鑑賞のハードルを下げ、エンターテイメント性を高めたのが今回のパブリックビューイングの取り組みでした。これはかるた界においては画期的なことであり、観るかるたの普及という側面では大きな一歩と感じました。来年以降はどのようにこのような取り組みを続けるか注目です。
パブリックビューイングの課題
前述ではパブリックビューイングについて絶賛してきましたが、一方でも課題が見えました。一つは、解説者への負担がかなりかかっていたことです。ちはやふる小倉山杯はあまり休憩がなく進行するため、解説者はかなり出ずっぱりでした。メインの解説者はほとんど休みを取れてなさそうな印象でして、人員増加の余地はあると思います。またあくまで解説者は競技かるたの達人であって、エンターテイメントやファンサービスの達人ではありません。あくまでアマチュアであるので、トークスキルやファン対応の要求度合いというのは個人の裁量になりそうです。今後このような機会を続けていくとしたら、エンタメのプロの活用や主催者として解説者に求める内容の明確化が必要なのではないでしょうか。もう一つは、チケットのチェックが緩いように感じたので、そのあたりは今後はもう少し厳格に実施されるのでしょうか。
観るかるた・魅せるかるたとちはやふる小倉山杯
ちはやふる小倉山杯は「かるたを観る」、「かるたを魅せる」ことに重きを置いた大会であり、様々工夫されている大会です。パブリックビューイングの会場には、広島や沖縄など遠方から来ている方もおりそれが奏功している面もあります。いっぽうでまだまだ改良の余地はあるのではないでしょうか。一般大会に比べれば多くのかるたファンが注目している大会でしょうが、かるたファン内に留まってしまっている面もあるのではないでしょうか。「ちはやふる」の冠がついているため、世間にアピールするには絶好の機会です。より外の世界に発信するためには以下のような施策も考えられるのではないでしょうか。
・選手紹介PVの作成
・アスリート・頭脳競技プレイヤーを大会へ招待
・アスリート・頭脳競技プレイヤーをゲストに招待
・ビデオ判定の採用
選手紹介のPV作成に関しますと、第4回大会では大会前に選手紹介インタビュー記事が掲載されており、選手に感情移入しやすくなる工夫がされていました。一方で文章での発信というのは、活字にわざわざ興味がある人しか読まず目に触れる機会が限定的になるというリスクがあります。そのためPVを作成し動画で発信することを提案しています。勿論、PVは費用と時間がかかるため大変ですが、動画での訴求というのは今の時代において無視出来ないところではないでしょうか。アスリート・頭脳競技プレイヤーに関していいますと、競技かるた界隈の人ではない方にかるたを触れてもらうきっかけとして、例えばスポーツ選手、将棋・囲碁のプロ棋士、eスポーツプレイヤーに小倉山杯を観てもらう機会を設けてはどうかということになります。勝負事に理解があるアスリートや頭脳競技プレイヤーであればかるた選手の心理面に共感しやすく、かるたの魅力にも気づきやすいと思います。そのような方にSNSやブログで小倉山杯の感想を発信してもらえれば、かるたの観るきっかけを増やす一歩につながるのではないでしょうか。なので、例えば5席はアスリートや頭脳競技プレイヤーへの招待枠に使用するのもありではないでしょうか。ちはやふるでかるたに少し関心をもっているそういう方々は一定数いると思うので、そうした人をかるたの世界により興味を持って後押しの場になればいいのではないでしょうか。最後のビデオ判定の採用は、あくまでかるたを観る・魅せることに重きを置くのであれば、技術的な進歩の議論も避けられないと思います。名人位決定戦・クイーン位決定戦でビデオ判定の導入の議論を行うというのを数年前に聞いた気がするのですが、とくにそのような話は進んでいないようです。現在は各種スポーツでビデオなどによるテクノロジーを活用した判断が用いられております。かるたは審判が目で判断をしますが、もちろんかるたは肉眼の世界だけで判定できるような競技ではありません。目で追えない速さが繰り広げられる競技であれば、それに対応した技術を用意することで、よりかるたファンやファンではない方にかるたの魅力を伝えられるのではないでしょうか。名人位決定戦・クイーン位決定戦でビデオ判定が導入されないようであれば、なおさら小倉山杯で試験的に導入することは意義があるのではないでしょうか。チップ入りかるた札の話や、フェンシングのようなセンサーの話も関心はあるのですが、それらは夢物語っぽくなってしまうのでここらへんでストップします。
ちはやふる小倉山杯の今後
ちはやふる小倉山杯は今回で4回目ですが、4回も続くことはすごいです。賞金総額は200万円もしますし、その他運営費用を含めればもっとかかっているでしょう。話題性と権威性がある大会でこのように続くことは非常に意義があります。一方で「ちはやふる」の連載が終わった今、ちはやふる基金が継続していけるのか、賞金もこのような額を出せるのかというのは不透明な部分があります。願わくば今後も発展し、優勝賞金も300万円、500万円と増額していくといいのですが。ただし、今大会のスポンサー企業の状況を見ると、昨年はゴールドスポンサーとして4社ついていましたが、今回はオフィシャルスポンサーは1社だけであり、企業のメリットとつなげることに関しては苦戦しているように伺えます。
また大会の権威性についていうと、小倉山杯は基本的にタイトルホルダーが出場する大会となっています。タイトル戦に出るためには、公認大会のポイントや段位が関係します。現在、大会出場の地域制限が解除の方向に動いておりますが、A級人口増加、大会の出場者数制限、A級の分割、タイトル戦への出場人数制限など相まってかなり混乱している状況です。特に近年A級になった選手は、大会の出場機会というのはコロナ渦前に活躍していた方々に比べると恵まれていません。そんな中でタイトル戦の出場者数の制限が厳しくなり、段位が高い人が出場が優先されるという現状では、本当に強い人がタイトル戦に出場できているのか、本当に強い人がタイトルを獲得しているのかという疑念が生まれざる得ません。これは小倉山杯の権威性を怪しくしてしまうので、これらの整備を必要なところではないでしょうか。S級の創設というのは無視できない検討事項なのではないでしょうか。
以上、小倉山杯について諸々書いてみました。