端山茂山奇譚(漆)
端山茂山奇譚(漆)
おお、来た来た。
わたしの新しい衣を神輿に載せて、麓から人間たちが登ってきた。
春から夏への装いに変えて、わたしは山の麓に降りよう。
草木がよく茂り、地の恵みがよく育つように、私は麓に降りよう。
大地の気が 恵みに繋がるように。
代わりにわたしの子らが、山に行く。
秋も深まる頃、また新しい衣を持って、人間たちが山に上がってくる。
私も一緒に山の社に行く。
そして私はその衣を着て、再び山の社に住まい、山から里を見守ろう。
私の子らは、今度は山から降りて里を守る。
天の気が 大地によく降り注ぐように、私は天と地を繋ぐ。
私の子らも、同じく天と地を繋ぐ。
人間たちが多く祈れば、うまく繋げるだろう。
天と地がうまく繋がれば、恵みも多く実るだろう。