端山茂山奇譚(拾弐)
端山茂山奇譚(拾弐)
さっき、北から飛んできたやつらが言ってたんだけど、北の空では、翠の龍が飛ぶそうだ。
緑の光の帯のようだと言っていた。
ほう、おれが昔、ばあさんから聞いた話だと、翠の大きな幕が夜空にはためくというが、龍なのか。
あそこの木で休んでいるあいつらから聞いたんだ。
おい、そこのおまえら。
北の空では緑の色の龍が飛ぶと言ってたな。
ああ、いつもではないが、時々、夜になると見える時がある。
龍は、淡く弱々しい時もあるが、ものすごく強く光って天全体を覆うように踊る時もある。
小さくなったり、大きくなったり、うねったり、それは見事だ。
時々、白く赤くはぜるように光る時もある。
その龍は襲ってくるのか?
いや、夜空を舞っているだけだ。
星空を背景に、ずっと舞っているかと思えば、急にいなくなってしばらく姿をみかけなることもある。
気まぐれなんだ。
ほう、見たいものだな。
北の方は冬が長い。
そして冬は夜が長い。
だからか空を舞う龍をよく見る。
おれたちが飛ぶよりもさらに高い空を、翠の龍は形を変えながら舞う。
そして、翠の龍が舞う空を、俺たちは飛ぶんだ。
空をどんどん高く飛べるようで、大きな気持ちになるんだ。
そうか。俺も一緒に龍が舞う空を飛んでみたいな。
ところで、おまえら、あまり見かけないやつらだな。
そうなんだ。実は迷ってここまで来てしまった。
北の冬はものすごく寒いからな、おれたちは冬になると南の方に行く。
南で子育てをして、夏になると北に戻る
ところが、今年は南に来すぎてしまった。
そうか。この地は、夏になるとかなり暑くなる。
お前たち、北の鳥たちには辛いのではないか。
そうなんだ。だからそろそろ北に戻ろうと思う。
そうか。気をつけて戻れよ。
昔、俺のばあさんから聞いた話は本当だったんだな。
翠の舞龍の話が聞けて良かったよ。
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