【#生きる音楽】恋したことすら後悔させる Side B
今日も旦那は遅い。
基本的にはいい旦那だと思っている。
だってそのために手に入れたのだから。
当時の私は大学デビューに必死だった。
ど田舎から出てきて、やっと私は都会での自由を手に入れた。
自分と世界を変える。そのために必死だった。
まず私は大学のクラスの仲良しグループでの位置どりを考えた。
取り立てて喋るのが上手いわけではなかったし、
キャピキャピと媚びるタイプでもなかった。
当時は森ガールが流行っていた。
見つけた時にこれだ!と思った。
私は今の言葉で言うブランディングを自分なりに組み立てた。
今の旦那と出会ったのはそんな頃だった。
彼は最初から私によく話しかけてきた。
まんまとブランディングに引っかかってくれた最初の男。
クラスでも目立つ存在だったし、よく私を持ち上げてくれた。
みんなで色んな所に出かけてよく遊んだ。
この人を彼氏にしたい。
私はそんなことを考えるようになった。
好きとかどうでもいい。
クラスで一番目立つこの男の彼女になって、私の立場を確固たるものにしたい。
そんなことを考えていた。
そんな時にいつも彼が当時付き合っていた彼女が邪魔だった。
2人はいいカップルだった。
それは認める。
彼女も私と違って素直なとってもいい子だ。
でも私はそんな彼女が嫌いだった。
別れさせるのではなく、待つことに私は決めた。
詳細はあまり知らないが、彼女の方が後半体調を壊したらしい。
彼もだんだんと元気がなくなっていった。
私は彼の相談に乗ってあげた。
別に彼女のことなんかどうでも良かったけど、
彼を手に入れるために。
私は辛抱強く話を聞いた。
2年経ち彼らは別れた。
1年後、彼は私のものになった。
社会人になった彼は仕事に悩んでいた。
私の見込み違いだったかと思うほどに彼は仕事をコロコロと変えた。
でも私は諦めなかった。
幸い、私は新卒で入った会社が好調だったので収入は安定していた。
でも彼を養うことはしなかった。
それは私の目的ではないから。
社会人になり5年が経ち、私は悩んでいた。
友人の結婚式に行くたびにマウントを取られる。
「来月結婚するのー」
「子供できてさー」
「旦那がやっと役職ついたんだよねー」
悔しくて仕方がなかった。
大学ではあんなにうまくいった私の計画が、なぜかうまくいかない。
そんな時、私は妊娠をした。
相変わらず彼は何度目かわからない転職活動をしていた。
私はもう限界だった。
この男と結婚する。
そのための最後の手段が子供を作ることだった。
しかし彼は慎重な人だったから必ず避妊をしていた。
私はその壁すら乗り越えた。自らの力で。
そして私は子供の成長日記のインスタを開設した。
多分彼は今でも大学時代に付き合っていた彼女が好きなんだろう。
そんなことは構わない。
なぜなら私は私の幸せのために強く生きることを誓ったから。
ベッドで眠る息子は静かに寝息を立てている。
とてもかわいい。
私はキッチンで静かにワインを飲んでいた。
照明にふとワインをかざす。
キラキラと光をおびて白ワインはまるで宝石のようだった。
この家も、家族も、子供も、旦那も全部私の宝石。
誰にも邪魔させない。
私はそれを抱きしめながら生きていく。