端山茂山奇譚 (陸)
端山茂山奇譚(陸)
ああ、よく寝た。
花の香りがここまで漂ってくる。
外に出てみるか。
風は冷たいな。体がまだよく動かん。
日の光に少し温まろうか。
身体半分でも、温まるだろう。
・・・なんだ、騒がしくなってきたな。・・・ああ、人間どもが来ておる。
花を見に来たのか。
逃げたいが、身体が動かん・・・。
うわ、わしを触ろうとするやつがおる。人間の子どもか。かなわんな。
なんだと?へびだだと? 違うぞ。
・・・ああ、身体が半分しか出ていないから、そう見えたか。
よしよし、悲鳴を上げて逃げていった。
間違われるのも悪くない。
人間どもはどうして花なんか好きなんだろうな。食べられないのにな。
この花の時期が終わると、人間どもはまたあまり来なくなる。
するとわしらの季節だ。
草木が青く茂る、わしらの季節だ。
ああ、向こうでひきがえるのやつが鳴いている。
あいつも目が覚めたようだな。
鳴き声を聞きつけて、人間どもが見つけて騒いでおるわ。
・・・ああ、やっと体が動くようになった。
まずは、ひきがえるが鳴いているうちに、見つからない所に逃げるとしよう。
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