12弦金属弦ハープによる Come live with me
英国ルネサンス音楽を代表する作品のひとつに Come live with me があげられると思います。エリザベス1世の時代のクリストファー・マーロウ Christopher Marlowe (1564-1593) の「恋する羊飼い The Passionate Shepherd to his Love」(1599) という有名な詩につけられた曲です。
Come live with me, and be my love;
And we will all the pleasures prove
That hills and valleys, dales and fields,
Woods, or steepy mountain yields.
英国のリュート奏者、リラ・ヴァイオル奏者のウィリアム・コーキン William Corkine (fl. 1610-1617) が出版したリラ・ヴァイオルの教本 Second Book of Ayres (1612) にタブラチュアで収録されています。
16世紀後半から17世紀前半は金属弦アイリッシュ・ハープの黄金時代で、エリザベス1世とジェームズ1世の宮廷にはコーマック・マクダーモット Cormac MacDermott (d.1618) が仕えており、この曲もおそらくアイリッシュ・ハープで演奏されていたと思います。
今回は、音域の異なる3種類の12弦金属弦ハープによるアレンジを考えてみました。注意してもらいたいのは、臨時記号の音をどうやって弾いているのかという点です。
最初のアレンジは G3-D5 の私が「テナー」と呼んでいるモデル。
ダイアトニックなハープですが、「スコルダトゥーラ」という変則調弦を用いると臨時記号を弾くことができます。
2つめは前のハープより全体に1オクターヴ低いG2-D4の「バリトン」。
低音が心地よく、私のお気に入りのモデルです。このハープは先ほどのスコルダトゥーラを使うことなく臨時記号を弾いています。
動画を見てもらうと、時々左手を弦の下の方に動かしているのがわかるかと思います。これは左手の爪を弦の下に当てて半音上げています。この技法は私が制作しているアーチドハープでよく使います。金属弦ハープの場合、これを使うと音質が変わってしまうのでメロディには使えないのですが、下記のようなコードの中の音に紛れ込ませると自然に聞こえます。調弦しなおさなくて済むので慣れると便利な技法です。
最後に、一番低い「バス」モデル。
チェロより低い G1-D3 の音域で、普段あまり使う機会がないハープですね。これは最初と同じでスコルダトゥーラを使っていますがもう少し簡略化しています。要は一番最後の音を「ピカルディ終止」にしていないというわけです。
いかがでしたでしょうか。このように12弦の金属弦ハープは音域が狭いものの、使い方によっていろんな曲を奏でることができます。Come live with me は臨時記号を弾く練習として最適かなと思いました。
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