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広島と山口の県境付近、南北に伸びる県道から少し逸れたところに、ロボットが暮らす村がある。…
鳩になったばあちゃんがベランダにやってきたのは、妻が家を出ていって2週間ほど経った頃だっ…
朝起きたら、犬になっていた。 小麦色の、痩せた柴犬になっていた。 しばらく困惑して、いっ…
ある日、ウサギが亀に向かって言った。 「亀くん、僕と競争しないか?あの丘のてっぺんに先に…
ある夜、ポン酢とごま油が復讐にやってきた。 玄関に立っていたのはふたり。焦茶色の着物を着…
カイトが浜辺を歩いていると、一頭のトンビが岩の上に止まっていた。 トンビは、黒豆のような…
鯉は、もの覚えがあんまり良くない。 何が食べられて何が食べられないのかさえ、すぐに忘れてしまう。 徳川の時代よりも昔から続く、由緒ある旅館。その庭園に、庵ほどの大きさの、まあるい池があった。 そこが鯉の世界のぜんぶだった。 綿雪が降るある日、お婆さんと小さな女の子がやってくる。 「おっきい」と、女の子。 「鯉だよ」お婆さんが教える。 「こい」 「そう、鯉だよ」 「おっきい」 「おっきいね」 お婆さんは、池の淵にしゃがみ込んで、鯉をじっくり眺める。 「鯉はとっても長生
彼女はトースター。 恋するトースター。 狭く雑多なワンルームの隅で。 下には電子レンジ、横…
人がファッションで自己を表現するように、ヤドカリもまた、背負う貝殻で自分を伝えようとする…
CapsLockキーは、自分の生まれた意味がずっと分からなかった。 キーたちが身を置くノートパソ…