みんなが住んでる2つの村の話
あるところに「ポジティブ村」と「ネガティブ村」という2つの村がありました。
ポジティブ村には元気で明るくてちょっとおっちょこちょいな人たちが楽しく暮らしています。
ネガティブ村には器用で細かいコツコツ作業が得意な繊細なみんなが仲良く暮らしています。
二つの村は大きな山のふもとで川を挟んで生活しています。
ポジティブ村のみんなは元気で物を売ったり人と話すのが大好きです。
ネガティブ村のみんなは毎日畑を耕したり、得意なことを活かしてモノを作りゆっくり本を読んだり、音楽を奏でています。
二つの村はお互いの得意なことを活かして生活を送っています。
ネガティブ村で作った作物や商品を、ポジティブ村のみんなで街に売りに行ってお金を得ていました。
ある日ポジティブ村に住むぶたのぶひおくんと、ネガティブ村に住むくまのくまごろうくんが川を見ながらお昼ご飯を食べていました。
今日のお昼はくまごろう手作りのサンドウィッチです。
ぶひお「くまごろうのサンドウィッチはやっぱりおいしいね!」
くまごろう「ありがとう!今回はソースにマスタードをいれてみたんだよ!」
ぶひお「そうなんだ!とってもおいしいよ!」
二人は仲良くサンドウィッチを食べて川を見ながらお話をしていました。
ぶひお「ねぇねぇくまごろう。この間くまごろうの作ったトマトを売るために街に行ったら大人気だったよ!」
くまごろうは野菜や果物を育てるのが大好きです。
毎日丹念に畑の手入れをして、一生懸命野菜を育てています。
くまごろう「そうなんだ!うれしいな!教えてくれてありがとう!」
くまごろうは大変喜びました。
ぶひお「うん!でもね、ある人が今年のトマトは去年より小さいかったり形が変だねって言ってたんだ!なんか作り方を変えたの?」
くまごろうは驚きました。今年も去年と同じように丁寧に作業をして、出来上がったトマトを自分でも食べてみて美味しく出来たなと自信を持ってくまごろうに渡しました。
くまごろう「そうなんだ・・・なんか作り方を間違えたのかな・・・」
ぶひお「うーん。僕にはわからないけど・・・」
くまごろうが考え出すのを見て、ぶひおは黙ってしまいました。
しばらくすると、
くまごろう「ちょっと僕家に帰って調べてみる。ごめん。先に帰るね」
ぶひお「えー!帰っちゃうの?そんなの今度でいいじゃない!」
ぶひおはすこし怒ったように言いました。
今日お昼を食べることは前から約束していたのでぶひおはとても楽しみにしていたからです。
くまごろう「ぶひおにはトマトを作ったことがないからわからないんだよ!僕にとってはとても大事なことなんだ!」
そういうとくまごろうはお昼のサンドウィッチを鞄にしまって家に帰ってしまいました。
ぶひおは一人でくまごろうの作ったサンドウィッチを見つめていました。
その中にはくまごろうのトマトも挟んでありました。
ぶひお「くまごろうはなんで怒っちゃんったんだろう・・・」
ぶひおには考えてもなかなかわかりませんでした。
ずーっとくまごろうのことを考えているとぶひおの目からポロポロと涙が流れてきました。
ぶひおと別れた後、くまごろうはとぼとぼと村に向かって歩いていました。
くまごろう「やっぱり作り方を間違えたのかな・・・水をあげすぎた?いや土かな・・・?」
ぶつぶつ言いながらくまごろうは下を向いて考えていました。
くまごろうは一つのことが気になって考えだすとずーっと考えてしまう所がありました。
寝ることや食べることも忘れてしまい、風邪をひいてしまうこともありました。
ネガティブ村のみんなも、そんなくまごろうを見て「真面目すぎるんだよ。」と注意することがありました。でもくまごろうはどうしても気になると答えが知りたくてずっと考えてしまいます。
くまごろう「でもぶひおもあんなこと言うなんてひどいよ・・・僕にとってトマトを作ることがどれだけ大事か全然わかってないんだ。」
「ドンッ」
下を向いて歩いていると何かにぶつかり後ろに尻もちをついてしまいました。
顔を上げると2つの村から離れた山小屋に住んでいる、ぞうのゆるぞうが立っていました。
ゆるぞう「ごめんねくまごろう。怪我はないかい?」
ゆるぞうはそういって手を差し出しました。
くまごろうはその手をつかんで立ち上がりました。
