《作業療法士としての発見と学び》共創から生まれる車椅子利用者用レインウェア製品化プロジェクト
こんにちは!
この度、ケアウィルさんと日本臨床作業療法学会のコラボ企画に参加している作業療法士の吉原です。
私は第9回日本臨床作業療法学会(以下、9thCOT)のSNSで、ケアウィルさん共創の「車椅子利用者用レインウェア製品化プロジェクト」でメンバーを公募することを知り、率直に「面白そう!」と思いすぐに応募しました。
本プロジェクトで製品化を目指す車椅子利用者用レインウェアは、「濡れないこと」のみを目的としたものではなく、「雨の日でも気にせずに外出を楽しみたい」「雨を理由に外出をあきらめない」ことをコンセプトとしており、まさに作業療法の理念にマッチするプロジェクトであると感じたことが決め手となりました。
プロジェクト全体については、こちらの記事でご紹介しています!
今回はプロジェクトメンバーとして参加した作業療法士の立場から、発見や学びをご報告します。
臨床現場で想定している「天気」って?
日本作業療法士協会の会員統計資料(2022年度)によると、約7割の作業療法士が医療機関(病院)で勤務しており、患者さんが退院して自身の望む生活が送れるように日々リハビリテーションを提供しています。
私も「患者さんが望む生活のためには、何が必要だろう?」と考え、プログラムを立案し、必要な練習に取り組みます。実際にご自宅へ訪問し、玄関の段差や手すりの位置、家具の配置や動線などを調査することもあります。そうして練習と環境調整を重ね、「玄関も出入りできる、トイレも使える、車や必要な場所に乗り移れる、ああ良かった!」と喜びを共有して退院を迎えることにやりがいを感じていました。
しかし、車いすユーザーの方がこう仰いました。
「雨の日は外に出ません」
この言葉を聞いて、自分の「天気」への意識の低さに気がつきました。無意識に「雨が降っていない状況」をイメージしていないだろうか、と。むしろ作業療法士が「雨の日は危ないので外出は控えましょう」と助言することもあるのではないでしょうか。仮に雨具の使用方法について検討していたとしても十分ではなかったと反省しました。
ユーザーに求められる製品とは?
レインウェア開発にあたり、車いすユーザーの方へのヒアリングに関わらせていただきました。ヒアリングを行うための項目抽出からケアウィルさんと9thCOTメンバーと協働して進めていきました。
9thCOTメンバーが脱ぎ着のしやすさや機能に関する項目に注目していたところ、ケアウィルさんから「着ている時間の快適さ」「収納場所や濡れたウェアを干す場所」「雨が降りそうな時を想定した携帯性」の面について助言を受け、よりリアルな生活の中での使用を想定する視点を学びました。つい「動作」にのみ意識が向いてしまっていましたが、その製品が占有する「時間」で考えると脱ぎ着の時間はごく一部で、「持ち運ぶ」「着ている」「保管する」時間のほうが圧倒的に長いことは盲点でした。
実際に車いすユーザーの方にヒアリングをしてみると、既存のレインウェアを買ってはみたものの結局使っていないとか、バスタオルを被って凌ぐとか、屋根の無いところは行くのを諦めるといった「うまくいかない、仕方ない」という負の経験が積み重なっていると感じました。
つまり、たとえ動作として脱ぎ着することができたとしても、その他の大半の時間が快適でなければ実際に「使う」には至らないのだと実感しました。
外出・社会参加に繋がる夢のプロジェクト!
車椅子ユーザーの方々の中で、「雨の日は外に出ない」と諦めることが当たり前になっているのではないかと感じられました。もしこの常識を打ち破るレインウェアが創出されれば、ただ単に「雨に濡れない」という課題の解決にとどまらず、「好きな時に好きな場所に行ける」に繋がる夢のあるプロジェクトだと感じています。さらに、着ていきたいと思える「デザイン性」も兼ね備えているとしたら、雨の日でも外出が楽しみになり、さらに社会参加の場を押し広げる可能性も秘めていると思います。
メーカー、作業療法士そして当事者、あらゆる立場の人の声や想いが込められたレインウェアの完成が本当に楽しみです。多くの医療従事者にも知っていただき、外出や社会参加の可能性を広げる手段として積極的に活用していただけたら嬉しく思います。
完成品は9thCOTでのお披露目が予定されています!この特別な瞬間を多くの皆様と共有出来ると思うとワクワクします。ぜひご参加ください!