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【コラム】物語創作術で仕事を救う

3年前からnoteで物語創作をはじめ、昨年からは脚本スクールに通って勉強をしています。物語術に関する書籍もいろいろ読みました。

このように物語創作にたくさんの時間を使っているなかで、「最終的にどうなりたいの?」とたまに聞かれます。
だけどホントに、明確なものはなくて……

「物語創作が好きだからやってる。そのうち何かに繋がればラッキー」と考える自分と、「一発逆転ホームランでいつか会社員やめてやる!」と息巻く自分がいて、シフト制で交代しながら頭にいる感じです。せわしない。

とはいえ、今の会社員人生はあんまり創作に関係なくて、物語創作はあくまで趣味としか言えない。

だけどずっと思っていることがあります。

せっかくこんなに物語の勉強してるんだから、日々の仕事にもなにか良い影響を与えられないものか……


物語創作術を仕事に活かす。

これは、ビジネス書でよくある「事業戦略としてのストーリーテリング」とは少し違います。純粋な物語創作への興味が先にあって、それをうまく仕事に繋げたい、ということ。

またストーリーテリング的な話だとマーケティングや事業戦略とか一部のビジネスパーソンにしか関係なくなってしまう。そうじゃなくて、様々な仕事の様々な場面に応用できるようにしたいな、と思っています。

だから、「物語創作術を事業に活かす」とか高尚な話ではなく、「物語創作術で日々の仕事を少しラクにする」というくらいの感じで考えたい。


このテーマは前からうっすら持っていたけど、待っていて啓示が降りてくる感じもなく、そろそろ本腰入れて整理してみようと思い至りました。なんせね、秋ですから。

物語創作にはいろんな側面があり、日々の仕事に繋げられる要素がそれぞれある。今時点で考えたものを、ざっと紹介したいと思います。


①物語のネタ集め→日々のストレスを「ネタ」に変換する

働いていると、日々多くのストレスに晒されます。それを無くせるとまではいいませんが、少しだけ「いなす」ことができれば。

そんな感じで意識しているのが、「ストレスのネタ転換」

宮崎駿監督が、「企画は半径三メートル以内にいっぱい転がっている」と語っていました。

じつは、企画につながる彼の情報源はふたつしかありません。友人の話。それに、日常、スタッフとのなにげない会話です。
彼はよく口走ります。
「企画は半径三メートル以内にいっぱい転がっている」

鈴木敏夫『ジブリの哲学ー変わるものと変わらないものー』岩波書店

映画を見たり本を読むだけでなく、日常の中での観察力というのはとても重要。その中で、感情が強く動く場面というのは、物語のいいネタになります。

だから、怒りとか悲しみとか不安とか、そういう負の感情が自分に生まれたときは、「あ、良いネタが近づいている!」と思ってみる。
できればそれをメモに書き出す。自分の負の感情を客観的に取り出して、「これは面白い心の動きだなあ」とか考えていると、痛みもかなり和らぎます。

根本解決にはならないけれど、考え方の変換はときに大きく自分を救います。これは物語を創作しているなかで身につけた考え方。


②物語のコンセプト設計→人に刺さる「企画」に活かす

ここでいうコンセプトは、「その作品をひと言でいうとどんな話か」というもの。たとえばタイタニックで言えば「やがて沈没する船で激しく愛し合うふたり」みたいな。
本によってはログラインと書かれてたりもします。(意味は少し変わるけど割愛)

コンセプトがストーリーの核となるわけですが、そのコンセプトを考える上で大事なことは何か。
いろいろな意見がありますが、僕が一番しっくりきているのが以下の考え方です。

良いコンセプト=新しさ×共感性×分かりやすさ

これは、逆に「日々の中でどんな情報をスルーしているか」を考えると理解しやすいです。
すでに知っていそうなもの。見たことあるもの。
自分には関係なさそうなもの。誰に向いているか分からないもの。
そして、パッと見て入ってこないもの。理解に時間がかかりそうなもの。