くまごろう「ゆるぞうさん、ありがとう。大丈夫です。村の方に来るのはめずらしいですね!」
ゆるぞうは長い鼻を撫でながら、
ゆるぞう「ちょっとポジティブ村に用事があってな。そういえば今年もくまごろうのトマトを食べたよ。とっても美味しかったよ。」
くまごろうの表情がすこし暗くなりました。
くまごろう「ありがとうございます。でも今年のトマトはダメなんです・・・」
ゆるぞうはくまごろうの表情を見てこういいました。
ゆるぞう「くまごろう。すこし座って話をしないかい?」
くまごろうとゆるぞうは近くのベンチに腰掛けました。
くまごろうはお昼にぶひおと話した話を伝えました。
ゆるぞうはそれをパイプを吸いながらふむふむと静かに聞いていました。
ゆるぞう「なるほど。そんなことがあったのか。」
くまごろう「そうなんです。ひどいと思いませんか??」
ゆるぞうはパイプを吹かしながら考えていました。
ゆるぞう「くまごろうはぶひおの言った言葉の中でなにが気になった?」
くまごろう「うーん。やっぱりトマトを作ることを馬鹿にされた気がしました。やっぱりぶひおは僕にとってトマトを作ることがどれくらい大事かわかってないんだよ!」
ゆるぞう「そうかそうか。たしかにそう思ってしまうのも無理はない。」
くまごろう「そうなんです!ぶひおは僕の気持ちがわかってないんです!きっと僕のことが嫌いなんです・・・」
ゆるぞうはくまごろうを見てこういいました。
ゆるぞう「たしかにぶひおの言葉で傷つくのはわかる。でもぶひおは本当にくまごろうの気持ちがわかっていないのかな?」
くまごろうはすこし考えました。
ゆるぞう「いつもぶひおはくまごろうの野菜で作ったサンドウィッチを美味しく食べてくれるだろ?」
くまごろう「はい。いつも僕のサンドウィッチを喜んでくれます。」
ゆるぞうはニコッと笑いました。
そこから二人は話すことをやめました。
くまごろう「ゆるぞうさん。僕の残りのサンドウィッチ食べますか?」
そう言ってくまごろうは鞄からサンドウィッチの包みを取り出しました。
ゆるぞう「おお、ありがとう!是非食べたいな!」
ゆるぞうはサンドウィッチを大きな手でつかみバクっと食べました。
ゆるぞう「おいしい!野菜も新鮮でソースも最高だな!」
くまごろうはすこし照れながらよろこんでいました。
ゆるぞうは2口でサンドウィッチを食べてしまいました。
ゆるぞうは鞄から水筒を出し、お茶を飲んで一息つきました。
ゆるぞう「なぁくまごろう。ぶひおは売りにいった時に言われたことをそのまま伝えただけなんじゃないか?」
くまごろう「うーん。でも僕はその話を聞きたくなかったです。」
ゆるぞう「そうだね。それがくまごろうの気持ちなんだね。ちなみにそれをぶひおに伝えたかい?」
くまごろう「それは言ってないです。僕はトマトのことが気になってすぐに帰ってきてしまったので。」
ゆるぞう「そうかそうか。そしたらまずは一人で考えるよりも二人で話してみたらいいんじゃないかな?」
くまごろうはどこかでぶひおとはもう話したくないと思っていました。
ゆるぞう「話したくないこともあるとは思う。でもぶひおもくまごろうの気持ちがわからなくて困ってるんじゃないかな?」
くまごろうは考えました。
トマトのことも気になるし話したくないとも思う。
でもゆるぞうの言う通りくまごろうはぶひおと話してみないとわからないこともあるな思っていました。
ゆるぞうはその間も静かにベンチに座って空を見ていました。
くまごろう「ゆるぞうさん。僕、ぶひおのところに戻ります。」
ゆるぞうはニコッと笑い。
ゆるぞう「行っておいで。ちゃんと話してごらん。」
くまごろうはコクっとうなずいて走ってぶひおのところに戻りました。
その頃ぶひおはポロポロと泣きながら困っていました。
ぶひお「くまごろうとはもう話せないのかな・・・」
すると後ろからくまごろうの声がしました。
振り返ると河川敷をくまごろうがこちらに向かって走ってきていました。
ぶひおは立ち上がって涙をふきました。
そしてそのままくまごろうの方に走って行きました。
ぶひお「くまごろう!戻ってきてくれたの?」
くまごろうは息を落ち着けて
くまごろう「ぶひお!さっきは突然帰ってごめん!もう一回ちゃんと話さないかい?」
