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中国人向け訪日ビザ要件緩和措置に付いて
2025年は、インバウンド「バブル」が益々加速しそうだ。
2024年段階で既にコロナ前と比較しても過去最高を更新したそうで、それは都内に居ても実感する場面が多い。
京都などの観光地であれば尚のことだろう。
先の政府発表によると、今年2025年春以降(つまり、今回の春節休暇期間中は対象外)に中国人向け訪日ビザ要件の緩和に踏み切るようだ。
これは昨年11月30日に日本人向け短期(30日)訪中ビザ免除措置が再開された時に想像出来ていたことでは有る。
問題は、どこまで「緩和」するのか、と言うことであった。
いくつかポイントはあるが、特に目を引くのが
・富裕層向け観光ビザ有効期間10年
・65歳以上には就業証明不要
の2点だろう。
「富裕層向け観光ビザ有効期間10年」
これにより、恐らく日本の大都市圏への不動産投資が加速しそうだ。
中国国内の不動産投資市況はもはや手を出す状況では無く、かと言って近隣諸国、例えば香港、ソウル、台北などは東京と比べて高価格&低利回り&カントリーリスクなどの面で手を出し難い。
基本、家賃による定期収入よりも売却益(キャピタルゲイン)狙いの中国人に取っては日本の大都市圏は狙ってみたい市場なのだ。
ただ、これにネックがあるとすれば「ビザ」条件だった。
これが10年間「自由」に行き来出来るのであれば、売り時を逃す確率が減るし、何よりもタイムリーな物件取得が可能にもなる。
また物件取得は概ね法人名義になるので、日本での法人設立に向けてのハードルも、10年ビザのおかげて大幅に下がるだろう。
反面、我々日本人にとっては益々利便性の良いエリアに自宅を持つことが難しくなる可能性が高くなるとも言え、なかなか悩ましいとも言えよう。
65歳以上には就業証明不要
これまでだと、中国人が好きな一家をあげての旅行がなかなか難しかったのは「65歳以上には就業証明が必要」だったからだ。
なぜならば、当然ながら65歳ではリタイアしている人が多く、その後は(場合によっては近隣に移住して)孫の世話をしながら子供たちのサポートをするのが伝統的に多いからだ。
ところが、今回の措置により就業証明が不要になるとなれば、大家族での日本旅行を目論む人が増えるだろう。
一定年齢以上の中国人が、日本を見る(特に京都)時に感じることの一つに「かつての自分たちの理想」がそこに有る、と言う感情が有るのを意外と我々日本人は知らない。
「文化大革命」で失った数々の有形無形の文化的遺産が、そっくりそのまま日本(特に京都などの古都)に残っているのを目にする。
在日を含めて、時々出会う、こちらが驚くほど日本の文化を理解し同期する中国人のメンタリティは、そう言う視点で見ると理解しやすい。
話しをインバウンドに戻すと、問題は日本国内には大家族旅行に適したホテルは意外なほど無いこと。
恐らく、一軒家民泊がその需要を満たすのだろうが、基本全てセルフサービスになることから、居住経験が有る日本通の同行者が居ることが、それらの施設を上手く使いこなすには必要になるだろうから中々ハードルが高いかも知れ無い。
上に政策有れば、下に対策有り
中国人の考え方で最も好きなのは「上に政策有れば下に対策有り」の精神だ。
何かが決まれば、それに逆らうよりも如何に自分たちの利益に結びつける事を考えて行動すべきだ、と言う意味だが、現実主義者の多いお国柄らしい考え方だ。
今回のビザ要件緩和には賛否両論が当然ながら有る。
色々と問題があるな、と思う点も見受けられるのも事実。
しかしながら、「対策」を考えて上手く対応していくのが、結局は最も建設的な行動だと思う。
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