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【 Care’s World case 03 小さく続けた先にある、モノや想いの循環 〜 モノモノコウカンプロジェクト 田中慶悟さん 〜 / -後編- 】

前編では、モノモノコウカンプロジェクトを始められた経緯等について伺いました。

後編では、今までの動きを踏まえた今後の展望等ついて深掘りしていきます。

前編はこちら

Care’s Worldについてはこちらから。


♢聞き手:玉井妙(Care’s World / コミュニティナース )
♢話し手:田中慶悟(モノモノコウカンプロジェクト)
♢撮影・執筆:上泰寿(Care’s World / 編集者 )
♢インタビュー場所:志布志市内

モノと想いの循環

田中:事業者さんのご厚意もあり、回収したモノを常設できる場所として使えるようになりました。それまでは自宅での管理もですし、毎回イベント会場へ何往復もしてモノを運んでいたので、大変でした。

こちらのスペースは音楽教室をしている場所だったので、たまに発表会で使われることもあったんです。それで、発表会のチラシにモノモノコウカンカイのことを少し紹介させてもらって、参加者に知ってもらう・実際に交換する動線づくりをしていきました。

しかし、3年程経過した時、施設の改修などの諸事情でそのスペースが使えなくなってしまって…。とはいえ、3年間も私たちの活動を評価してくださり、スペースを提供してくださった事業者さんには感謝しかありません。

このスペースで常設展示していたからこそ、ここでしかない出会いもありましたし、今後のことを考える良いきっかけになったんですから。

他にも、母子寮(※)に設置し、緊急で避難してきた母子に対する支援にもモノを提供しました。

洋服だけではなく、例えば、ぬいぐるみとかチャイルドシートなどといった日常で使用するモノも提供できたので、何かしらの役に立ってもらえたら嬉しいです。

(※)何らかの事情により、子どもの養育が困難な母子家庭のお母さんと18歳未満の子どもが一緒に入所し、施設職員とともに自立を目指す施設のこと。

写真提供:田中慶悟 常設時の様子

田中:この7年で40回程開催させていただいたのですが、回を重ねていくうちに何度も来てくださる方も出てくるようになりました。イベントの時は必ず交換用のチケットをお渡しします。

「有効期限はないので、 いつでも使ってください」とお伝えしていて。それを何年か経過した後に持ってきて「子供が成長したので、大きいサイズに変えたくて…」という方も多くて、そういう場面に遭遇すると「やってきてよかった」と心の底から思います。

運営メンバーも子育てしているお母さんばかりで、彼女たちのお子さんが小さい時に着ていた服が時を越えてイベントで交換する際に戻ってくるパターンもたまにあって。

名前をつけるタグに何人もの名前が載っているので「何人もの子供をわたってきたお洋服」と呼んでいます。そういう服ほど、すごく綺麗なんです。「あ、大事にきてくれたんだな」と感じますし、モノだけではなく、受け継いで大事にしてくださるという循環も生まれているので嬉しい気持ちでいっぱいになります。

小さく、無理なく、続けることで

田中:実は、今年の春にモノモノコウカンカイを鹿児島市に住むご夫婦に引き継ぐことにしました。

プロジェクトをする上で、モノの管理もですが、新しい価値観を持った方が引き継ぐことで、さらに違う広がりがあるのではないかと思ったからです。

以前、プロジェクトを取材してくださった原田桃子さんが手を挙げてくださり、モノのほとんどを鹿児島市内へ移したところです。取材後も交流があり「この人ならきっと大丈夫」と思いました。

引き継ぎをする中で念を押して伝えたことがあります。それは「無理なく続ける」こと。どうしても、このプロジェクトはあくまでボランティア活動、力を入れすぎると、どこかで息切れしてしまいます。

本業もですし、家庭のことを優先し、それをきちんと成り立たせていたからこそできたと思います。なので、仕事先や家族には負担や迷惑をかけない。そこはずっと意識していたので、原田さんにもそういう風にアドバイスしました。

引き継いだからといって、今後は何も関わらないではなく、新しい考えで動いてくださる次の世代を影で支えていけたらと思っています。

写真提供:田中慶悟 原田さん夫妻に引き継ぎをされた時の様子

田中:元々モノモノコウカンプロジェクトは社会を良くするといった大きな目標を掲げて始めたわけではありません。

目の前にある洋服やオモチャといったモノがゴミとして捨てられるのはもったいない。それを循環して使えるようにしたい。そうすることで孤独や不安を抱えていた人たちにとってのコミュニティが生まれたら。そんな小さなところからのスタートでした。

だから、今後も肩肘張らずに、気持ちを楽に小さく続けていってほしいです。

この間、私たちが提供したモノを置いてくださっている友人のお店に遊びに行った時のことなのですが、近くに座っていた小さいお子さんがお漏らしをしちゃって…。それで、置いてあったモノでお着替えができたんです。

「本当、これだな」と思って。そこから会話も生まれますし、その時の安心感がその親子にとっての居場所にもなると思うんです。

そういう何気ない小さなことから、モノが誰かにとって役に立ってもらえるのが一番嬉しいですし、その積み重ねの先に社会や地域に対して何かしら貢献するのではないかと思っています。

(終わり)

(前編はこちら

●基本情報
屋号:モノモノコウカンプロジェクト
URL:https://www.instagram.com/monomonokoukan/
https://www.facebook.com/monomonokoukan/
参考:現在は鹿児島市で活動を希望された方に引き継いでいます。

●編集後記
小さい子供がいると直面する、「洋服がすぐ小さくなる&すぐ汚れる」問題。一方で、「お下がりいっぱいあるけど、まだ使えるのも多いし…」という声も少なくありません。
一人の親としても、モノモノコウカンにたくさん助けられてきたと同時に、イベントのお手伝いもさせて頂く機会もあり、運営の大変さを垣間見ることもありました。
「こんなのあったらいいな」を本当に実現するだけでもすごいのに、それを7年間も継続してこられた田中さん。
その背景に、どんな想いを持っていらっしゃるのか?なぜ継続してこれたのか?引き継いだあと、田中さんが思うこととは…?聞きたいことが山盛りで、今回取材をお願いさせて頂きました。

実は、モノモノコウカンプロジェクトを引き継がれた原田ご夫婦は、学生時代から大変お世話になっている先輩でもあります。
田中さんと原田さんの信頼関係があってこその世代交代。後編にある「無理をしない」という愛のあるメッセージも、印象的でした。現在は、原田さんご夫婦が中心となって、新たな広がりが生まれています。ぜひ、SNSもチェックしてみてください!
モノモノコウカンプロジェクトを引き継いだ後も、夏休みの小学生を対象にした「宿題カフェ」やxレールイベントなど、「やりたいことはいっぱいあるんですよ」と、今後の野望をイキイキと話して下さった田中さん。

地域課題を自分ごとに捉え、できることを着実に積み上げていかれるその姿勢に、いつも学ばせて頂いています。
田中さん、改めて、貴重な機会を本当にありがとうございました!

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