ぶひおはとてもよろこびました。
二人はお昼を食べていた場所に戻って話始めました。
ぶひお「くまごろうはどうして帰っちゃったの?」
くまごろう「それは君が僕のトマトを悪く言ったからだよ・・・」
ぶひお「えっ?僕そんなこと言ってないよ!君のトマトはとってもおいしいよ!」
くまごろう「でも小さいって言われたって・・・僕はそれを聞いて、今年のトマトがダメなんだって思ってしまったんだ。」
ぶひおはとても驚きました。自分がそんなつもりで言ってないのに、そんな風にくまごろうが受け取ると思っていなかったのです。
ぶひお「そうだったのか・・・ごめんね。僕は全然気付いていなかったよ。でも本当にそんなことを僕は思っていないよ。」
くまごろうはぶひおが自分の気持ちに気付いてないことに驚きました。
くまごろう「そうだったんだ・・・僕もごめんよ。やっぱり僕たちみたいに考え方が違って住む村が違うとこういう事が起こっちゃうんだね。」
くまごろうは下を向いていました。
ぶひお「そうだね・・・」
二人は揃って下を向いて考えていました。
その頃、河川敷の上で遠くからゆるぞうさんが二人を見ていました。
ゆるぞうさんは長ーい鼻を風にゆらゆらと揺らしながら静かに二人を見守っていました。
ぶひお「でもね、くまごろう。僕はくまごろうが自分の気持ちを言ってくれてうれしかったよ。」
くまごろうが顔を上げました。
くまごろう「そうなの?」
ぶひお「うん。くまごろうは真面目でいつも考え事をしているからなにを考えているのか僕にはわからない時があるんだよ。」
くまごろう「えーーーー!?そうなの!?」
ぶひおはそこですこし考えました。でもぶひおは勇気を出して言いました。
ぶひお「うん。僕はなんでもペラペラしゃべっちゃって、村のみんなに怒られたりもするんだけど、くまごろうひはもうちょっと自分の気持ちとか話して欲しいなって思うよ」
くまごろうはまた考えてしまいました。
ぶひおはくまごろうが何を考えているかわからずドキドキしてしまいました。
するとくまごろうが急に立ち上がって
くまごろう「そうか!わかったぞ!」
ぶひお「どうしたんだい??」
くまごろう「ぶひお。これまで本当にごめんね。僕は考えてばかりだったと思う。もっと自分のことを話せばよかったんだね。」
ぶひおは目をパチパチしていました。
くまごろう「実はさっきゆるぞうさんにあってね、それでぶひおの所に戻ってきたんだ。その時僕はぶひおの気持ちがわからなかった。それは話をしてなかったからだと思うんだよね。もし僕が急に帰ったりしていなければ2人で話していつも通りの楽しいお昼ご飯になったと思うんだ。」
ぶひお「うんうん。」
ぶひおは大きくうなずきました。
くまごろう「だからこれからもいっぱい話そう!ケンカすることもあるかもしれないけど、わからないでモヤモヤするよりは全然いいよ!」
ぶひおはうれしくなりました。そして今度は笑いながら泣き出してしまいました。
ぶひお「うわー!ありがとうくまごろう!トマトのことも本当にごめんね!」
くまごろう「もういいんだよぶひお!そのかわり、来年のトマトを作る時にもっとお客さんの意見を聞いてきてよ!」
ぶひお「もちろいだよ!そういうのは得意だから任せてよ!」
二人は手を取り合ってよろこびました。
遠くで見ていたゆるぞうさんもそんな2人の姿を見て静かに家に帰って行きました。
1年後。
二人が協力しての作ったトマトは驚くほどの人気になりました。
ぶひおが街でどんなトマトが人気があるかを調べ、
それをくまごろうが研究し、みんながよろこぶトマトを完成させました。
もちろんその間も二人はケンカをしたり、泣いたり笑ったりを繰り返していました。
でもそのたびにちゃんとお互いの気持ちを話しながら二人はゆっくりとトマトを育てていきました。その度に二人は前よりも仲良くなって行きました。
そして今では2人で作ったとっても大きくてまんまるなトマトは2つの村の名物になりました。
二人はよく話してよくケンカもする仲良しコンビとして両方の村のみんなに愛されながら幸せに暮らしていきました。
おしまい
読んでいただきありがとうございます。もし気に入っていただけたらサポートをおねがいします。今後の感性を磨くための読書費や学びへの費用とさせていただきます。