このあたりの情報を「ノイズ」として僕らは日々捨てています。
だから、自分の創作物ではそうならないようにしていくことが大事。


とはいえ簡単ではない。とくに新しさと共感性の共存が難しい。「知らない」と「知っている」を同時に叶えるということですから。

これは「既存と既存の新しい組み合わせ」で考えるといいようです。
たとえば、たらこ×スパゲティ=たらこスパゲティ、みたいな感じ。組み合わせてできたものは新しいけれど、ひとつひとつの要素は既存のものだからイメージもしやすい。
あと有名なものでいうと、スターウォーズも「宇宙」と「西部劇」の組み合わせだったり。


この考えを、仕事における「企画」に応用します。

「企画」というと自分には関係ないと思う人もいるかもしれませんが、誰かの心を動かそうとする「企て」があれば、それはすべて企画だと思っています。(これもいち解釈として)

歓迎会準備とか、会議のコンテンツづくりとか、期はじめのイベントとか……
「企画」が求められる場面は、仕事をしていればたくさんあるはず。

そういうものすべてに、先ほど述べた「コンセプト」のポイントは使えると思っています。

良いコンセプト(良い企画)=新しさ×共感性×分かりやすさ

これはもっと研究しがいがありそうです。

ちなみにここの話の大部分は『「感情」から書く脚本術』という本に書いてあることを僕なりに解釈したもの。興味があればぜひ。


③創作の進行術→仕事の段取りに活かす

僕の通うシナリオ・センターは、20枚シナリオを30本書けば研修科修了です。
20枚は映像でいうと10分程度の尺だけど、ストーリーや登場人物を毎回ゼロから考えないといけないのでかなり大変。

そのうえ僕は筆が遅い。疑いぶかく優柔不断なので、ああでもないこうでもないと一進一退を繰り返し、いつもPCのメモがボツ原稿の山になります。

このままでは一生この場所から進めずに、ハンターハンターのトンパ化して新人潰しを始めてしまう!(マジでいます、リアルトンパ)


そんな中、本で見たひとつの考え方が突破口になりました。

「第一稿は駄作」という前提を持つ!

どんなに考え抜いて書いても、どんなに最初は素晴らしい出来に思えても、客観視点がまだ入っていない第一稿はぜったいに駄作である。ぜったいに。
だからさっさと第一稿を書いて、推敲にたっぷり時間と力を注ぐべし。
そんな考え方。

言い換えれば「まず書け、迷わず書け」という教訓であり、これを繰り返し詠唱しながら、手を止めず、第一稿をまず書き切ることを意識します。
そしてそこからゆっくりと推敲をする。こっちのほうが全体的な進みは早いし、何より最終的なクオリティも上がる。

人によるところもあるけど、少なくとも僕のような優柔不断人間には合っています。


そしてこの創作方法を、最近は仕事にも応用しています。

資料をつくるとき、まずは書く。そして推敲する。これは資料の速さや品質だけでなく、メンタル的にもかなり楽になる。
「無心で手を動かす時間」と「質を気にする時間」を明確に分けているので、これで大丈夫かな、と心配する時間が単純に半分になります。

メンタルがジェンガ終盤状態だった20代の僕にタイムスリップして教えてあげたい。それくらい仕事がラクになった思考法です。



という感じで、まずはこのへんで。

他にも仕事に活かせそうな創作術はたくさんあります。

・キャラクターづくり→人を理解し人間関係を良くする
・プロットづくり→印象的なメールや資料をつくる
・言葉えらび→言葉を駆使して「認識のズレ」を減らす
などなど

上記を含め、今後も研究を続けていきたいと思います。またその中で、創作術に関する書籍なんかも一緒に紹介していければ。


この記事の参考書籍:
カール・イグレシアス『「感情」から書く脚本日』フィルムアート社
カール・イグレシアス『脚本を書くための101の習慣』フィルムアート社
鈴木敏夫『ジブリの哲学ー変わるものと変わらないものー』岩波書店

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