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「インテリアリハビリテーションとは」池田由里子さん(株式会社リハブインテリアズ代表)インタビュー
(看護とリハビリ キャリエルメディ2022年10月号(書籍版)インタビューより)取材:樋口直樹、構成:梶原拓真
池田由里子(いけだゆりこ)
鹿児島大学医療技術短期大学部理学療法学科卒業後、理学療法士として病院に勤務。その後インテリアコーディネーター資格を取得し、病院や老人ホームなどを多く手がける建築設計事務所(熊本市)、高齢者向け北欧福祉家具輸入販売会社(東京都)を経て、2008年、株式会社リハブインテリアズを設立。インテリアコンサルティング、デザイン、セミナーなど医療福祉施設におけるインテリアリハビリテーション®の普及、実践のため日本全国で活動中。
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看護とリハビリ キャリエルメディ2022年10月号(書籍版)
看護とリハビリ キャリエルメディ2022年10月号(キンドル版)
インテリアリハビリテーション®とは
ーまずは、ご自身で提唱されている「インテリアリハビリテーション®️」の概要を教えてください。
池田 起業した15年前からインテリアリハビリテーション®️の考え方を提唱しています。
病院勤務を経て、施設や老人ホーム、デイサービス、クリニックなどの設計を手がける事務所に所属し、設計に携わったことがきっかけです。
完成した直後は洗練された美しい建物なのですが、しばらくして訪れると増えた備品がちらかっていたり、利用者様の作品が雑然と飾られていたりと、残念に感じられてしまう病院施設が多くあります。
病院施設の代表者は「ホテルのような施設にしたい」、「カフェのようなくつろげる空間がいい」などの想いを持っているのですが、利用していくうちに想いとは違う空間の使われ方をしてしまうんです。
「なぜそうなってしまうんだろう?」と思う中で、インテリアリハビリテーション®️の考え方に行きつきました。
ーインテリアリハビリテーション®️とは具体的にどのような考え方なのですか?
池田 わたしが考えるインテリアリハビリテーション®とは、不具合が生じている環境を、本来あるべき状態へ回復させる取り組みと考えています。
空間とは人を癒したり、人を幸せな気持ちにさせたりできるものです。
空間によってやる気が出る、または落ち着いてくつろげることを求める方もいるかもしれませんね。
そのような方々に、空間によってもたらされる良い影響を享受してもらえるよう「インテリアをリハビリテーションしていく」ことを目指しています。
さらに、インテリアで自分らしい生き方や暮らし方を取り戻し、身体だけでなく心まで元気になっていくことを「インテリアでリハビリテーションする」と表現しています。
セラピストの養成校では身体機能について学ぶ機会はあっても、「空間の活かし方」を学ぶ機会はほとんどありません。そのため、ぜひともインテリアリハビリテーションの概念を知ってもらいたいと思い、積極的に講演活動をするようにしています。
なぜ似た空間になってしまうのか?
ーコンセプトがまったく違う施設でも、だんだん似た空間になってしまうのは経験があります。では、なぜ似た空間になってしまうのでしょうか?
池田 長年考察してみたのですが、そもそも職員にコンセプトを知らされていない、またどのように環境づくりを実践すればいいか学んでいない、これらが原因なのではないかと考えます。
施設のハードは丁寧な取り扱い説明がされますが、ソフト面、いわゆる意匠にどのような意味があるかは、建築打合せに関わっていない職員はなかなか知る機会がないものです。
そんな時、数十人が集う多目的ホールや談話室をどのように設えるかを考えてみてください。
ヒントになるのは、かつて実習や勤務で見た他施設や、自分が知っている馴染みの大空間、学校の雰囲気を思い出してやってみるしかなかったのかなと…。
教室の掲示板に書道や絵などの作品を飾ったり、誕生日や季節のイベントを開催したり、ですよね。だからこそ、どの病院施設も似たような空間になってしまうんだと思います。
そこへ、インテリアリハビリテーション®️の考えを伝えると「こんなやり方があったんだ」と感心していただけるんです。長年の経験で形成された固定観念を解きほぐしていくことも、インテリアリハビリテーション®️の重要な役割だといえますね。
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快適な空間の移り変わり
ー似た空間になる要因は、他施設や学校の記憶が関係しているという考察は非常に面白いですね。では、記憶にとらわれず心地よく過ごせる場所をコー
ディネートするために、どのような視点が必要でしょうか?
池田 そうですね。日本における住環境の歴史を知ることが良いきっかけになると思います。戦前の日本は空間を広く使い、様式美を重んじる和風建築に美しさを見出していました。そこから戦後になり、和洋折衷という価値観が広まったことで機能的な住環境が増えたのです。
また、戦争の影響で焼け野原となり何もない状況から高度経済成長期になっていく過程で、モノがたくさんあることに幸せを感じる考えが根付いていったのだと思います。
ー時代背景によって豊さ(物の多さ)が優先されるようになっていったんですね。ただ、リハビリテーションの視点から見ると、物が多いと情報量が多くなってしまい、混乱する場合もあると思ったのですがいかがですか?
池田 情報量という視点はとても大切だと思います。落ち着く空間を思い浮かべて欲しいのですが、例えば旅館などは必要最低限の調度品や温泉の空間に「落ち着き」や「癒し」を感じるのではないでしょうか。
これ以降の内容は「キャリエルメディ」でお読みいただけます。
内容が気になる方は、ぜひご確認ください。