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端山茂山奇譚(拾肆)
端山茂山奇譚(拾肆)
よう、いるか?
さっき、山道でこんなのを見つけたよ。
突っ立て泣いてたんだ。
ああ、人間の子だ。
迷ったのか…ちがうな、置き去りにされたんだ。
まあ、可愛そうだがな。これも山の掟だと、他の動物どもと同じように放っておいても
良かったんだが、おいら、なんか気になってな。
こいつ、おいらを見て、泣き止んだんだよ。
で、おいらに付いてきたんだ。
なあお前、弟子が欲しいと言っていたではないか。
動物より人間の子の方が良いだろう?賢いからな。
お前が要らないんなら、他のやつの所に連れていくよ。
あの、洞穴にいるやつとかな、あいつも人間の子が欲しいと言ってからな。
ああ、そうだよ、あの化け物。
そうだろ?
あいつに渡すくらいなら、お前が弟子に育てた方が良いだろう。
…え、そうなのか。このぼうず、盲か。
だからおいらを見ても泣かなかったんだな。
泣き止んだのは、気配を感じたからか…。
でも不思議だな。盲なのに、どうやっておいらに付いてきたんだ?
何かを感じ取れるらしいな。
…そうか、気に入ったか。
じゃあ、良い弟子にしてくれ。
おい、ぼうず、良かったな。
山の獣の餌食になる前に、おいらに見つけてもらって。
おう、じゃあ、また来るよ。このぼうずの様子を見にな